国内半導体大手のルネサス エレクトロニクスが発表した2019年度第3四半期(7~9月)業績は、売上高が1834億円(前四半期比5%減/前年同期比2%増)、営業利益率が14.7%(同0.5ポイント増/同2.7ポイント増)となった。営業利益は売上減や営業費用が想定よりも増加したことで、従来想定を下回った。
営業利益は予想下ぶれ
売上高は当初予想(1807億~1887億円)の範囲内に収まったが、営業利益率は当初予想の16.5%から2ポイント弱下回った。自動車向けを中心に想定を下回ったことや、営業費用の増加、ボーナスの引き当てに伴う処理が利益を押し下げた。セグメント別では自動車が931億円(同2%減/同0.5%減)、産業・インフラ・IoTが859億円(同8%減/同6%増)。また、今回新たに開示されたセグメント別粗利益率は、自動車が40%弱、産業・インフラ・IoTが55%弱となった。
今回発表された7~9月期の売上高は、前年同期比で増収となっているが、同社は19年3月末に米IDT(Integrated Device Technology)社の買収を完了、4~6月期から連結対象となっている。前年同期にIDT社が連結対象であったと仮定すると(プロフォーマベース)、19年7~9月期売上高は約9%の減収となり、トップラインの減少が目立つ。同社によれば、落ち込みが大きいのは自動車以外の分野であり、市場シェアの減少という指摘については否定的な見解を示した。決算カンファレンスでもこの点について、「(トップラインの減少について)競合と比べても似たり寄ったり」(柴田英利CEO)と、個別要因でないことを強調した。
40nmマイコン順調もSoC製品は後ろ倒し
市場動向について、自動車向けは顧客であるOEMから慎重な計画が上がってきているほか、産業向けは不透明感も強いとして、市場は依然として弱含みの展開になっているという。一方、データセンター(DC)と5G関連を好調な分野として挙げ、DC向けの一部製品は第4四半期から需要が拡大し、20年後半にはこれがさらに加速していくとの見方を示した。
自動車向けは40nmマイコンが順調に立ち上がっており、自動車生産台数の下ぶれを新製品の立ち上げでカバーする構図が成立しているものの、自動運転やADASを中心としたSoC製品については、「16~17年度に得た案件において、採用が平均で2年程度後ろ倒しになっているものがある」(オートモーティブ事業本部長の山本信吾執行役員常務)として、一部で計画に狂いが生じている。
前工程ラインの稼働率(ウエハー投入ベース)は、前四半期から1桁%後半増加して約6割で推移。第4四半期は年末年始に伴う稼働日数の影響から1桁%前半の減少を予想する。第4四半期は売上高として1825億~1905億円を計画。粗利益率は45%、営業利益率は14%を予想する。
中期計画は年明けに公表
先送りされていた中期経営計画については、足元での不透明感が強いとして、年明けに詳細なアップデートを行うとした。ただ、新たな財務モデル策定に向けた骨子案については、柴田CEOが①特定分野・製品に依存しないバランス志向②自動車とそれ以外で異なる財務ターゲットを設定③IDTとの統合およびコストシナジーを挙げ、これを基に中期計画を策定していく考えを明かした。
①については、製品とエンドマーケットの多様化を追求してバランスのとれた成長を志向していくもので、インターシルならびにIDTを買収したことで、これをさらに推し進めていく。具体的には、製品軸ではアナログ/ミックスドシグナル分野を、市場軸ではインフラとIoT分野を補完できたという。
②に関しては、これまで同社で粗利益率などの1つの財務ターゲットをベースに事業を展開してきたが、「車載とそれ以外で収益性がかなり異なる」(柴田CEO)状況で、今後は実態に即したオペレーションを実施していく。同社の場合は車載が全社平均に比べて収益性が低い状態が長年続いている。
③のうち、コストシナジー効果については当初のターゲット想定に比べて上ぶれて推移しており、第3四半期は当初想定に比べて3.6%、第4四半期には当初ガイダンスを10.6%上回る見込み。また、ルネサス製品とインターシル、IDT製品を組み合わせてリファレンスデザインなどの提供を行うソリューションビジネスは、19年末までに100種類の「ウィニング・コンビネーション」(ルネサスとインターシル/IDT製品の組み合わせによるリファレンスデザイン)を取り揃えるほか、今後5年間でトータル250億ドル規模のデザイン・ウィンを目指していく考え。
電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