ITやAIの進化が目まぐるしい現代において、「子どもが私立理系に進学したいと言っても、学費が出せるようにしたい」—30代で子育て中の夫婦でそのような話が出る家庭もあるでしょう。「理系は文系より学費が高い」といわれますが、大学4年間で実際にいくらかかるのでしょうか。
学費に加えて、自宅から通うか、下宿をするかでも、かかるお金は大きく変わります。子どもが小さいうちに目安を知っておくと、教育資金の準備を考えやすくなります。
ここでは、文部科学省と日本学生支援機構の最新の資料をもとに、私立理系・私立文系・国立・公立の4年間の費用を、自宅と下宿に分けて試算します。
※学費は、文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」と「国公私立大学の授業料等の推移」の数字です。生活費は、日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査結果」の大学学部(昼間部)の数字です。
1. 【初年度の学費】私立理系は160万2053円、私立文系は121万2235円
文部科学省の調査によると、令和7年度に私立大学へ入学した人の初年度の学生納付金(定員1人当たりの平均)は、次のとおりです。
1.1 私立理系は授業料だけで年119万5313円
- 【私立理系】授業料119万5313円、入学料24万5362円、施設設備費16万1378円、合計160万2053円
- 【私立文系】授業料85万392円、入学料21万9951円、施設設備費14万1892円、合計121万2235円
初年度の合計は、私立理系が私立文系より38万9818円多くなっています。
1.2 国立の授業料は年53万5800円
国立大学の授業料は、国が示す標準額で年53万5800円、入学料は28万2000円です。公立大学は平均で、授業料が年53万6520円、地域外から入学した人の入学料が38万2806円でした。
※公立大学の地域内から入学した人の入学料は、平均22万4369円です。
2. 【4年間の学費】私立理系は567万2126円、国立の約2.3倍
入学料に、授業料と施設設備費の4年分を足して、4年間の学費を試算すると次のとおりです。
2.1 私立理系と国立の差は324万6926円
- 【国立】242万5200円
- 【公立】252万8886円
- 【私立文系】418万9087円
- 【私立理系】567万2126円
2.2 私立理系は私立文系より148万3039円多い
私立理系の4年間の学費は、私立文系より148万3039円多く、国立の約2.3倍です。理系は授業料そのものが高く、4年間で差が広がります。
※LIMO編集部による試算です。授業料と施設設備費は4年間同じ額がかかると仮定し、実験実習料などは含めていません。公立の入学料は地域外から入学した人の平均です。
3. 【自宅か下宿か】下宿生の生活費は私立で年129万8000円
学費とは別に、毎日の生活費もかかります。日本学生支援機構の調査で、大学学部(昼間部)の学生の生活費(年額)を見ると次のとおりです。
3.1 私立の自宅生は年50万4800円
- 【国立】自宅49万4700円、下宿119万7500円
- 【公立】自宅43万1000円、下宿116万9500円
- 【私立】自宅50万4800円、下宿129万8000円
3.2 私立の下宿生は住居・光熱費が年55万3800円
私立の下宿生は、住居・光熱費が年55万3800円、食費が年32万4700円です。一方、自宅生の食費は外食した時の費用だけで、家での食事代や住まいの費用は含まれていません。
※生活費は、食費、住居・光熱費、保健衛生費、娯楽・し好費、その他の日常費の合計です。「下宿」は、調査の「下宿、アパート、その他」の区分です。
4. 【4年間の総額】私立理系は自宅で769万1326円、下宿で1086万4126円
4年間の学費と生活費を合わせると、次のとおりです。
4.1 私立理系の下宿は1000万円を超える
- 【国立】自宅440万4000円、下宿721万5200円
- 【公立】自宅425万2886円、下宿720万6886円
- 【私立文系】自宅620万8287円、下宿938万1087円
- 【私立理系】自宅769万1326円、下宿1086万4126円
4.2 私立で下宿にすると4年間で317万2800円の上乗せ
私立の場合、下宿の生活費は4年間で自宅より317万2800円多くなります。私立理系で下宿をすると、4年間の総額は1000万円を超える計算です。
ただし、自宅の生活費には、家での食事代や住まいの費用が入っていません。下宿との差は、この前提で見る必要があります。
※LIMO編集部による試算です。学費は文部科学省、生活費は日本学生支援機構の別の調査の数字を足しています。学費は令和7年度の入学者、生活費は令和6年度の調査で、年度と対象が異なります。私立の生活費は文系・理系で分けていません。
大学4年間の学費と生活費の試算(自宅・下宿別)1/1
出所:文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」、日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査結果」、文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」をもとにLIMO編集部作成
今回見てきたように、公立か私立か、自宅か下宿かによっても学費や生活費は変わります。
また実際にかかる費用は進学する大学によって、そして地域によっても家賃や生活費は変わることでしょう。平均的な学費や生活費は今回ご紹介したように調べることができますから、早くから調べて何で、いくらずつ備えるか考えてみましょう。
5. 【元証券会社員の視点】試算に入らない費用と、積立で届く範囲
ここからは、試算に入っていない費用と、毎月の積立でどこまで準備できるかを確かめます。
5.1 受験料や下宿を始める費用は入っていない
試算には、受験料や、入学しなかった大学に払う入学金は入っていません。下宿を始めるときの敷金や家具などの費用も含めていないため、実際にはこれより多くかかることもあります。実験実習料などは学部や学科によって差があるため、志望校の案内で金額を見ておきたいところです。
5.2 月2万円の積立を18年続けると432万円
毎月2万円を18年間積み立てると、合計は432万円です。私立理系に自宅から通う場合の総額769万1326円には、337万1326円届きません。
積立だけで足りない分は、学費と生活費のどちらに充てるお金なのかを分けて考えると、目標額を決めやすくなります。
5.3 2人とも私立理系に自宅から通うと1538万2652円
子どもが2人いて、2人とも私立理系に自宅から通うと、4年間の総額は2人で1538万2652円です。2人とも下宿をすると、2172万8252円になります。
年の近いきょうだいでは、在学期間が重なり、同じ時期に2人分の学費を払うこともあります。その時期の家計を、早めに見通しておきたいところです。
6. まとめにかえて
まずは、子どもの進学先として考えている大学の学費を、大学のホームページで確かめてみましょう。理系でも、学部によって学費には幅があります。
そのうえで、自宅から通える範囲に大学があるかも、あわせて見ておきたいところです。今の貯蓄と毎月の積立でどこまで準備できるかを、家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
※本記事の金額は、平均をもとにした試算です。実際の費用は、大学や学部、住む地域によって変わります。
参考資料
宮野 茉莉子