三井住友アセットマネジメント株式会社 バランスファンド運用グループ ヘッド 渡辺英茂
三井住友アセットマネジメント株式会社 バランスファンド運用グループ ヘッド 渡辺英茂氏に、預貯金中心の資産形成をしている個人投資家が今後より積極的に資産運用をすべき背景とその際のポイントをお聞きしました。また、定量分析と定性分析を組み合わせながら中期的に着実な資産形成を目指す「SMAM・グローバルバランスファンド(機動的資産配分型)【愛称】資産配分おまかせくん」(以下、「おまかせくん」)[リスクと費用] の運用方針についてお伺いしました。
投資家に伝えたい3つのポイント
脱・デフレの時代には脱・預貯金に対応した投資が必要。
投資の初心者やこれから投資をはじめようとする方は、理解しやすい資産に分散投資すべき。
バランス型ファンドはマクロ経済環境をしっかりと調査・分析をし、適切に資産配分することが超過収益を獲得するための肝。
脱・デフレに対応した投資を考える—脱・預貯金のすすめ
―― 日本株だけではなく、米国株は好調です。一方で、米国での利上げなども予想されており、今後は債券価格などの動きもありそうです。相場動向を読み解くには難しい局面ですが、投資の初心者はどのような投資を心掛ければよいのでしょうか。
三井住友アセットマネジメント 渡辺英茂(以下、渡辺):投資をこれから始めるという方や初心者の方は、特徴を理解しやすい代表的資産に分散投資をするのが良いと思います。
―― 投資をする資産の特徴を理解することで、資産運用上どのようなメリットがあるのでしょうか。
渡辺:ひとつのメリットとしては、資産価格の動きを理解しやすいことです。そして、もうひとつは、代表的資産の特徴を理解することで、それ以外の資産や金融商品に対する理解が深まります。結果として、皆さんの資産運用の幅が広がっていく可能性も出てきます。
―― 日本銀行の調べによれば、国内の家計における金融資産のうち53%は現金及び預金です。これまで積極的に株式や投資信託などで資産運用してこなかった人も多いと思います。今後は、積極的に資産運用に乗り出すべきなのでしょうか。
渡辺:現在のマクロ経済環境を考えれば、預貯金中心の資産運用だけでは不十分だと思います。
―― それはなぜでしょうか。
渡辺:脱・デフレ政策、つまり物価が下がる経済環境から、物価を上げるような政策運営が行われています。デフレの環境下であれば、資産が目減りしない預貯金で運用するのは正しいといえるのですが、物価が上昇する環境では必ずしもそうではなくなります。
―― 預貯金で元本を守りつつ資産を増やしているだけでは物価上昇に追いつかないということですね。
渡辺:物価上昇に負けない資産運用が必要になってくると思います。
分散投資で値動きのブレを抑える
―― 現在のマクロ経済環境を考えることで、預貯金以外の資産運用が必要となる背景は理解できました。では、その中身はどうしたらよいのでしょうか。
渡辺:分散投資をおすすめしたいと思います。
―― なぜ分散投資がよいのでしょうか。
渡辺:値動きのパターンが異なる資産を複数組み合わせて投資すると、ひとつの資産(たとえば日本株だけに投資しているケースを思い浮かべてください)に投資をしている場合に比べて、投資資産全体の値動きのブレを抑えることができます。
分散投資は資産配分がカギ
―― 分散投資により運用資産価格の値動きのブレを抑えることは投資の初心者にとっては安心材料になります。一方で、どのような資産をどれくらい保有するかを決めるというのは難しくないでしょうか。
渡辺:世界の経済・金融サイクルは時間の推移と共に移り変わりますし、同じ時点を取っても、国や地域によって経済・金融の状況が異なります。地域と金融資産の種類を適切に選択できれば、投資から高い収益を上げる事が出来るチャンスがあると考えられます。しかしこれは簡単ではありません。資産配分(アセットアロケーション)を決めるというのは、運用資産の市場価格動向を見ながら購入する、もしくは売却するということです。つまり、運用資産を決めるだけではなく、投資のタイミングも見ていることになります。
―― やはり投資をこれから始めるという人や初心者には相当難しそうに見えます。
渡辺:個人投資家の方にはそうお感じの方も多いと思います。そこで当社はDC(確定拠出年金)専用に提供していた機動的に資産配分を変化させるファンド、その名も「おまかせくん」を一般のお客さま向けにも提供を開始しました。この「おまかせくん」なら資産配分を私どもに「おまかせ」頂けます。
―― 「おまかせくん」における資産配分での強みを教えてください。
渡辺:バランス型ファンドの運用パフォーマンスは、端的に言えば、資産配分でほとんどが決まります。資産配分を決定するプロセスには、各国の景気動向や金融・財政政策、為替や金利といったマクロ経済環境を調査、分析することが欠かせません。どのような金融資産をどのタイミングで売買するかを決定するためです。当社は、適切に資産配分をするために日系運用会社最大級のエコノミストとアセットアロケーターのチームを擁しています。加えて、株式、債券等の運用チームと密接に連携し、それぞれの市場の状況を把握しながら投資判断を行っています。
