50歳代を迎えると、老後の生活資金について具体的に考え始める人が多くなります。

6月からは大手電力会社で電気代の値上げが控え、家計をさらに引き締める家庭も多いでしょう。

中には、「同世代はどれくらい貯めているのだろう」と気になることもあるかもしれません。

ここでは、金融広報中央委員会の調査結果をもとに50歳代の貯蓄事情について確認してみましょう。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

50歳代の貯蓄平均額は1199万円、中央値は260万円

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和4年)」によると、50歳代の貯蓄平均額は1199万円です。

自分の貯蓄額と比べて「思ったよりも平均額が高い」と感じた人もいるかもしれません。

しかし、中央値を見るとその実態が少し変わってきます。

中央値とは、回答結果の数字を小さい順に並べたときにちょうど中央に位置する値のことです。

同調査によると、50歳代の貯蓄額の中央値は260万円となっており、平均額と大きな乖離があることが分かります。

この結果から、50歳代では順調に貯蓄できている人と、そうでない人が二極化していることがうかがえます。

50歳代は貯蓄がない世帯が28.4%

貯蓄額と同時に注目したいのが「金融資産を保有していない人」の割合です。

同調査によると、50歳代で「金融資産を保有していない」と答えた人は全体の28.4%にものぼります。

近年では晩婚化も進んでいることから、40~50歳代で子供の教育やマイホーム取得に支出がかさみ、思うように貯蓄ができなかった人も多いのかもしれません。

とはいえ、定年退職の時期が近づいている50歳代では、改めて貯蓄計画について向き合う必要があります。

貯蓄がない状態から同世代の平均額である1200万円を貯めることは可能なのでしょうか。くわしくシミュレーションしてみましょう。

貯蓄ゼロから1200万円貯める運用シミュレーション(10年)

仮に、現在50歳の人が10年間で1200万円を貯めようと思うと、預金の場合は毎月10万円の積立額が必要となります。

しかし、貯蓄がない状態から毎月10万円もの積立額を捻出するのはあまり現実的とはいえません。

低金利下の現在では、投資信託などの金融商品で利回りを得ながら貯蓄を行うことが大切です。

金融庁の「資産運用シミュレーション」を利用して、投資信託で運用した場合の毎月の積立額について見ていきましょう。

10年間の運用では毎月7~8万円の積立額が必要

先ほどと同じく、現在50歳の人が10年間で1200万円を貯める場合、利回りによって毎月の積立額が異なります。

仮に、毎年3%で運用すると毎月の積立額は8万5873円、5%のときで7万7279円です。

毎年3%で10年間運用できた場合

出所:金融庁「資産運用シミュレーション」

毎年5%で10年間運用できた場合

出所:金融庁「資産運用シミュレーション」

預金だけで準備する場合に比べて積立額が抑えられるものの、それでも毎月7~8万円の負担は大きなものです。

ハイリスク商品でより高い利回りを追求する選択肢もありますが、運用期間が10年の場合はリスクが高い運用方法を選ぶことはおすすめできません。

ハイリスク商品は価格の変動が大きいため、いざ資金が必要となったときに損失が出ている可能性があるためです。

貯蓄ゼロから1200万円貯める運用シミュレーション(15年)

毎月の積立額の負担を抑えるためには、運用期間を延ばすことを検討しましょう。

一般的に年金の支給が始まる65歳までの15年間で運用する場合、毎月の積立額はいくらになるでしょうか。

15年間の運用では毎月4~5万円の積立額

運用期間が15年間になると、毎月の積立額は利回り3%のときで5万2870円、5%のときで4万4895円となります。

毎年3%で15年間運用できた場合

出所:金融庁「資産運用シミュレーション」

毎年5%で15年間運用できた場合

出所:金融庁「資産運用シミュレーション」

運用期間が10年のときに比べて、3万円ほど積立額が少なく済むことが分かります。

毎月4~5万円の積立額であれば、支出を見直すことで捻出が可能な水準かもしれません。

「今から1200万円も貯めるのは無理」と諦めてしまうのではなく、まずは出来る範囲から運用を検討してみることが大切です。

資産運用は50歳代からでも可能

50歳代は貯蓄に成功している人がいる一方で、3割近い人が金融資産を保有していない状況です。

しかし、資産運用は50歳代からでも十分始められます。

特に投資信託は毎月少額の積立から始められますので、まずは毎月無理のない金額で積立投資を検討してみるのもひとつでしょう。

参考資料

椿 慧理