大和住銀投信投資顧問株式会社 上席参事 商品担当 村松靖 & 株式運用部 バリューグループ シニア・ファンドマネージャー 岩間星二

大和住銀投信投資顧問株式会社 上席参事 商品担当 村松靖氏と株式運用部 バリューグループ シニア・ファンドマネージャー 岩間星二氏に、日本株アルファ・カルテット(毎月分配型)(以下、「日本株アルファ・カルテット」)[リスク費用] の運用方針についてお伺いしました。

投資家に伝えたい3つのポイント

  • 日本株アルファ・カルテットの高い分配金は「4つの工夫」による産物。
  • 当投資信託は日本株とブラジル・レアル/円のリスクを取っている。
  • 投資パフォーマンスは、基準価額と累積で受け取った分配金を合計したトータルリターンで確認。

純資産総額は2,600億円超に

―― 日本株アルファ・カルテットの販売が好調なようですね。

大和住銀投信投資顧問株式会社 上席参事商品担当 村松靖(以下、村松): ありがとうございます。現在、多くの方にご支持を頂いています。純資産総額も2,600億円を超え、基準価額は8,038円、分配金の累計は3,900円となっております(2015年7月31日現在)。2014年4月4日の設定時に一口10,000円で投資されたとしますと、手数料と税金を除いた概算ベースで累計11,938円になっています。

当ファンドのヒミツは「4つの工夫」

―― 当ファンドの仕組みはどうなっているのですか。

村松: ファンド名に「カルテット」とあるように4つの工夫を組み合わせています。

大和住銀投信投資顧問株式会社 上席参事 商品担当 村松靖

―― 4つも工夫があるのですね。それぞれ分かりやすくエッセンスを教えてください。

村松: 「日本株で稼ぐ」、「日本株の上昇を一部放棄するかわりに(オプション料として)収入を得る」、「日本円からブラジル・レアルに為替リスクを変換する」、「ブラジル・レアルの上昇を一部放棄するかわりに(オプション料として)収入を得る」となります。

―― 投資信託の中身には日本株とブラジル・レアルが関係しているのですね。

村松: その通りです。

「日本株で稼ぐ」―工夫1

―― では、はじめに「日本株で稼ぐ」という部分から教えてください。

大和住銀投信投資顧問株式会社 株式運用部 バリューグループ シニア・ファンドマネージャー 岩間星二(以下、岩間): 日本株の運用を担当している私から説明いたします。まずお預かりした資金のほぼ全額を目標に日本株に投資します。

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大和住銀投信投資顧問株式会社 株式運用部 バリューグループ
シニア・ファンドマネージャー 岩間星二

―― 日本株の運用について、どのようなスタイルの運用をするのでしょうか。

岩間: 私の運用に求められるのは二点です。一点はしっかりと配当利回りを確保し、配当収入を分配金の原資に回すことです。

―― もう一つの目標は何でしょうか。

岩間: 中長期的な運用資産の増大を目指します。日本株運用部分については、中長期的に見て株式市場を上回るパフォーマンスを目指します。

―― 日本株の運用面ではどのような工夫があるのでしょうか。

岩間: 業績がよく、株価が割安な銘柄を積極的に組み込みます。171銘柄ほどに投資をしていますが(2015年7月末時点)、大型株も含めて割安な銘柄を選び出すことで、株式市場と比較して超過リターンを出すことができています。

―― 最近ではどのような銘柄への投資が超過リターンに貢献したのでしょうか。

岩間: 村田製作所、マブチモーター、日本電信電話、トッパン・フォームズなどです。参考までに2014年4月の設定から2015年7月末までを見ますと、株式現物部分の運用でTOPIX配当込対比6%以上の超過リターンを出しています。

―― 日本株はいわゆるアベノミクス以降随分上昇したように見えますが、日本株への投資をどのように見ていますか。

岩間: まだまだ魅力的な投資先だと考えています。

―― それはなぜでしょうか。

岩間: 世界的に見て日本企業の増益率は高いですし、バリュエーションはまだ安いと思います。さらに、ROE重視やコーポレートガバナンスの改革が進み、外国人投資家からの投資もこれから期待できそうです。

―― 日本企業の変革は本物かつ継続的だという見方でしょうか。

岩間: そうですね。コーポレートガバナンス・コードの導入などを背景として、株主重視の姿勢を一層強めていますので、株式市場にはまだまだ期待が持てるでしょう。

「日本株の上昇を一部放棄するかわりに収入を得る」―工夫2

―― 日本株の運用の工夫は理解できました。さて、次の工夫を教えてください。

村松: 工夫の二つ目は、「日本株の上昇を放棄するかわりに(オプション料として)収入を得る」ということになります。専門用語でいうと「カバードコール戦略」と言います。当ファンドでは、原則として日本株の50%程度の部分の値上がり益を放棄する代わりにオプション料を受け取っています。

