総務省統計局が2026年9月20日に公表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、2025年の65〜69歳の就業率は54.5%で、過去最高になりました。
60歳を過ぎても働き続けることは、多くの人にとって身近な選択肢になっているといえるでしょう。年金が働く年数によってどう変わるのかは、これからの働き方を考えるうえでも押さえておきたい点です。
では、同じ年収でも、厚生年金に加入して働く年数が変わると、老後の年金はどのくらい変わるのでしょうか。次の年金支給日は12月15日です。
本記事では、年収600万円の会社員を例に、日本年金機構の計算式で、厚生年金の加入年数が30年・35年・40年・45年の場合の年金月額と、12月15日に届く2カ月分の目安を試算します。
記事の後半では、65歳以降も働いて厚生年金に加入すると年金額が毎年見直されるしくみや、働きながら年金を受け取るときのルールも見ていきましょう。
なお、公的年金の制度や平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
1. 【年収600万円で何年働く?】厚生年金30年なら月15万2823円、45年なら月19万3930円の試算
まずは、加入年数ごとの年金を試算してみましょう。
1.1 試算の前提:年収600万円で、厚生年金の加入年数を30年・35年・40年・45年に
日本年金機構の「老齢年金ガイド 令和8年度版」は、老齢厚生年金の報酬比例部分を、平成15年4月以降の加入期間について、平均標準報酬額×5.481/1000×加入期間の月数で計算するとしています。試算では、毎年同じ年収600万円で働き、平均標準報酬額を月50万円としました。老齢基礎年金は満額の年84万7300円とし、20歳から60歳までの40年間、保険料をすべて納めた場合を想定しています。45年は、60歳を過ぎてから5年加入した場合にあたります。
1.2 【加入年数別の早見表】30年は月15万2823円、40年は月18万228円、45年は月19万3930円
計算すると、年金の月額は、加入年数30年で15万2823円、35年で16万6525円、40年で18万228円、45年で19万3930円でした。
日本年金機構の「年金はいつ支払われますか。」によると、12月には10月・11月分の年金が支払われます。12月15日に届く2カ月分は、税金や介護保険料などが差し引かれる前の額面で、30万5646円、33万3051円、36万456円、38万7861円が目安です。
この前提では、厚生年金に1年長く加入するごとに、報酬比例部分は年3万2886円、月にして2740円ほど増える計算です。加入年数が30年の場合と40年の場合では、月の年金に2万7405円の違いが出ます。ただし、経過的加算や加給年金額、標準報酬月額の等級の刻みなどは考えていない目安で、実際の金額は人によって変わります。
1年あたりの増え方は小さく見えるかもしれませんが、年金は受け取り始めてから長く続くものです。働く年数が5年違えば、月の年金も1万円以上変わる試算になりました。何歳まで働くかを考えるときは、毎月の収入だけでなく、老後の年金がどう変わるかもあわせて見ておくと、判断の材料が増えるでしょう。
ここまでをまとめると、年収600万円で働いた場合の年金は、厚生年金の加入年数が30年なら月15万2823円、45年なら月19万3930円の試算です。12月15日に届く2カ月分は、額面で30万5646円から38万7861円が目安です。
2. 【65歳以上の就業者は943万人】65〜69歳の就業率は54.5%、70〜74歳は36.2%
実際に、60代後半以降も働いている人はどのくらいいるのでしょうか。統計で確かめておきましょう。
2.1 65歳以上の就業者は943万人、22年連続で増えて過去最多
総務省統計局の「統計からみた我が国の高齢者」によれば、2025年の65歳以上の就業者は943万人でした。2004年以降、22年続けて前年を上回り、過去最多になっています。役員を除く65歳以上の雇用者では、非正規の職員・従業員が76.1%を占めています。短い時間や決まった日数で働く人も多いと考えられ、年金と働いて得る収入を組み合わせて暮らす人も少なくないのでしょう。
2.2 年齢別の就業率=65〜69歳は54.5%、70〜74歳は36.2%、75歳以上は12.6%
同資料で2025年の年齢別の就業率を見ると、65〜69歳で54.5%、70〜74歳で36.2%、75歳以上で12.6%と、いずれも過去最高でした。65歳以上全体の就業率は26.0%です。65〜69歳では2人に1人を超える人が、70〜74歳でも3人に1人を超える人が仕事をしていることになります。年金を受け取りながら、体力や家庭の事情に合わせて働き方を選んでいる人も多いと考えられます。60代前半で働き方を決めるときには、60代後半以降も続けるかどうかまで見通しておくとよいでしょう。
3. 【65歳以降も働くと年金は増える?】在職定時改定で毎年10月に再計算、在職老齢年金の基準は月65万円
60歳を過ぎて働く場合は、年金のしくみも知っておきたいところです。まずは、年金の全体像から確かめておきましょう。
公的年金制度は、しばしば「2階建て構造」に例えられます。
