オリエンタルランド(4661)の株価は2022年末以降、上昇傾向となっています。多くの企業が影響を受けた3月の金融セクター不安においても、ほとんど影響を受けることなく上昇を継続しています。

オリエンタルランドの2022年12月以降の株価の推移(終値ベース:円)2022年12月30日~2023年5月12日

出所:各種資料をもとに筆者作成

2022年12月30日~2023年5月12日の上昇率は約33%となっています(終値ベース。以降も特記ない限り終値ベース)。

コロナ禍からの経済の正常化が進む中で、客数の回復が進んでいます。また、コロナ禍の値上げや新たな制度導入により、客単価が向上していることも追い風となっていると考えられます。

今回はオリエンタルランドの株式について見ていきましょう。

※株式分割の影響は、株価や配当金、株式数など全て遡及修正して株価を調整しています。
※記事中で記載の株価は全て終値となっています。

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1. 【オリエンタルランドの株(4661)】コロナ禍からの正常化に伴う客数増による業績回復

たとえば、株価の上昇が進む2023年1月30日に発表された2023年3月期第3四半期の決算では、売上高が前年同期比+84.4%の3510億円となり、前年は営業利益で赤字だったところが、856億円の黒字化に成功しております。

具体的な数値はまだ明らかになっていませんが、決算説明では客数の増加が業績回復の原動力となっていることを発表しています。

また、この時には業績予想の上方修正も行っていて、たとえば売上高では2022年10月時点の4421億円から4646億円に引き上げられています。

1月時点の好業績に加え、上方修正も株主に対して安心感をもたらし、株価を上昇させる要因となったと考えられます。

2. チケット価格の値上げや新たな施策が客単価の向上に寄与

2023年3月期第3四半期の決算では、客単価の上昇もまた、売上の向上に寄与していると公表しています。オリエンタルランドはコロナ禍以降、収益性を確保するためにさまざまな施策をおこなっています。

その一つはチケット価格の値上げで、2020年3月末時点ではチケット価格は1デーパスポートが大人7500円でしたが、足元は日によって入園料が変わる仕組みとなっており、たとえば2023年5月20日(土)は9400円となっています。

また、2022年5月には「ディズニー・プレミアアクセス」というシステムを導入。こちらは一部のアトラクションについて、手数料を支払うことで待ち時間を短く利用できるシステムです。

このような客単価を高める施策が、客数回復との相乗効果で売上高の向上に寄与したのです。

3. 3月の金融セクター不安の波及は限定的に

オリエンタルランドは、自社のテーマパークの売上の回復が進んでいたこともあり、2023年3月に発生した米シリコンバレーバンクの破綻やクレディ・スイスの買収にともなう影響は限定的でした。

たとえば3月の月内の最大下落率は日経平均で▲5.9%であったのに対して、オリエンタルランドは▲3.5%にとどまっています。

市場平均よりも下落は限定的なものにとどまり、短期間のうちに株価は再び回復傾向となりました。

4. 気になるオリエンタルランドの配当金や株主優待とは

オリエンタルランドの株主優待は経営している東京ディズニーリゾートのパスポートチケットで、例年は3月末と9月末の株保有者に付与されます。

これまでは100株以上で年間1枚(3月末分のみ)、400株以上で年間2枚(3月と9月に1枚ずつ)、最大2400株で年間12枚(同6枚ずつ)でしたが、2023年4月に株式が分割されたため、いまは500株で年間1枚、それ以上の場合も3月末以前の5倍の株式数で付与される仕組みになっています。

株式分割時には1株の権利が1/5になる(理論上は株価も1/5になるが、実際の株価は市場の売買によって決定づけられる)ので、優待基準が厳格されたわけではありません。

むしろ、長期保有株主向けの優待制度においては3年間継続保有すれば100株以上でも優待券が1枚支給されることとなったため(長期保有株主向け優待制度は分割前も100株以上)、投資金額でみたときには優待を受けるハードルは若干ながら下がったとみることもできます。

また、配当金についても近年着実に支給されていて、コロナ禍により苦境に立たされて減配となった2021年を底に、2年連続で増配を達成。2023年3月期は年間40円となっています。

出所:オリエンタルランド「配当金」

2024年3月期の予想は9円となっていますが、1株→5株への株式分割がおこなわれた後なので、分割の影響を除外するために5倍した場合は45円となります。すなわち、2023年5月12日時点では実質的には増配を目指しているということを意味します。

これらの株主還元姿勢は、個人投資家にとっては同社の株を長期保有するインセンティブとなるでしょう。

※本記事は執筆時点の最新公開データをもとに執筆されたものです。

参考資料 

 

宮野 茉莉子