『クレヨンしんちゃん』の野原ひろしは会社員、妻のみさえは専業主婦です。会社員と専業主婦の夫婦なら、「夫婦2人で年金はいくらもらえるのだろう」と気になったことがある方もいるでしょう。
2026年10月には、パートなどで働く人が厚生年金に入るときの要件のうち、「月額8.8万円以上」という賃金の要件がなくなりました。妻の働き方によって、夫婦の年金がどう変わるのか—そう考えるきっかけにもなりそうです。保険料の負担が増えることに目が向きがちですが、将来の年金の上乗せもあわせて見ておきたいところです。
ここでは、厚生労働省が示した令和8年度の年金額をもとに、みさえが専業主婦の場合、パートで厚生年金に入る場合、会社員として働き続けた場合に分けて、夫婦の年金を試算します。
※年金額は、厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(2026年1月23日)の「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」の令和8年度の月額です。
1. 【2026年度の年金額】国民年金は満額で月7万608円(昭和31年4月2日以後生まれの場合)、夫婦2人分の標準的な年金額は月23万7279円
厚生労働省によると、令和8年度の年金額は、国民年金(基礎年金)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%引き上げられました。
1.1 国民年金の満額は月7万608円
昭和31年4月2日以後生まれの人が受け取る国民年金(老齢基礎年金)は、満額の1人分で月7万608円です(昭和31年4月1日以前生まれは月7万408円)。令和7年度より1300円増えました。
1.2 夫婦2人分の標準的な年金額は月23万7279円
平均標準報酬(賞与を含む月額換算)45.5万円で40年間勤めた夫の老齢厚生年金に、夫婦2人分の満額の老齢基礎年金を加えた標準的な年金額は、月23万7279円です。前年度より4495円増えました。
2. 【ひろしとみさえ夫婦】会社員の夫と専業主婦の妻なら、夫婦で月25万5042円
同資料には、令和6年の財政検証の推計を基にして、令和6年度に65歳になる人の加入期間と収入から見積もった、働き方の型別の年金額(概算)も載っています。ひろしとみさえに近い型を見ていきましょう。
なお、野原ひろしの給与は1994年に放送された「ひさんな給料日だゾ」という回で手取りで約30万円と紹介されており、額面では約38万円ほどと考えられます。仮にボーナスを給与の2カ月分とした場合、ひろしの年収は約600万円と試算できます。
2.1 ひろしに近いのは「厚生年金期間中心の男性」の月17万6793円
- 【厚生年金期間中心(20年以上)の男性】月17万6793円(平均厚生年金期間39.8年、平均収入50.9万円)
- 【国民年金(第3号被保険者期間)中心(20年以上)の女性】月7万8249円(平均厚生年金期間6.7年)
2.2 2人を合わせると月25万5042円
会社員の夫と、専業主婦の期間が長い妻の組み合わせで足し合わせると、夫婦で月25万5042円になります。夫婦2人分の標準的な年金額である月23万7279円を上回る水準です。
3. 【みさえの働き方】パートや会社員で厚生年金に入ると、夫婦の年金は増える
では、みさえが働き方を変えた場合はどうなるのでしょうか。同資料と厚生年金の計算式を使って比べました。
3.1 会社員として働き続けた場合は夫婦で月31万1433円
- 【専業主婦(第3号被保険者期間中心)】みさえ月7万8249円、夫婦で月25万5042円
- 【会社員(厚生年金期間中心の女性)】みさえ月13万4640円、夫婦で月31万1433円
- 【差】月5万6391円(年67万6692円)
3.2 パートで10年間、厚生年金に入ると月5481円の上乗せが目安
日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」によると、報酬比例部分は、平均標準報酬額に5.481/1000と加入月数を掛けて計算します。仮に、パートで平均標準報酬額10万円のまま10年間厚生年金に入ると、報酬比例部分は年6万5772円、月5481円が目安です。専業主婦の型の月7万8249円に上乗せすると、みさえは月約8万3730円、夫婦で月約26万523円になります。
※試算の前提:年金額は厚生労働省の「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」の令和8年度の月額で、各型の平均です。パートの上乗せは、平成15年4月以降の加入期間の計算式で、再評価などは考えない目安です。
パートで厚生年金に入る期間は短くても、そのぶん将来の年金に上乗せされます。働く期間が長いほど、夫婦の年金の差は広がっていきます。
このようにみさえが専業主婦か、パートか、会社員かで老後の年金額は変わります。現役時代の働き方は老後の年金に影響することを考え、現役時代のうちから試算しておくとよいでしょう。
なお、野原家には5歳のしんのすけと1歳のひまわりという子どもがおり、子どもが小さな間は働き方をセーブする方もいるでしょう。10月には年収106万円の壁が撤廃されましたが、少し長い目でみて今後の働き方をかんがえてみるとよいでしょう。
4. 年の差夫婦の加給年金と、働き方の選び方とは?
ここからは、夫婦の年齢差によってつく加給年金と、パートで厚生年金に入る要件を確かめます。
年金については次のような制度も把握しておくとよいでしょう。
4.1 妻が65歳になるまでの加給年金は年42万3700円
日本年金機構「加給年金額と振替加算」によると、厚生年金の加入期間が20年以上ある人が65歳になったとき、生計を維持している65歳未満の配偶者がいると、加給年金がつきます。令和8年4月からの配偶者の加給年金額は24万3800円で、受給する人が昭和18年4月2日以後生まれなら、特別加算を合わせて年42万3700円です。
加給年金は、配偶者が65歳になると打ち切られます。仮に夫婦の年齢差が6歳なら、夫が65歳になってから妻が65歳になるまでの最長6年間で、合計254万2200円の目安です(令和8年度の金額のままとした場合)。配偶者が厚生年金の加入期間20年以上の老齢厚生年金などを受け取る権利があるときは、支給が止まります。加給年金を受け取るには、届出が必要です。
4.2 パートの厚生年金は「週20時間以上」などが要件
厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトによると、パートなどが厚生年金に入る要件は、勤め先の従業員数が51人以上(2027年10月以降は36人以上)、週の所定労働時間が20時間以上、2か月を超えて雇用される見込みがある、学生ではない、の4つです。
同サイトの「適用拡大 Q&A」によると、賃金の要件(所定内賃金の月額が8.8万円以上)は、令和7年年金制度改正により、2026年10月に撤廃されました。勤め先の従業員数の要件は、その後も段階的に広がる予定です。
5. まとめにかえて
まずは「ねんきん定期便」で、夫婦それぞれの年金の見込額と、厚生年金に入っている期間を確かめてみましょう。夫婦の年齢差がある場合は、加給年金がつくかどうかも、あわせて見ておきたいところです。
パートで働く方は、勤め先の従業員数や週の労働時間によって、厚生年金に入るかどうかが変わります。将来の年金と、いま払う保険料の両方を見ながら、夫婦で働き方を話し合ってみてはいかがでしょうか。
※本記事の年金額は、厚生労働省が示した経歴の型ごとの平均的な概算と、一定の前提にもとづく目安です。実際の年金額は、加入期間や収入によって変わります。ご自身の見込額は、ねんきん定期便や「ねんきんネット」でご確認ください。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」
- 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト「社会保険加入の要件」
- 厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト「適用拡大 Q&A」
宮野 茉莉子