関西圏のなかでも、日本の伝統的な文化が根付く地として国内外から高い人気を誇る京都。
平安京に遷都した794年から明治維新までの約1000年も都であっただけあって、歴史的な建造物や高度な芸術・文化などが今なお根付いています。
2023年3月には文化庁が京都府に移転し、5月15日からは本格的に業務が開始となりました。
そこで今回は、関西圏のなかでも京都弁をピックアップして、独特の表現を紹介。有名な「ぶぶ漬け」のフレーズについて紹介します!
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関西弁とは違う?京都弁にもいろんな種類がある!
一口に京都弁と言っても、細かく見ていくと色々な種類があることがわかります。
代表的なのは、御所ことばと町方(まちかた)ことばです。
御所ことばは、かつて宮中に仕える人が使っていた言い回しのこと。
宮家や公家、尼門跡寺院など、高貴な人が集う場所で使われていました。
町方ことばは、中京ことば・職人ことば・花街ことばのように、地域や職業でさらに細かく分かれています。
中京ことばは呉服屋が立ち並び栄えていた室町問屋街、職人ことばは西陣織の職人たち、花街ことばは祇園をはじめとした花街で舞妓さんや芸子さんが使っていた言葉です。
花街ことばは、舞妓さんや芸子さんがいる花街・お座敷では、現在でも耳にすることができますよ。
京都弁独特の表現とは?
関西圏の方言のなかでも、独自の地位を確立している京都弁。
アニメや漫画、ドラマなどでも京都弁を使う登場人物がいて、耳にしたり目にしたりする機会もちらほらあります。
そんな京都弁には、独特の表現がたくさんあります。今回はその中から、3つをピックアップしてご紹介します。
1. いろんなものに「お~さん」を付ける
京都に限らず、関西圏では色々なものに「お~さん」を付ける傾向があります。
いなり寿司は「おいなりさん」、お粥は「お粥さん(おかいさん)」のような感じです。
京都弁は関西圏のなかでも、特によく「お~さん」を使う機会が多いように感じられるとの声も。
確かに、月は「お月さん」、寺は「お寺さん」、芋は「お芋さん」など、さまざまなものに「お~さん」を付けています。
なかにはカボチャのように、「おかぼ」と省略するものも。
いろんなものに「お~さん」を付けているのを聞くと丁寧な印象を持ちますし、なんだかほっこりとした気分になります。
2. 道を「上」「下」で表現する
京都では、道を「上」「下」で表現することがよくあります。
「上」が北側、「下」が南側です。
道を「上」「下」で表現するようになった理由は定かではありませんが、御所に近い場所、すなわち北側が「上」であると認識されていたからとも、京都の地形が緩やかに南へ向かって傾斜しているからとも考えられています。
現在も京都市内の住所には「上ル」「下ル」が入ることがよくあり、通りの名前とセットにすると、大体どの辺りに建物があるかを推測することも可能です。
3. 語尾に「~よし」「~おし」を付けることがある
京都弁ならではの表現の1つに、語尾に「~よし」「~おし」が付く点も挙げられます。
どちらも、「~しなさい」という意味でよく使われているようです。
親が子どもに対して「はよ食べよし(早く食べなさい)」と柔らかく話しかけるときや、「やめよし(やめなさい)」としっかり伝える場合など、さまざまなシーンで使われます。
【京都弁】有名なあの「ぶぶ漬け」のフレーズは本当に使うの?
京都人はイケズということを象徴するフレーズといえば、「ぶぶ漬けでもいかがでしょうか」。
暗に早く帰ってほしいことを伝える言葉として浸透していますが、本当に使うのでしょうか?
結論からいうと、京都人であってもあのぶぶ漬けのフレーズを使うことはほぼありません。
早く帰ってほしいことを伝えるぶぶ漬けのフレーズの由来は定かではありませんが、一説によると、落語や江戸時代の小噺が起源になっているのだとか。
創作された話が都市伝説のように現代に伝わっている可能性もあるので、あまり真に受けたり緊張したりしないようにしたいですね。
「おこしやす」と「おいでやす」には違いがあった!
京都らしさを感じられる挨拶といえば、「おこしやす」と「おいでやす」。
どちらも「いらっしゃいませ」という意味だと思いがちですが、実は違いがあることをご存じでしょうか。
「おこしやす」は、心待ちにしていたり、事前に連絡を入れて約束したりしている人に対して使うフレーズ。
一方「おいでやす」は、不意に訪れたお客さんや一見さんに使う言葉とされています。
ただし、現在は「おこしやす」と「おいでやす」はほとんど同じ意味として捉えられており、あえて相手に合わせて使い分ける人は減少傾向にあるのだとか。
「おこしやす」と「おいでやす」のどちらで声を掛けられても、歓迎されているんだなぁと思いながらお店に入ってみてください。
京都弁は長い歴史に裏付けられた言い回しがたくさん!
今回は、京都弁に焦点を当て、独特の表現やぶぶ漬けのフレーズなどについて紹介しました。
京都は長い間都として機能しており、同業者や身分の違う人に対して自分が言いたいことをトゲのない形で伝えるために、上品で遠回しな伝え方をするようになったのかもしれません。
花街や昔からある商店街などでは、今でも地元の人が京都弁で話している声が聞こえてきます。
京都を訪れる際は、周囲の言葉にも耳を傾けてみてくださいね。
参考資料
太田 彩子