ハイブリッド車やEV等に車両接近通報装置の装着が義務化へ
10月6日、国土交通省(以下、国交省)は、道路運送車両の保安基準等を改正し、ハイブリッド自動車及び電気自動車等に対し、歩行者等に自動車の接近を音で知らせる「車両接近通報装置」を義務付けることを正式に発表しました。
今回の規制をかいつまんで言うと、ハイブリッド車やEVといった次世代エコカーの走行時の静粛性が著しく高いため(低速時では騒音をほとんど出さない)、高齢者や聴覚障害者の交通事故が増加していることを勘案し、ガソリン車と同じレベルの走行音を出して周囲に接近を知らせる装置の装着を義務付けるということです。
ふと振り返ると「プリウス」が接近していたという経験
皆さんも、狭い路地を歩いている時、後ろに何かを感じて振り返った時に、トヨタ自動車「プリウス」のようなハイブリッド車が間近に迫っていたという経験はありませんか? 歩道がガードレールで区切られているような都心部の道路ではあまりないと思いますが、郊外や地方の狭い路地では、よくある話なのです。
実は、この件は以前からネット上でたびたび問題になっていました。ただ、それはどちらかと言うと、日本の次世代エコカーの静粛性を高く評価するような内容でした。また、自動車メーカーも一部車種には自主的に音楽を流すような装置を付けていましたが、手動で切ることができるものでした。
今回の義務化の背景にある生活行動の大きな変化
今回、国交省がこうした接近通報装置の装着義務化へ踏み切った背景には、日本社会の大きな変化があると考えられます。
先ず挙げられるのが、高齢化の進展です。何歳から高齢者と呼ぶのかは議論がありますが、高齢化に伴って聴覚や視覚は確実に減退していきます。また、仮に聴覚や視覚が衰えていないように見えても、耳や眼で得た情報を脳神経に伝達する機能は、高齢に伴って衰えていくと言われています。
高齢者が増えてくれば、静粛性の高い次世代エコカーとの接触人身事故が増加するのは当然と言えば当然かもしれません。
また、近年は高齢者による自動車運転事故が増加し、高速道路での逆走や歩道での高速走行など、明らかに老化による感覚麻痺が原因の事故も目立ち始めています。
そのため、各自治体では高齢者に対して、様々なクーポン券配布や代替サービス交付(運行バスの無料パス等)などにより、運転免許証の返上を奨励しています。その結果、街中を歩行する高齢者が増えていると推測されています。
高齢者だけでなく、若年層の接触事故も増えている模様
さらに、若年層の行動様式の変化も事故増加につながっています。歩きながらスマホゲームに夢中になったり、音楽を聴きながら歩いたりなど、度を越した行動も目につきます。
実際、高齢者ばかりでなく、こうした若年層の接触事故も増加の一途をたどっている模様です。今回の接近通報装置を付けても、イヤフォンで両耳を塞いでいる人にどれだけ効果があるか疑問ですが、何か対策を打たなければということでしょうか。
薄暮時における「オートライト機能」の義務付けも発表
なお、今回は「車両接近通報装置」の義務化に加えて、薄暮時における交通事故実態を踏まえ、周囲の明るさが一定以下となった際に前照灯が自動で点灯する「オートライト機能」の義務付けも発表されました。
この義務化の背景も、車両接近通報装置の義務化と同じと考えていいのではないでしょうか。自動車メーカーの安全対策には終わりがないと言えましょう。ちなみに、この「オートライト機能」は、海外ではずいぶん昔から義務化されている国が少なくありません。
結局は運転者も歩行者も注意が必要
今回発表された安全装置の装着適用時期ですが、「車両接近通報装置」は新型車が2018年3月8日~、継続生産車が2020年10月8日~となります。
また、「オートライト機能」は新型車が2020年4月~、継続生産車が2021年10月~となります(一部貨物車を除く)。まだまだ先の話ですが、大切なことは、運転する方も歩く方も十分注意しなければならないということです。
LIMO編集部