中学受験の長所も短所も知っているA氏は、子供の中学受験をどのように考えているのでしょうか。

「やりたければやればいいですし、地元の公立中学でいいと判断するならそれでもいいと思います。ただ、通っている公立の小学校では中学受験をする比率は高く、クラスのほとんどの子は受験をするそうです。そうした環境では、子供が受験をしてみたいと思うのは仕方がないと思います」

では、子供にはどうしてほしいと思っているのでしょうか。

「行きたい学校があれば受験をすればいいといっています。ただし、勉強以外の習い事は可能な限り続けるようにもいっています。それは勉強だけに時間を使いすぎるのは、その後の人生にとってもったいないからという考えです。私自身、受験勉強が本格的になった小学5年生で水泳や絵などの習い事をやめてしまいました。今考えると、頑張って続けていればよかったと猛烈に後悔しています。子供の時の感性は子供の時にしかないものですから」

理想の中学受験はあるのか

A氏は中学受験をどのように見ているのでしょうか。

「みんなが行きたがる企業に勤めたいというだけであれば、中学受験はどうしても必要な選択肢というわけではないでしょう。先ほども述べたように、大学受験でそこそこの大学に進学すればいいだけです」

そこそこの大学とはどのレベルでしょうか。

「日本の金融機関にいる頃にリクルーターをしていましたが、旧帝大の国立大学、東工大や一橋、早稲田や慶應などで採用グループが形成されており、卒業生がリクルーターを務めることが多かったですね。東工大や一橋などは入試では偏差値が高く、実際に優秀な人も多かったですが、優秀な人が多い割には採用枠が少ないと感じていました。これは様々な意見があることを承知でいいますが、卒業生の数が多い大学のほうが、学生の質にかかわらず結果として採用枠が多いのではないかと思いました。もっとも、卒業生が多い大学は競争相手の数も多いですが、間口は広いというのが実感です」

では、中学受験をする意味はないのでしょうか。

「これは私が外資系企業に勤めたことが関係していますが、海外の大学への進学の可能性を広げてくれる学校であれば意味があると考えています。それならインターナショナルスクールに行けば、といわれるのですが、端的にいって学費が高いです。日本の教育費は私立といえども世界的に見れば安いでしょう。その選択肢は捨てなくていいと思います」

A氏は、”個人的な意見であるが”として、こう続けます。

「私の両親の時代であれば、有名大学を卒業して一流企業に就職すれば安定した人生が待っていて、それで定年を迎える、というのが目指すところだったのかもしれませんが、いまはそんなシナリオは理想に過ぎません。人生100年時代といわれますし、定年を60歳や65歳で迎えた後の人生は結構長い可能性があります。そうした時には、勤め人であることのリスクもあるでしょう。そう考えると自分で起業して自分自身の体験を積み上げ、納得した人生を過ごすほうがよいのではと思うようになりました」

最後に

中学受験は、多くの親が考えざるを得ない子供にとっての大きな人生のイベントともいえます。今年の中学受験で合格した子供もいれば、希望通りの中学に合格しなかったという場合もあるでしょう。ただ、そこですべてが決まってしまうというわけではありません。皆さんは中学受験をどのように考えていますか。

LIMO編集部