―― 具体的にどのような体制でどのように投資判断に活かしているのかを教えてください。
渡辺:ロンドン、ニューヨーク駐在も含め、8人のエコノミストが在籍しています。グローバル市場をくまなく調査し、経済や金融・財政政策等の予想を行っています。社内のエコノミストからの情報をもとに、株式や債券チームと議論しながら、それぞれの資産がどの程度のリターンを上げるのかを予想します。また、独自に構築したクウォンツ・モデルを活用し、相場の過熱感などを測りながらとるべきリスクを管理しています。そうした情報やデータをもとに、最終的にアセットアロケーターのチームが資産配分を決定することとなります。
―― マクロ経済予想などをベースにした予想というと、頻繁に資産配分の判断が変わるのでしょうか。
渡辺:基本的には毎月1回の頻度で、あるべき資産配分を見直しています。
―― 資本市場の動きはめまぐるしく変化しているように見えます。月に1回の資産配分の見直しで十分なのでしょうか。
渡辺:私たちは中長期的なマクロ経済分析をベースに基本的な資産配分を決めています。したがって、ごく短期で回転売買をするような運用は行っていません。ただし、相場が変調しそうな場合は、迅速に臨時会議を招集し、運用方針をどうすべきかを議論し、柔軟に対応しています。
―― 相場の変調とはどのように察知するのでしょうか。
渡辺:基本的には経済や金融市場を丹念に観察する事が重要です。相場は、一時的な要因で変動する事も多いため、本格的な相場の変調なのか、単なる市場のブレなのかを出来る限り正しく見極める事が重要です。それには、運用者の経験も重要となってきます。私はこれまで25年間にわたり運用に携わってきました。ロンドンに5年、香港に6年半滞在し、合計21年ほど欧州株、米国株、アジア株を見てきました。そうした経験も相場の変調を感じとる際には役立っています。
―― 25年の運用経験といえば、ITバブル崩壊やアジア通貨危機、リーマンショックも経験済みということですね。
渡辺:はい。ITバブルの崩壊やリーマンショック後の立ち直りをいち早く予見し、運用に反映できた経験を持っているという自負があります。「おまかせくん」を担当してからも、「攻めるべき時は攻め、引くときは引く」、という姿勢で機動的に資産配分を管理しています。
わかりやすい国内外5つの資産を組み合わせる
―― 「おまかせくん」の投資対象について教えてください。
渡辺:投資の初心者の方でもわかりやすい国内株式、国内債券、外国株式、外国債券、短期金融資産の5つの資産を投資対象としています。
―― 大変オーソドックスですね。新興国株や不動産関連などは入っていないのですか。
渡辺:この5つの資産で個人投資家の皆様が中長期にわたる資産形成を着実にするという目標は十分達成できると考えています。
―― 中長期を考えるなら成長性の高い新興国への投資も入れるべきではないでしょうか。
渡辺:私たちが採用している外国株式の中身は欧州や米国をはじめとした先進国株がメインになっています。そうした先進国企業は新興国への事業展開も進み、事業ポートフォリオはグローバル化しています。従って、そうした株式を保有していれば新興国の成長も享受できると考えています。
―― 基本の資産配分はどうなっているのですか。
渡辺:国内株式20%、国内債券50%、外国株式10%、外国債券15%、短期金融資産5%がベースです。
―― 2015年5月末のファンドのアロケーションはこれと少し違いますね。
渡辺:国内株式33%、国内債券42%、外国株式14%、外国債券11%、短期金融資産0%です。国内外の株式を多めに、内外債券を少なめにするという判断をしています。実際のファンドの中身を、基本の資産配分からいかに調整をしてリターンを追求するのか、ここは私たちが最もこだわっている点です。
積立で資産形成のベースに
―― 「おまかせくん」の購入のタイミングはどのように考えたら良いですか。
渡辺:こつこつと定期的に少額でも積み立てていくことが資産形成に効いてきます。そう考える投資家の方に受け入れられやすい商品設計にしています。
―― ファンドに係る費用について教えて下さい。
渡辺:「おまかせくん」は、いわゆるノーロードファンドで購入時手数料はかかりません。また、運用管理費用(信託報酬)は現在税込で年0.6372%です。
―― 資産形成のカギになる資産配分決定をプロに「おまかせ」できることから中長期で保有したい投資家にもこの信託報酬の水準はお得だと納得される投資家の方も多いでしょうね。
―― 脱・預貯金を考える幅広い投資家の方への情報発信にも力を入れておられるとお聞きしました。
渡辺:弊社ではインターネットを中心に情報発信を強化しています。資産運用のイロハをわかりやすく解説したコンテンツや、時々刻々変わる経済情勢や証券市場の動向について親しみをいただけるように記事を掲載しています。一度、弊社の「SMAM投信直販ネット」もご覧いただけると幸いです。
―― 本日はお忙しいところありがとうございました。
渡辺:こちらこそありがとうございました。
※本インタビューは、楽天証券株式会社との共同インタビューとなります。