2023年5月12日の加藤大臣の会見において、マイナンバーカードにそれ以外の人の情報が紐づいた事案について言及されました。

マイナ保険証を病院で利用したことをきっかけに、マイナンバーカードに別人の情報が紐付けされていたことが発覚したというものです。

原因のひとつは入力時におけるミスとのことで、今後は十分に配慮し、徹底していくとしています。

マイナバーカードを巡っては、2023年5月末に終了を予定していた「マイナポイント」の申込終了日が、2023年9月末まで延長されました。

出所:総務省「マイナポイントの申込み終了日時が延長となりました」

マイナンバーカードの申請状況は、人口に対する割合でみると、2023年4月30日時点で約76.7%となっています。

次に政府が推し進めるマイナンバーカードの政策は、公的証明書との一体化です。

本記事では、マイナンバーカードと一体化を予定している健康保険証や運転免許証がどうなるのかについて解説します。

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マイナンバーカードにより紙の健康保険証は廃止の方向

2023年4月27日、紙の健康保険証の廃止を盛り込んだ「マイナンバー法の関連法改正案」が賛成多数で衆議院を通過しました。

そのため、紙の健康保険証は2024年秋に廃止される方向です。

紙の健康保険証を廃止する背景には「マイナンバーカードと健康保険証の一体化(=マイナ保険証)」を推進したい背景があります。

「マイナ保険証」を普及させるため、政府は「マイナポイントの付与」と「診療報酬の改定」を実施しました。

  • マイナポイントの付与:マイナ保険証を申請すれば、7500円分のポイントを付与
  • 診療報酬の改定:マイナ保険証の利用で診療報酬の負担を軽減

マイナ保険証に対応できるシステムを導入した医療機関の場合、紙の健康保険証で受診すると医療費が高くなります。

2022年10月に改定された診療報酬は、下表の通りです。

出所:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第527回)」を元に筆者作成

初診の場合は診療報酬が40円(自己負担が3割の場合12円)なのに対し、マイナンバーカードを利用すると20円(同6円)になります。

さらに、医療機関がマイナ保険証の対応システムを早期に導入するように、2023年4月から時限的に診療報酬に特例措置を設けました。

特例措置では、初診と調剤の加算が増額されたほか、自己負担の必要がなかった再診にも加算されています。

出所:厚生労働省「令和5年4月1日からの診療報酬上の特例措置等について」

初診時の自己負担は3割負担で18円、再診時は6円の差となりました。

今後、全国的に医療機関がマイナ保険証の対応システムに対応すれば、紙の健康保険証だと医療費の負担が増えます。

運転免許証もマイナンバーカードと一体化?

運転免許証も、マイナンバーカードと一体化できないか議論が行われています。

警察庁が発行している「令和3年 警察白書」によると、一体化によって免許証の交付や更新手続きの利便性を向上させる狙いです。

  • 住所変更手続のワンストップ化
  • 居住地外での迅速な運転免許証の更新手続
  • オンラインでの更新時講習の受講

運転免許証とマイナンバーカードの一体化は、2024年度末の導入を予定しています。

現時点では、健康保険証のように運転免許証が廃止される予定はありません。

とはいえ、政府はマイナンバーカードによる個人情報の一元管理を理想としているため、廃止に向かう可能性もあります。

運転免許証が今後どのように扱われていくのか、引き続き注目していきましょう。

介護保険証もマイナンバーカードと一体化?

マイナンバーカードとの一体化は、介護保険証に及ぶ可能性もあります。

厚生労働省は、介護保険証とマイナンバーカードを一体化できないか検討を始めました。

2023年2月27日に行われた社会保障審議会で議論が行われ、2025年度に早ければ導入される見通しです。

介護保険証も、現時点では廃止される予定はありませんが、マイナンバーカードと一体化するメリットはあると発表しています。

  • 介護保険証の再発行や更新の手続きが簡素化
  • 自己負担割合の決定に必要な情報が迅速に把握可能

マイナンバーカードの作成を希望しない人や、障害があって作成できない人へどう対応するか、今後も慎重な議論が必要です。

マイナンバーカードとの一体化は賛否両論

マイナンバーカードと公的証明書の一体化は、さまざまな議論を巻き起こしています。

利便性の向上が期待できるとする声が挙がる一方で、個人情報の観点からマイナンバーカードの作成に否定的な声も見受けられました。

政府が推し進める事業である以上、国民にとって理解が得られる内容でないと広く支持は得られないでしょう。

健康保険証と同じく、公的証明書とマイナンバーカードが今後どのように一体化していくのか注目が集まります。

参考資料

川辺 拓也