2023年4月12日、75歳以上が加入している後期高齢者医療制度が段階的に引き上げられる改正案が、衆議院を通過しました。

全体の約4割が保険料の値上げとなる見通しです。

だからこそ、70歳代でも安心して生活ができる貯蓄が必要となるでしょう。

本記事では、70歳代の貯蓄額を割合別に解説し、50歳代から始められる老後の生活に向けた対策を紹介します。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

70歳代の貯蓄事情

70歳代の貯蓄状況について確認していきましょう。

金融広報中央委員会は「家計の金融行動に関する世論調査」で、70歳代の金融資産保有額を調査しました。

その結果、金融資産を保有していない70歳代は18.7%となっています。

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上の世帯)令和4年」を元に筆者作成

およそ5世帯に1世帯の割合で貯蓄がない状態です。

一方で、金融資産が3000万円以上ある割合も18.3%でした。

70歳代は貯蓄できている世帯と、そうでない世帯との差が顕著に出ているのが実態です。

老後の生活を安心して過ごすために、50歳代からどのような対策が必要かを確認していきましょう。

50歳代からできる老後の準備

50歳代からできる老後の対策に有効な方法として「支出対策」と「資産運用」の2つにわけて解説します。

それぞれ確認していきましょう。

1. 支出対策

70歳代の老後生活に向けて、家計の支出をどれだけ減らせるか見直しましょう。

総務省統計局が2023年2月7日に公表した家計調査によると、70歳代の消費支出は平均で24万1596円でした。

一方で、50代の消費支出は平均で36万2164円です。

各項目で支出がどれだけ違うのかについて確認すると、下表の通りです。

出所:総務省統計局「家計調査(家計収支編) 二人以上の世帯 詳細結果表 2022年」を元に筆者作成

保健医療費以外の項目をみると、70歳代の支出は50歳代の支出を下回っています。

携帯電話の料金やサブスク費用といった、毎月の固定費を減らせないかチェックしましょう。

2. 資産運用

50歳代の老後対策では、資産運用もカギとなるでしょう。

少ない資金でも継続的に運用を続ければ、70歳の時点でまとまった資金として活用できる期待がもてます。

50歳代でこれから資産運用を始める人は、NISAを検討してみるのも良いでしょう。

NISAは現行制度が拡充されて、2024年以降「新しいNISA」として導入される予定です。

出所:金融庁「新しいNISA」

現行では年間投資枠がつみたてNISAは40万円、一般NISAで120万円です。

決まった金額を資産運用に回したい場合は、つみたてNISAが検討しやすいでしょう。

出所:金融庁「新しいNISA」

2024年以降の新NSIAでは「つみたて投資枠」が年間120万円までとなる見通しです。

さらに、非課税保有期間が無期限化されるので、投資の運用益をいつでも引き出せます。

70歳代以降の生活資金として、NISA口座に資金を蓄えておけるので、今のうちにNISAについて理解を深めておくと良いでしょう。

公的年金への対策も大切

公的年金の受給額を増やす方法を考えることも重要です。

とはいえ、公的年金は収入によって受給額が変わるので、一気に増やせるものではありません。

年金の追納や、繰下げ受給を将来的に実施する方向で年金額を増やしましょう。

  • 年金の追納:年金の未納による空白期間を埋める方法
  • 繰下げ受給:年金の受給開始時期を遅らせる方法

特に、年金の繰下げ受給では、1年間受け取り開始時期を遅らせることで8.4%年金額が増額します。

定年後も仕事ができるなら、年金の繰下げをして受給額を増やす方法も検討しましょう。

70歳代で貯蓄が尽きない対策が大切

70歳代は5世帯に1世帯が貯蓄ゼロの状況です。

近年、平均余命の伸びとともに資産が老後の生活中になくなる「資産寿命ゼロ問題」がリスクとして顕在化しています。

50歳代からでも、支出を減らす対策や資産を増やす取り組みを行えば、70歳代の生活資金は少しでもゆとりあるものになるでしょう。

今後のライフプランを見据えながら、最適な方法で老後に向けた対策を始めてください。

参考資料

川辺 拓也