これは、日本の年金制度が「1階」の国民年金(基礎年金)と、「2階」の厚生年金という2つの制度で構成されているためです。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
会社員として働き続けると、2階部分にあたる老齢厚生年金が、加入した期間に応じて積み上がっていくことになります。
3.1 在職定時改定=65歳以上70歳未満で働く人は、毎年10月に年金額を再計算
老齢年金ガイドによると、9月1日の基準日に厚生年金保険の被保険者である受給権者は、毎年、基準日の属する月の前までの加入期間を足して、10月に年金額が再計算されます。これを「在職定時改定」といい、対象は65歳以上70歳未満の人に限られます。65歳以降も働いて厚生年金に加入していれば、退職を待たずに、働いた分が毎年の年金額に加わっていくしくみです。同じ年収600万円で働き、1年分の加入期間が加わると、試算の前提では報酬比例部分が年3万2886円増える計算です。
3.2 在職老齢年金=基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円以下なら全額支給
一方で、働きながら年金を受け取ると、年金の一部または全額が支給停止になる場合があります。同ガイドでは、報酬比例部分の月額(基本月額)と、給与や賞与から計算する総報酬月額相当額の合計が65万円以下なら全額支給とされています。この基準額は、令和8年4月から、令和7年度の月51万円から65万円に引き上げられました。年収600万円で45年加入した人が65歳以降も同じ年収で働く場合、基本月額は約12万3000円、総報酬月額相当額は50万円で、合計は約62万3000円です。65万円以下なので全額支給になる試算で、令和7年度の基準額51万円で判定すると、月約5万7000円が支給停止となる計算でした。
基準額が上がったことで、年金を減らさずに働ける収入の幅は広がったといえるでしょう。ただし、老齢基礎年金は支給停止の対象にならない一方、給与が高い場合や賞与が多い場合は、合計が65万円を超えることもあります。自分の場合は、勤め先から受け取る給与の見込みとあわせて確かめておくと安心でしょう。在職老齢年金のしくみは、働きながら受け取る年金に直接かかわるため、制度の見直しの情報にも目を向けておきたいところです。
4. 【12月15日の支給日の前に】これまでの加入期間と、何歳まで働くかを確かめる
試算やしくみを、自分の働き方に当てはめていきましょう。
4.1 ねんきん定期便やねんきんネットで、厚生年金の加入期間と見込額を確かめる
まずは、これまでの厚生年金の加入期間を確かめましょう。加入期間が思っていたより短い場合は、その理由も記録で確かめておきたいところです。日本年金機構の案内によると、ねんきん定期便は毎年の誕生月に届き、50歳以上の人には年金加入期間や老齢年金の種類と見込額が載っています。ねんきんネット(利用には登録が必要)では、条件を自分で設定して将来の見込額を試算できるので、何歳まで働くかを変えた場合も比べておくとよいでしょう。
4.2 勤め先の継続雇用のしくみを確かめ、これからの働き方と家計を考える
次に、今の勤め先で60歳以降も働けるのか、そのときの給与や働き方がどうなるのかを、勤め先の担当部署に確かめておきましょう。60歳以降は給与が変わることも多いため、試算の前提とは違ってくる点に注意しておきたいところです。そのうえで、働く年数ごとの年金の見込額と、毎月の支出を並べてみると、何歳まで働くか、どのくらいの収入を目安にするかを考えやすくなるでしょう。65歳以降も働く場合は、毎年10月に年金額が見直されることも頭に入れておくと、家計の見通しが立てやすくなるでしょう。家計の見通しと、これからのキャリアの計画を一緒に立てておくことが大切です。
5. まとめにかえて
まずは、ねんきん定期便やねんきんネットで、これまでの厚生年金の加入期間と見込額を確かめておきましょう。次に、勤め先で60歳以降も働けるかと、そのときの給与の見込みを確かめます。そして、働く年数ごとの年金と毎月の支出を並べ、何歳まで、どのように働くかを考えておきましょう。
年収600万円で働いた場合、厚生年金の加入年数が30年と45年では、月の年金に4万円ほどの違いが出る試算でした。65〜69歳の2人に1人を超える人が働いている今、何歳まで働くかは、老後の家計を考えるうえで大切な選択の一つといえるでしょう。
もちろん、働き方は体力や家族の事情によっても変わり、長く働くことだけが答えではありません。それでも、働く年数が年金にどう表れるのかを知っておくと、自分に合った働き方を選ぶ手がかりになります。年末の支給日をきっかけに、これからの働き方と年金を一度見直してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
- 総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」
- 日本年金機構「年金はいつ支払われますか。」
- 日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」
- 日本年金機構「「ねんきんネット」による年金支払いに関する通知書の確認」
宮野 茉莉子
