IMF(国際通貨基金)は2026年10月13日に、世界の金融市場が直面するリスクの一つにAIを挙げました。AIへの投資や収益性が期待を下回れば、楽観的な見通しが揺らぎ、AI産業に関連する資産価格の調整を引き起こしうると指摘しています。
trigger a correction in asset prices linked to the AI industry(AI産業に関連する資産価格の調整を引き起こす:編集部訳)
出所:IMF「Global Financial Markets Face Rising Risks From AI, Bond Yields, and Cyberattacks」
新NISAのつみたて投資枠でS&P500やオルカンを積み立てている人にとって、「このまま続けていいのか」は切実な問いでしょう。一次資料もあわせて確認しながら解説します。
結論としては、やめるかどうかより先に「何に投資しているか」を確かめる
S&P500やオルカンが、信託報酬などにおいて、低いコストで多くの企業に投資できる商品であることに変わりはありません。ただ、「AIバブルが心配だから、より分散が効いたオルカンにしておけば安心」と考えているなら、少し立ち止まって考える必要があります。
注意したい点は2つあります。
一つは、オルカンも中身の6割超が米国株で、上位の銘柄はS&P500とほぼ同じであること。
もう一つは、相場が崩れたときに積立を続けられるかどうかが、商品選び以上に結果を左右することです。
なぜ「S&P500かオルカンを積み立てていればいい」と言われるのか
「とりあえずS&P500かオルカン」。新NISAが始まってから、皆さんも何度も耳にしてきたのではないでしょうか。
理由は分かりやすく、実績が良かったからです。S&P Dow Jones Indicesのファクトシートによると、S&P500の過去10年の年率リターン(USDベース、2026年9月30日時点)は13.44%でした。手数料の低いインデックスファンドでこれだけのリターンが得られたのですから、人気が集まるのは自然なことでしょう。
しかし、この好成績を引っ張ってきたのは、ご存じの方も多いかと思いますが、AIブームの主役となった一握りの巨大テック企業です。では、2つのファンドの中身はどうなっているのでしょうか。
一次資料で見るオルカン、その6割超は実際は米国株
まずはオルカンから見ていきましょう。
MSCI「MSCI ACWI Index」の月次レポート(2026年9月30日時点)によると、構成は次のとおりです。
- 米国の比率:64.2%
- 情報技術の比率:33.21%
- 上位10銘柄の合計:25.4%
上位10銘柄は、エヌビディア(5.0%)、アップル(4.6%)、マイクロソフト(3.4%)と続き、台湾のTSMCを除けばすべて米国企業です。
次にS&P500です。開示資料によると、上位10銘柄で指数の39.1%を占め、最大のエヌビディアだけで8.4%に達します。
比べてみると、S&P500の上位10銘柄のうち9銘柄(8社)が、オルカンの上位10銘柄にも入っています。エヌビディア、アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベット(2種類の株式)、メタ、ブロードコムです。つまりオルカンも「全世界」という名前でも、運用成績を大きく動かしているのは同じ顔ぶれということになります。
運用のプロから見る2つの落とし穴
ここからは運用のプロから見た視点で話を展開していきましょう。
一つ目の落とし穴は、「両方持てば分散になる」という思い込みです。S&P500とオルカンを半分ずつ積み立てても、上位の顔ぶれはほとんど変わりません。仮に上位10銘柄の株価がそろって3割下がり、ほかの銘柄が動かなかったとすると、ざっくりいえば、S&P500は約12%、オルカンは約8%押し下げられる計算です。オルカンのほうが影響は小さいものの、AI関連株の値動きから逃れられるわけではありません。
※上位10銘柄の比率(S&P500は39.1%、オルカンは25.4%)に下落率30%を掛けた単純計算。
二つ目の落とし穴は、相場が崩れたときの行動です。ITバブルが崩壊した際、S&P500は2000年3月の高値から2002年10月の安値まで約5割下落し、高値を取り戻したのは2007年でした。
これまで相場をけん引してきた敵のロジー企業は、技術そのものが本物でも、株価が期待を先取りしすぎれば調整は起きる、というのが歴史の教えだと考えています。
ただし、積立投資は値下がりした局面ほど、同じ金額で多くの口数を買える仕組みです。怖いのは下落そのものより、下落の途中で積立をやめてしまうことかもしれません。
あなたはどうする?目的別に考える積立の中身
ここからは資金計画(ファイナンシャルプラニング)の話に移っていきます。
さて、たとえば、資金の取り崩しまで10年以上ある人なら、下落も口数を増やす機会と受け止め、積立を続けるという考え方があるでしょう。一方で、退職が目の前に迫っており、数年以内に使う予定のお金であれば、株式(株式型投資信託を含む)だけで運用すること自体を見直す余地があります。
米国やAI関連への偏りが気になる人は、つみたて投資枠で選べる国内株式のインデックスファンドや、債券を含むバランス型を組み合わせる方法もあります。
また、最近では金利も復活してきているので債券という選択肢もあります。
大切なのは、名前ではなく中身で試算の分散を考えることです。
まとめ――積立の中身を確かめるときのチェックポイント
オルカンは全世界株式でも米国が6割りを占め、上位10銘柄のうち9銘柄がS&P500と重なります。上位10銘柄が3割下がれば、S&P500は約12%、オルカンは約8%押し下げられる計算です。AIバブル論が出ている今こそ、商品を乗り換える前に、自分の積立の中身とお金を使う時期を確かめてみてください。
- 持っているファンドの国別・業種別の比率と上位10銘柄(月次レポートで確認できる)
- 複数のファンドを持っている場合、中身が重なっていないか
- そのお金を使うのはいつか、下落しても積立を続けられるか
名前ではなく中身で見る。それが、バブル論に振り回されないための一番の備えになるはずです。
参考資料
- IMF「Global Financial Markets Face Rising Risks From AI, Bond Yields, and Cyberattacks」(2026年10月13日)(https://www.imf.org/en/blogs/articles/2026/10/12/global-financial-markets-face-rising-risks-from-ai-bond-yields-and-cyberattacks)
- S&P Dow Jones Indices「S&P 500」(https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/equity/sp-500/)
- MSCI「MSCI ACWI Index」(https://www.msci.com/indexes/index/892400/msci-acwi-index)
LIMO編集部