―― 岩間さんが一生懸命に日本株運用で儲けようとしているのにもったいない気がします。日本株の50%程度の部分の値上がり益を放棄するだけのメリットはあるのでしょうか。

村松: メリットがあると考えています。たしかに株価が大きく上昇する場合、当ファンドは単純な株式投資にアンダーパフォームすると思われます。一方、株式市場が下がるときには、当ファンドは受け取りオプション料がクッションになります。当ファンドでは、日本株の50%程度は単純な株式投資としつつ、残り50%程度の部分はカバードコール戦略をとることで、株価の上昇時の利益を一部残しつつ、下落時の損失を受け取りオプション料だけやわらげる効果があります。

「日本円からブラジル・レアルに投資し金利を稼ぐ」―工夫3

―― まだ工夫が二つ残されていますね。続きをお願いします。

村松: 日本株とは別に、円からブラジル・レアルに為替リスクを変換します。

―― 確か、元本は全額日本株でしたよね。 なぜブラジル・レアルに為替リスクを変換するのでしょうか。

村松: ファンドの狙いが高インカム戦略ですので、金利が年率14%を超えている(2015年7月末時点)ブラジル・レアルに着目しました。

―― 日本の金利がゼロに近いので、為替リスクを取ることで金利差分を収益として狙えるのですね。

村松: インカム性収益を上乗せできる一方、リスクも負っています。円安レアル高になれば、運用収益にプラスの要因に、逆に円高レアル安になれば、運用収益にマイナスの要因になります。

―― 金利差だけでなく、ブラジル・レアルの対円の為替相場の見通しも重要になってくるのですね。

村松: そうです。当ファンドでは、ブラジル・レアルの為替相場と金利動向、そしてその背景にあるブラジル経済のファンダメンタルズや金融政策等が重要になってきます。

「ブラジル・レアルの上昇を一部放棄するかわりに収入を得る」―工夫4

―― では、最後の工夫は何でしょうか。

村松: 先ほどの日本株と同様なのですが、今度はブラジル・レアルの50%程度の部分にカバードコール戦略を行います。

―― 全体の半分程度についてカバードコール戦略を行うことでオプション料を受け取り、ブラジル・レアルが上昇した場合はその利益を放棄するわけですね。

村松: 株式と同様に、ブラジル・レアルが円に対して上昇する場合の利益を一部確保しつつ、ブラジル・レアルが下がる場合に対してもオプション料を受け取ることで一定の損失抑制を狙っています。

マーケット環境によるファンドへの影響

―― マーケットの環境ごとに、ファンドの動きについて説明していただけますか。

村松: はい、まずは当ファンドにとって最もよい状況は、日本株、ブラジル・レアル/円が共に上昇する局面です。この場合、株式と為替の両方の上昇の半分を享受できることに加え、株式と為替の概ね50%部分のカバードコール戦略から得られるそれぞれのオプション料と円とブラジル・レアルの金利差相当の収益を得ることができます。

―― では、最も厳しい状況はどんな状況ですか。

村松: 日本株、ブラジル・レアル/円が共に下落する場合です。株式、為替が下落した分は全て基準価額にマイナスに働きます。ただしこの場合でも、カバードコール戦略から得られるオプション料と円とブラジル・レアルの金利差相当分の収益がクッションになります。

―― 日本株、ブラジル・レアル/円の下落局面では、基準価額の下落は避けられないということですね。

村松: その通りです。投資家には、日本株とブラジル・レアル/円の動きにご留意して投資いただければと思います。

運用成績は「トータルリターン」で判断する

―― 日本株アルファ・カルテットには4つもの工夫があることがわかりました。運用成績はどのように見ればよいのでしょうか。

村松: 当ファンドは毎月分配型の投資信託です。投資家の方には直近の基準価額とこれまで受け取られた分配金を考慮し、当初投資時点の基準価額と比較するという「トータルリターン」で運用成績を見ていただきたいと思います。今後の分配金については市場の様々な要因で変動する可能性がありますので、ご留意いただければと思います。

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―― 本日はお忙しいところありがとうございました。

村松・岩間: こちらこそありがとうございました。

※本インタビューは、楽天証券株式会社との共同インタビューとなります。

Longine編集部