iDeCoは節税しながら老後に備えて資産を形成できる制度です。

とはいえ、月5000円という拠出額では本当に意味があるのか疑問に思う方もいるでしょう。

本記事では、その真相や注意点、シミュレーション結果などをまとめました。少額でも老後資金づくりを始めるメリットを確認してみましょう。

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1. iDeCoに加入できる人と掛金上限額

まずはiDeCoの対象者ごとの掛金上限額についておさらいしておきましょう。

1.1 第1号被保険者(自営業者)

自営業やフリーランスなど国民年金保険料を自分で払っている人は第1号被保険者に該当し、iDeCoの掛金上限は月6.8万円です。

ただし、国民年金基金や付加年金との合算枠となるため、いずれかと併用する場合は両方を合わせて6.8万円までになります。国民年金保険料に未納や免除期間があると加入できない点に注意しましょう。

1.2 第2号被保険者(会社員・公務員)

会社員やアルバイト・パートなど厚生年金に加入している人は第2号被保険者となり、企業年金の有無や種類によって掛金上限が異なります。

また、公務員の場合は上限が2万円、企業年金がない場合の上限は月2.3万円、企業型DCのみの場合は月2万円、DBに加入している場合も同様に月2万円となっています。

Q.iDeCoと企業型DCはどう違う?

企業型DCは企業が掛金を拠出する制度で、対象はその会社の従業員に限定されます。一方、iDeCoは個人が国民年金加入者として申し込む仕組みで、掛金も自己負担です。

企業型DCでマッチング拠出を利用中の場合はiDeCoと併用できないため、どちらを選ぶか確認が必要です。

1.3 第3号被保険者(専業主婦・主夫)

専業主婦(夫)や扶養の範囲で働くパートなどは第3号被保険者となり、iDeCoの掛金上限は月2.3万円です。扶養内で所得が低い場合、掛金の所得控除によるメリットは小さいかもしれませんが、運用益非課税や受取時の控除は享受できます。

2. iDeCoで掛金5000円は意味ない?節税効果をシミュレーション

2.1 25年運用(年収480万円・利回り3%)

35歳で年収480万円の人が月5000円を25年間拠出すると総額150万円ですが、約72万円の運用益が見込まれ、さらに所得税・住民税が合計30万円ほど軽減可能という試算も。iDeCoでは運用益が非課税のため、実質的に税金で差し引かれず効率よく増やせます。

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2.2 20年運用(年収650万円・利回り3%)

年収650万円の40歳が同じく月5000円を20年間拠出すると、総額120万円に対し約44万円の運用益が期待でき、所得税・住民税の軽減は約24万円。少額の掛金でも税金が抑えられ、非課税メリットによる複利効果で老後資金を積み立てることが可能です。

3. 掛金5000円でもiDeCoに加入するメリット

3.1 ①少額でも3つの節税効果

iDeCoでは拠出時・運用時・受取時にわたる3つの税制優遇が大きな魅力です。拠出時の掛金は全額所得控除、運用益は非課税、受取時には退職所得控除または公的年金等控除が適用されます。

たとえ月5000円でも長期間積み立てれば、十分に節税効果を得られるでしょう。

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3.2 ②自分でしっかり老後資金を用意できる

iDeCoは60歳まで引き出せない代わりに、確実に老後資金を蓄えられる制度です。公的年金だけに頼る不安から備えるためにも、少額からコツコツ拠出を続けることで資産形成が期待できます。

将来の年金減額リスクに対しても、上乗せの私的年金として役立つでしょう。

Q.老後資金はいくら必要?

高齢夫婦の平均支出は月25万円超ともいわれながら、公的年金の支給額は下回る可能性が高いです。ゆとりある老後生活にはさらに上乗せの資金が必要になります。iDeCoで早めに積み立てを始めることで、老後の不足分を少しでも補うことができます。

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3.3 ③長期運用によるリスク軽減

投資は短期市場の変動リスクがあるものの、長期間かけて投資すればリスクは分散しやすくなります。iDeCoなら60歳まで継続するケースが多いため、時間の経過とともに価格変動の影響を平均化でき、複利効果も働きやすいでしょう。少額投資でも長期運用によるメリットは大きいといえます。

4. 5000円で始めてもメリットを得にくい人とは?

