2022年7月29日に厚生労働省が発表した「2021年度雇用均等基本調査」によると、新たに役職に就いた昇進者に占める女性の割合は、課長相当職以上で14.5%でした。
2019年の調査と比べると2.5ポイント上昇しており、企業において女性のキャリアアップが少しずつ図られているといえるでしょう。
一方で、女性は年収400万円を超えていると、周りから羨ましいといわれることがあります。
6月からは大手電力会社による値上げが控えるなど、昨今の物価高では支出が増える一方のため、収入アップについて考える機会も増えるでしょう。
本記事では、女性が年収400万円を超えると羨ましがられる理由を、年代別の平均年収とあわせて解説します。
400万円に満たない女性の平均給与
国税庁が2022年9月に発表した「2021年分 民間給与実態統計調査」によると、女性の平均給与は302万円でした。
平均で見ると400万円を下回っています。
男女別に分けて統計を開始した2019年から推移をたどると、約300万円を推移していました。
正社員の場合においても、女性の平均年収は約389万円で、400万円を下回りました。
男性が約570万円なので、同じ正社員でも約180万円の開きがあります。
以上から、女性の年収は上向きにくく、400万円を超えている割合も男性と比べると相対的に少ないといえるでしょう。
では、年代別で差が開いていないのか確認していきましょう。
女性の平均給与を年代別に確認
国税庁の「2021年分 民間給与実態統計調査」によると、女性の平均給与を各年代で見ると、男性に比べ年代間の平均給与に開きが小さい結果となりました。
25歳から59歳までの期間、平均給与は常に300万円台で、一度も400万円以上にはなりませんでした。
なぜこうした結果となっているのか、考えられる理由について確認します。
女性の年収が上向かないとされている3つの理由
女性の年収が上がりにくい理由を、3つの項目から考えていきます。
- 管理職の割合
- 非正規雇用の割合
- 年収の壁
女性の平均年収と、上記の項目がどのように関係しているのか、それぞれ確認していきましょう。
1. 管理職の割合
管理職の割合が少ない点が、女性の平均年収が上がりにくい理由のひとつとなっています。
厚生労働省が発表した「2021年度雇用均等基本調査」によると、管理職に占める女性の割合は以下の結果となりました。
- 係長相当職:18.8%(2020年度18.7%)
- 課長相当職:10.7%(2020年度10.8%)
- 部長相当職:7.8%(2020年度8.4%)
収入水準が一般職に比べ高い傾向である管理職に従事している女性の割合が、各役職でみると20%を下回っています。
結婚や出産を機にキャリアを中断、もしくは育児と仕事の両立において管理職へのキャリアアップをしづらい状況にあるといえるでしょう。
管理職にならなければ収入が同じ水準で推移しやすいため、平均年収が伸びない要因にもなっています。
2. 非正規雇用の割合
非正規雇用の割合も平均年収に影響を及ぼしているといえるでしょう。
内閣府の「男女共同参画白書 2022年版」では、女性の非正規雇用労働者は1413万人でした。
女性の雇用労働者全体の53.6%が非正規雇用として就業している点も、平均年収が400万円を下回っている要因といえるでしょう。
3. 年収の壁
非正規雇用労働者であっても、仕事をする時間が増えれば収入も高くなります。
しかし、非正規雇用労働者は、一定の収入に抑えるために仕事の時間をセーブしてきました。
いわゆる「年収の壁」が問題となっています。
年収の壁とは「配偶者の扶養から外れない年収のライン」です。
扶養から外れると、自身で社会保険料を支払う必要が出たり、税金に影響したりします。
さらに、配偶者の家族手当も付与されません。
その結果、扶養から外れるほど働いても、扶養内でいた時より世帯の手取り収入が減少する「逆転現象」が生じる可能性があります。
野村総研が2022年10月27日に発表した調査によると、以下のモデルケースで妻の年収が106万円を超えた場合、世帯の手取りが24万円減少しました。
- 夫の年収は500万円
- 二人世帯で他に扶養している家族なし
- 家族手当を月1万7000円支給
「年収の壁」問題が、年収水準を低い状態にしている可能性があります。
女性が活躍できる環境の整備が重要
女性の平均給与が400万円を超えていない理由や原因を、3つの観点から解説しました。
「年収の壁」問題や非正規雇用の割合、結婚や出産によってキャリアアップが図りにくい問題が関係しているといえるでしょう。
岸田首相が意見表明したため、2023年3月31日に発表された「異次元の少子化対策」たたき台には「年収の壁」見直しが明記されました。
仕事や育児が可能な範囲で両立できる支援策や環境整備が、女性の収入アップにつながるといえるでしょう。
今後どのような支援策が打ち出されるか、注目が集まります。
参考資料
- 厚生労働省「2021年度雇用均等基本調査」
- 国税庁「2021年分 民間給与実態統計調査」
- 内閣府「男女共同参画白書 2022年版」
- 野村総合研究所「年収の壁による働き損の解消を-有配偶パート女性における就労の実態と意向に関する調査より」
- 内閣官房 こども政策担当大臣 「こども・子育て政策の強化について(試案) 」
川辺 拓也