「貯金」と「貯蓄」の違いをご存知でしょうか。同じように見えて、実際は異なる定義です。とはいえ、その「貯蓄」を世代別について過去10年で見ると様々な問題を抱えています。今回はそうした状況を踏まえて、どう動きだすべきなのかについて考えてみましょう。
「貯金」と「貯蓄」の定義の違いとは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]でいう「貯蓄」とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計を言います。
こうしてみると、「貯蓄」はいわゆる「貯金」や「預金」だけではないことに注意が必要です。「貯蓄」のポイントはリスクのある有価証券への投資を含むことです。
40歳代の貯蓄高は10年前と比べて減少している
総務省の同調査によれば、年齢階級別の貯蓄現在高は過去10年で見ると、40歳未満、50歳代、60歳代が増加しているのに対し、40歳代は減少しています。40歳代の2017年の貯蓄現在高は1074と10年前の1179万円よりも減少しています。
一方で、40歳代の負債現在高は2014年以降1000万円台を超え、貯蓄が減少しているのにもかかわらず、負債が増えるという好ましからざる姿になっています。40歳代世帯からすれば、「わかっているけれども何ともしがたい」という声が多いのかもしれません。
詳しくは「貯蓄は40歳代で平均でいくらあるのか」をも参考にしてみてください。過去10年で40歳代の貯蓄及び負債現在高をまとめています。
アベノミクス以降の40歳代の貯蓄動向
アベノミクス元年ともいえる2012年の貯蓄現在高は1033万円。株高となった2013年にはやや増加して1049万円。その後2016年には1065万円、2017年には先ほど見た通り1074万円となっています。
40歳代は老後を意識するにはやや早いという感覚があるでしょう。多くの人にとってはそうでしょう。ただ、平均寿命が長くなることで、それに伴う健康問題、医療問題、また両親の介護問題もこれまで以上に出てくるでしょう。年金の支払時期延長の議論などもあり、感覚的にも不確実性が増しているといえるでしょう。
であれば、「貯蓄」は過去10年でもっと増えていなければならなかったとお考えの人もいるのではないでしょうか。とはいえ、「どのように資産運用してよいかわからない」という声もあるでしょう。
世界のお金持ちはどのような運用をしているのか
世界のお金持ち、いわゆる富裕層、英語でいえばHNWI(ハイ・ネット・ワース・インディビジュアル)はどのような運用をしているのでしょうか。
こういうと「富裕層と自分は違う」という意見もあるかと思いますが、富裕層ほど安定的な運用を好みます。富裕層は失うものが多いほど減ることを嫌うのです。そしてその考えは、資産を安定的に形成したい層にも宛はなるのではないでしょうか。
こうした観点は、「世界のお金持ちは何に投資をしているか」でも見てきたように、お金持ちのポートフォリオは参考する価値はあるでしょう。以下が、おさらいとなりますが、全体の運用資産を100%としたときの資産の配分です。
- 株式:31%
- 現金及び現金同等物:27%
- 不動産(住居を除く):17%
- 債券:16%
- オルタナティブ投資:9%
富裕層はリスクばかりをとっているわけではない
富裕層のポートフォリオは以下の通りです。
- 手元流動性を意識した現金は約3割
- キャピタルゲイン狙いの株式は約3割
- インカムゲイン狙いの不動産と債券は約3割
- ヘッジファンドが約1割
というように「3-3-3-1」の資産配分(アセット・アロケーション)です。40歳代は結婚し子供がいればていれば子育て、教育費、そして住宅ローンなどへの支出や投資もかさむこともあるでしょう。
その中でも長期で資産を形成する場合には、先の資産配分を参考にして見るとよいのではないでしょうか。もっとも、株式は世界株であり、日本株ではない点に注意が必要です。年間5%でも運用することで資産を積み重ねることができていれば、貯蓄が減っていたという事態は避けられたかもしれません。日本の雇用を支える40歳代の「実りある貯蓄」が日本の経済成長を考える上でも必要な気がしてなりません。
青山 諭志