所得が少なく税金がもともとかからない人は、拠出時の所得控除による恩恵が薄くなります。専業主婦(夫)や扶養内で働く人の節税メリットは小さくなりやすいでしょう。

また住宅ローン控除など大きな控除を受けている人は、iDeCoの上乗せ効果が限定的となることも考慮しましょう。

5. iDeCoの掛金はいくらがベスト?決め方のポイント

5.1 ①目標金額と積立年数から逆算

老後資金の目標額と残りの運用年数を踏まえて、毎月いくら積み立てるべきかをシミュレーションしましょう。運用利回りは3%など仮定を入れて計算し、ゴールに届く目安の拠出額を把握することが重要です。ネット上のシミュレーターや金融機関のツールが参考になります。

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5.2 ②原則途中解約不可のため無理のない拠出を

iDeCoの資産は60歳まで引き出せず、途中解約もほぼ不可能です。家計に余裕がないなかで拠出額を大きくしすぎると、急な出費に対応できなくなるかもしれません。まずは生活費の数か月分を手元に確保し、残りの範囲内で掛金を設定するのがおすすめです。

参考)掛金の平均額は約1.6万円

iDeCo公式サイト「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2023年3月)」によれば、iDeCo加入者の平均掛金は月1万6000円強です。

1万円未満の層も一定数いますが、続けやすさこそが長期運用には大切です。自身の収入やライフプランを考慮して、無理なく継続できる拠出額を決めましょう。

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6. 注意!iDeCoで損をするかもしれない人の特徴

6.1 あまり貯金がなく、突然の出費に対応できない人

手元資金が少なく、いざという時に捻出できる余裕がない場合、iDeCoに多く回すと家計が圧迫されます。生活防衛資金を確保してからiDeCoを始めれば、もしもの支出にも対応しやすいでしょう。

6.2 直近でまとまったお金が必要な人

子どもの進学や住宅購入など、老後資金以外で早期に大きな支出がある場合は、iDeCoで資金をロックしてしまわないよう要注意です。運用期間が短く利息メリットが得にくいため、緊急性が高い資金ニーズを優先させるべきでしょう。

6.3 積み立てできる年数が少ない人

iDeCoは長期投資で効果を高める制度です。50代から開始すると積立期間が短く、期待したほどリターンを得づらい可能性があります。

ただし、2022年の法改正で国民年金に任意加入するなどすれば65歳まで拠出延長が可能なケースもあるため、状況に応じて検討が必要です。

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Q.運用途中で亡くなったら?

iDeCo加入者が死亡した場合、積み立て資産は死亡一時金として遺族が受け取れます。受け取りは「みなし相続財産」として扱われ、相続税には一定の非課税枠があります。

加入者本人が亡くなっても積立金が無駄になるわけではないので、家族に資産を引き継ぐことが可能です。

7. 老後資金作りをするならiDeCoよりもNISA?個人年金保険?

7.1 iDeCoがおすすめな人

安定収入があり、長期的に拠出を続けられる人はiDeCoを活用しやすいでしょう。月々の掛金全額が所得控除されるため、ある程度所得があり税負担を軽減したい人に向いています。また、貯蓄が苦手でも自動的に老後資金が貯まる点がメリットです。

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7.2 個人年金保険がおすすめな人

投資リスクをあまり取りたくない、あるいは専業主婦(夫)や扶養内パートのように所得控除が小さい人には個人年金保険も選択肢となります。契約時に決まった保険料を支払い、満期時に年金として受け取れるため、将来の金額が読みやすい定額型も人気です。ただし、途中解約では元本割れリスクがあります。

7.3 NISAがおすすめな人

資金をいつでも引き出したい場合や、50代以降でiDeCoの拠出期間が短い人にはNISAが有用です。つみたてNISAなら投資対象が金融庁選定の投資信託に限定され、初心者でも始めやすいでしょう。非課税期間内は売却益や分配金が非課税となり、柔軟に運用益を確保できます。

7.4 制度の併用がおすすめ

老後資金作りにはiDeCoだけでなく、NISAや個人年金保険を組み合わせるのが安心です。iDeCoは原則60歳まで引き出せませんが、その代わり大きな節税効果が期待できます。一方、NISAなら必要なタイミングで資金を取り出せるため、ライフイベントに合わせて柔軟に使えます。

7.5 投資目的に合わせた制度選びを

「老後に備えるのか」「教育費など別の目的もあるのか」といった用途を明確にし、必要な金額と時期を考慮してください。iDeCoには年齢上限や掛金の制限がある一方で、NISAには引き出しの自由度があるなど、それぞれの特徴を踏まえた制度選びをすれば効率よく資産を形成できます。

8. まとめ:iDeCoを活用して老後に備えよう

iDeCoは掛金5000円からでも十分に資産形成が期待できる制度です。利回り3%でシミュレーションしても数十万円の運用益と、拠出時の所得控除による税軽減効果を得られます。

ただし、課税所得がない場合や他の控除が大きい人はメリットが小さい点も事実です。まずは自分の家計とライフプランを見直し、無理のない範囲で拠出を検討してみましょう。

NISAや個人年金保険などほかの制度と組み合わせれば、さらに柔軟かつ効果的に老後資金を準備できるでしょう。

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参考資料

マネイロ編集部