ソーシャルレンディングは、今後の金融のあり方を大きく変える可能性のある重要なトレンドです。
では、ソーシャルレンディングの特徴とはどのようなものなのでしょうか。なぜ、ソーシャルレンディングは今後金融界に大きな変革をもたらすと予想されるのでしょうか。それを理解するためには、ソーシャルレンディングを可能にしたテクノロジーであるインターネットの3つの特徴を知ることが大事になります。
今回は、ソーシャルレンディングの可能性について、インターネットの3つの特徴を踏まえながら考えていきたいと思います。
ロングテール:小口顧客のニーズを満たす
インターネットの1つ目の特徴は「ロングテール」です。この言葉、聞いたことがありますでしょうか?
ちょっと本屋さんのビジネスを想像してみてください。この世の中に出版されている本は無数にありますが、実は本屋さんの店頭に並んでいる本はそのうちのごく一部です。そして、その並んでいる本の中のそのまた一部(一部のベストセラー)が売り上げのほとんどを稼ぎ出しています。下の図では、緑色の部分です。
図:Wikipediaより
本屋さんの店頭スペースは限られているので、ある程度の売り上げが見込まれる本でないと店頭に並べることはできません。1、2冊しか売れないような専門分野の本(上の図の黄色い部分)を店頭に置くのでは販売効率が悪くなってしまいます。
そのため、多くの本は日の目を見ずに(本屋さんの店頭に置かれることなく)、埋もれていくことになります。需要はあるにも関わらず。
この状況を変えたのがオンラインの書店です。オンライン書店は物理的な店舗を持つ必要がないため、スペースを気にせず、少しの部数しか売れない本も取り揃えることができます。そして少しの部数しか売れない本を多数取り扱うことで、多くの部数が売れる少数の本を取り扱うのに匹敵する売り上げを稼ぎ出すことができるのです。
ちなみに、上の図は実際にはより右に長く、黄色い部分が長―――く右に続いています。その様子が「しっぽが長い」ように見えることから「ロングテール」と呼ばれます。このように、多くの人の少しのニーズを満たすことができるのがインターネットの良いところです。
これと同じことが金融でも起きています。今までは、多額のお金を少数のお客さんに貸し出すことで金融機関は売り上げを伸ばしていました(図の緑色の部分)。逆に言えば、1回で大きな額を借りてくれるお客さんにしか貸し出していなかったのです。
物理的な店舗やATMを多数抱える金融機関は取引1件当たりの取引コストが高く、少額しか借りてくれないお客さんと多数の取引を行うことは理にかなっていませんでした。しかし、インターネットを使うことで、1件当たりの取引コストを大幅に下げ、少額のお金を多数のお客さんに貸し出すこと(図の黄色の部分)でも売り上げを伸ばせるようになったのです。
少額のお金が必要なたくさんの人に貸し出し、彼らのニーズを満たすことで売り上げを伸ばすことができる、これがソーシャルレンディングの1つ目の特徴です。
P2P:借り手と貸し手双方のニーズを満たす
2つ目の特徴はP2P(ピアツーピア)です。
Airbnbをご存知でしょうか? 個人が自分の家の余っているスペース(部屋)を、そのスペースを借りたい人(宿泊客)に一定の期間貸し出すという、いわば自分の家の空いている部屋をホテル代わりにしてもらうサービスです。
インターネットの登場前は、これは実現が難しいサービスでした。なぜなら余っているスペースがある人が、そのスペースを借りたい人を見つけるのが難しかったからです(もしくは、スペースを借りたい人が余っているスペースを持っている人を見つけるのが難しかったからです)。
たとえば、家の一部屋が空いている人が家の前に「部屋、余ってます!」という看板を出し、その看板の前をスペースを借りたい人が通りかかる、という偶然が起こらないとこのサービスは成立しませんでした。
この「個人間の需要と供給の偶然の一致」を意図的に起こせるようになったのがインターネットです。インターネットを使えば、スペースを貸したい個人と借りたい個人がオンラインで容易に出会うことができます。
まったく同じことが金融でも起きています。お金を貸したい個人と借りたい個人がインターネット上で出会うことによって、貸し借りの取引を実現することができます。そうすることで、両者のニーズ(資金供給ニーズと資金需要ニーズ)を満たし、ウィン-ウィンの関係を実現することができる。これがソーシャルレンディングの2つ目の特徴です。
ちなみに、ピアツーピアのピアとは「同等の者」という意味です。銀行が個人にお金を貸すのでは、同等の者同士が取引しているとは言えないでしょう。個人が個人と取引すること、同等の者同士が取引することが「ピアツーピア」の語源です。
グローバル:国境を越えたところにあるニーズを満たす
3つ目の特徴は、言わずと知れた「グローバル」です。
インターネットに国境はありません(もちろん、検閲やアクセス制限等で情報を遮断している国もありますが)。アメリカ人が旅行で日本に来る時に、Airbnbを使って部屋の余っている日本人を探すことも容易ですし、ヨーロッパでしか手に入らない本をAmazonを使って日本から注文することも簡単です。
金融にしても同じことです。たとえば、日本でお金を運用したいと考える人が、中南米で資金需要のある人にお金を貸すことが簡単にできるのです。
上の3つの特徴を踏まえると、インターネットとは「個人間の(=P2P)、小規模だが多数の(=ロングテール)需要と供給を、国境を越えて(=グローバル)つなぐことができる」という特徴を持っている、とまとめることができます。
これを金融にあてはめたものがソーシャルレンディングに他なりません。ソーシャルレンディングが広まることで、人々が国境を越えて資金供給ニーズと資金需要ニーズをきめ細やかに満たすことができるようになるのです。
様々な分野でインターネットが産業構造自体を変えてきている中、金融においても変革が起こるのは時間の問題でしょう。
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