昨今は急激に少子化が進んだことで、更なる子育て支援政策が続々と開始されています。

特に低所得者層への支援は多く、社会として所得が多くなくても子育てができる環境を整えることを目指しています。

そんな中、「子育て世帯生活支援特別給付金」の支給準備が着々と進められている自治体も。

今回は低所得(住民税非課税世帯など)に対する給付金の概要を解説します。

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1. 低所得の子育て世帯に対する子育て生活支援特別給付金がスタート

低所得子育て世帯の支援制度として、特別給付金が支払われることが決定しています。

条件は「児童扶養手当受給者」または「住民税均等割が非課税の子育て世帯」で、支給額は児童一人あたり一律5万円です。

原則として申請は不要としており、5月末に振込をする予定の自治体が多いです。

住民税非課税世帯の目安は自治体によって多少異なりますが、例えば東京23区の場合は下記のように決められています。

  • 生計を同一とする配偶者又は扶養親族がいる場合

35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下

  • 生計を同一とする配偶者及び扶養親族がいない場合(単身者)

45万円以下

内閣府「住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金について」によると、配偶者と扶養親族の計2人を扶養している場合、住民税非課税となる目安の年収は205万7000円としています(東京都区部の場合)。

このように支給対象は限定されていますが、児童がいる世帯にとってありがたい制度となっています。

予算額1551億円の内訳は事業費1485億円、事務費66億円となっており、全額国庫負担とされています。

2. 子育て世帯の生活は苦しくなっている

2021年の厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、世帯別の所得の状況は以下の表の通りとなっています。

少しずつではありますが、子育て世帯の所得は増えており、2011年時点では697万円であったのに対し、2020年には813万5000円まで増加しています。

【各種世帯の1世帯当たり平均所得の年次推移】

出所:厚生労働省「国民生活基礎調査 II 各種世帯の所得等の状況」

ただし、所得が増えているからといって必ずしも生活が楽になっているわけではありません。

文部科学省が発表した学習費の調査結果によると、小学校以上の学費が平成22年度時点より公立・私立ともに高騰しており、教育にかかるお金が増えていることがわかります。

【学校種別・公立私立別学習費総額合計の推移】

出所:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します」

子育てにおいては、学校の費用以外にも塾や習い事などさまざまな費用がかかります。

共働きの増加などによって世帯収入は増えていますが、低所得世帯に限らず、決して生活が楽になっているわけではありません。

3. こども家庭庁が新設

政府は子育て支援を充実させるために、2023年4月1日、こども家庭庁を新設しました。

こども家庭庁は今まで縦割りだった行政を刷新し、児童虐待、不登校、子育て世帯の支援、子育て中の女性の活躍などさまざまな課題に対応していきます。

特に重要な対策として、少子高齢化への対応や出産や子育てに希望を感じられる社会を目指すことが掲げられています。

こども家庭庁が新設されたことにより、今後も子育て世帯への支援は充実していくのか注目が集まります。

4. 子育て世帯への支援は充実していく方向であるが課題も多い

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新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、出生率は更に下がってしまい、危機的な状況となっています。

政府は少子化を食い止めるために異次元の少子化政策を掲げており、児童手当の所得制限撤廃や給付期間の延長、さらには多子世帯への給付増額など、経済的な支援を検討しています。

また、育休の取得促進や保育園の利用をしやすくするなど、経済的な面以外での支援も充実させていく方針です。

ただし、支援を充実するためには財源を確保する必要があります。

財源の候補としては、税金、社会保険料、国債発行などが考えられます。

少子化対策をすること自体に反対する人は多くはないかもしれませんが、税金や社会保険料の増加により、負担が重くなることになれば反対する人も多くなるでしょう。

財源を確保できなければ、子育て世帯への経済的支援を行うことはできません。

今後は、いかに財源を確保できるかという議論に移って行く可能性が高いでしょう。こうした動向には世間からの注目が集まります。

子育て支援政策の中には自分で申請する必要があるものもありますので、逃さずにチェックするようにしましょう。

参考資料

太田 彩子