「実家の両親が、来年65歳で年金生活に入る」—そんなとき、年金だけで暮らしていけるのかと同時に気になるのが、住まいのお金ではないでしょうか。
持ち家で住宅ローンを払い終えていれば、毎月の家賃はかかりません。一方、賃貸に住んでいると、年金生活に入ってからも家賃を払い続けることになります。住まいの形によって、老後の家計の見え方は大きく変わります。
この記事では、高齢の夫婦の住まいの形と借家の家賃、年金で暮らす夫婦の家計、働き方の型ごとの年金額を、総務省と厚生労働省の資料で順に確かめます。
※住まいの形と家賃は、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」の数字です。
1. 【住まいのかたち】高齢者のいる夫婦のみの世帯は87.6%が持ち家
同調査で、夫婦の両方またはどちらかが65歳以上の「高齢者のいる夫婦のみの世帯」は、686万9000世帯でした。住まいの所有の関係を見ると、次のとおりです。
1.1 借家に住むのは12.3%
- 【持ち家】602万1000世帯(87.6%)
- 【借家】84万2000世帯(12.3%)
- 【うち民営借家】48万2000世帯(7.0%)
- 【うち公営の借家】23万8000世帯(3.5%)
※総数686万9000世帯には、住宅の所有の関係が「不詳」の世帯を含みます。民営借家は「民営借家(木造)」と「民営借家(非木造)」の合計です。民営借家の割合は、LIMO編集部が世帯数から計算しました。
1.2 高齢単身世帯では借家が32.2%
同調査では、65歳以上の単身世帯の借家の割合は32.2%でした。夫婦のみの世帯に比べると、借家に住む世帯の割合が高くなっています。両親のどちらかが一人暮らしになったときの住まいも、あわせて考えておきたいところです。
2. 【借家の家賃】1か月当たり5万9656円、民営借家(非木造)は6万8548円
同調査によると、借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は5万9656円で、2018年と比べて7.1%増えています。主な借家の種類別に見ると、次のとおりです。
2.1 公営の借家は月2万4961円
- 【公営の借家】月2万4961円
- 【都市再生機構(UR)・公社の借家】月7万1831円
- 【民営借家(木造)】月5万4409円
- 【民営借家(非木造)】月6万8548円
- 【給与住宅】月3万7993円
2.2 家賃は年金生活の間も続く
借家全体の平均の家賃が12か月続くと、年71万5872円です。賃貸に住む場合、この家賃を年金などの収入から払い続けることになります。
※家賃は、高齢者の世帯に限らない借家全体の平均です。年額はLIMO編集部による計算です。
3. 【年金生活の家計】高齢夫婦の住居費は月1万7739円、毎月4万2434円の不足
では、年金で暮らす夫婦の家計はどうなっているのでしょうか。総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」で、65歳以上の夫婦のみの無職世帯を見ると次のとおりです。
3.1 消費支出は月26万3979円
- 【可処分所得(手取り)】月22万1544円
- 【消費支出】月26万3979円
- 【うち住居】月1万7739円(消費支出の6.7%)
同資料によると、可処分所得に対して消費支出が上回り、不足分は月4万2434円です。住居費は、住まいの形を問わず、この世帯全体の平均です。
3.2 住居費は消費支出の6.7%
住居費が消費支出に占める割合は6.7%で、食料の29.9%などに比べて小さくなっています。家賃を払う世帯では、住まいのお金が家計に占める重さが変わってきます。
※住まいの形(住宅・土地統計調査、2023年)と家計(家計調査、2025年)は別の調査で、時点も対象の範囲も異なります。住宅・土地統計調査は夫婦のどちらかが65歳以上の世帯を含み、家計調査は65歳以上の夫婦のみの無職世帯です。そのため、金額を差し引きせず、それぞれの調査の中で見ています。年金額は令和8年度の概算です。
4. 【夫婦の年金月額】会社員と専業主婦の夫婦は月25万5042円、自営業の夫婦は月12万5284円
では、平均的な年金額はいくらでしょうか。
厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(2026年1月23日公表)には、令和6年度に65歳になる人の経歴の型・男女別の年金額(概算、令和8年度の月額)が載っています。夫と妻の型を組み合わせると、次のとおりです。
4.1 共働きの夫婦は月31万1433円
- 【自営業どうしの夫婦】月12万5284円
- 【会社員の夫と専業主婦の妻】月25万5042円
- 【共働きの夫婦】月31万1433円
※「自営業」は国民年金(第1号被保険者)期間中心、「会社員」「共働き」は厚生年金期間中心、「専業主婦」は国民年金(第3号被保険者)期間中心(いずれも20年以上)の型です。夫婦の合計は、LIMO編集部が夫と妻の金額を足したものです。
4.2 自営業どうしの夫婦と会社員・専業主婦の夫婦では月12万9758円の差
会社員の夫と専業主婦の妻の夫婦は、自営業どうしの夫婦の約2.0倍です。持ち家か賃貸かに加えて、両親の働き方によっても、年金生活の家計は変わってきます。
高齢者のいる夫婦のみの世帯の住まいと、借家の1か月当たり家賃(2023年)1/1
出所:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」をもとにLIMO編集部作成
5. 住まいの形で、年金生活の家計は変わる
ここまでの数字を、住まいと家計に分けて振り返ります。
高齢者のいる夫婦のみの世帯の87.6%は持ち家で、借家は12.3%です。高齢者の世帯に限らない借家全体の家賃は、平均で1か月当たり5万9656円です。賃貸に住む場合は、年金生活に入ってからも家賃を払い続けることになります。
ただし、持ち家でも家の修繕費用などがかかる場合があります。家賃のように毎月の定額的な出費というより、修繕やリフォーム費用としてまとまったお金を用意しておくと安心でしょう。
なお、年金で暮らす65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計では、手取りに対して毎月4万2434円が足りていません。年金だけでなく、持ち家か賃貸かもあわせて確かめておくと、老後の家計の見通しを立てやすくなります。
6. 【元証券会社員の視点】検証:持ち家でも賃貸でも、住まいのお金はかかる
ここからは、住まいの形ごとに、年金生活で気をつけたいお金を確かめます。
6.1 持ち家は修繕や税金の費用がかかる
持ち家なら家賃はかかりませんが、建物が古くなれば修繕の費用がかかります。固定資産税などの税金がかかる場合もあります。手すりの取り付けや段差をなくす工事など、年齢に合わせた住まいの手直しが必要になることもあります。
家計調査の住居費が小さいからといって、住まいのお金がかからないわけではない点は、押さえておきたいところです。持ち家が一軒家か、マンションかなどによっても何にいくらかかるかは変わるでしょう。
6.2 賃貸は家賃が年金の手取りから出ていく
賃貸の場合、家賃は年金の手取りから毎月出ていきます。契約の更新のときに、更新料などの費用がかかる場合もあります。
借家全体の平均の家賃で計算すると、10年で約716万円です。年金だけで足りない分は、貯蓄の取り崩しなどで補うことになると考えられます。家賃の負担を軽くするために、より家賃の低い住まいへの住み替えを考える人もいるでしょう。
また、型ごとの年金額は平均的な概算です。両親が実際に受け取る額は、加入期間や収入によって違います。
7. まとめにかえて
まずは、両親には持ち家か賃貸か、持ち家なら住宅ローンが残っていないかを確認してもらい、そのうえで、年金の見込額と並べてみると、毎月の家計の見通しを立てる手がかりになるでしょう。
住まいのお金は、年金生活に入ってからも長く続きます。
また住まいだけでなく、交通費でもまとまった費用はかかりやすいもの。車を保有していれば維持費や買い替えといったところも大きな金額となります。
住まいや交通費もあわせて老後の生活費は考えておくとよいでしょう。
※年金額は、経歴の型ごとの平均的な見積もりです。実際の受け取り額は、加入した期間や当時の収入によって異なります。見込額は、ご本人に届くねんきん定期便や、ご本人が登録する「ねんきんネット」で確認できます。
参考資料
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」
宮野 茉莉子