厚生労働省の「令和8年度地域別最低賃金全国一覧」によると、2026年度の最低賃金(答申された改定額)の全国加重平均は1,177円で、前年度の1,121円から56円上がり、10月1日から12月2日にかけて、都道府県ごとに順次切り替わっています。働く場所によって時給の下限が違うように、暮らしのお金の事情も地域ごとにさまざまです。
地域によって給料の水準が違うように、世帯の収入や貯蓄も住んでいる地域によって違いがあります。「わが県の世帯年収は、全国の平均と比べて多いのか、少ないのか」と気になったことのある方もいるでしょう。年末に向けて家計を振り返る時期にもなります。
本記事では、総務省統計局の「令和6年全国家計構造調査」から、都道府県別の年間収入と金融資産残高、金融資産に占める有価証券の割合を一覧で見ていきます。数字を見るときに気をつけたい点や、わが家と比べるときの考え方もお伝えします。
1. 【都道府県別の世帯年収はいくら?】全国平均は593.7万円、東京都681.8万円、沖縄県458.1万円
令和6年全国家計構造調査の結果の概要によると、総世帯(二人以上の世帯と単身世帯を合わせたもの)の年間収入は、全国平均で593.7万円です。都道府県ごとに見ると、いちばん多いのは東京都の681.8万円です。神奈川県の649.5万円、愛知県の649.1万円、富山県の642.2万円、滋賀県の633.5万円がこれに続きます。
一方、最も少ないのは沖縄県の458.1万円で、次いで青森県が484.1万円、宮崎県が494.1万円、愛媛県が495.4万円、北海道が498.3万円です。
1.1 全国平均以上の都道府県は
全国平均の593.7万円以上だったのは、1位の東京都から17位の鳥取県までの17都県でした。
ここでの年間収入は、二人以上の世帯と単身世帯を合わせた総世帯の平均です。都道府県によって、ひとり暮らしの世帯や高齢の世帯の割合、共働きの世帯の多さなどは違うため、年間収入の平均にはそうした世帯の形の違いも表れていると考えられます。
都道府県別の年間収入(総世帯)1/2
出所:総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 所得に関する結果、家計資産・負債に関する結果及び年間収入・資産分布等に関する結果 結果の概要」をもとにLIMO編集部作成
全国平均を上回ったのは47都道府県のうち17都県で、平均より少ない道府県のほうが多くなっています。全国平均は、都市部の数字の影響を受けやすいと考えられます。わが県の位置を見るときは、順位だけでなく、全国平均とどれくらい離れているかもあわせて見ておくとつかみやすくなるでしょう。
また、同じ調査の年間収入には、働いて得る収入だけでなく、年金などの収入も含まれています。高齢の世帯が多い地域では、年金が収入の中心になっている世帯も多いと考えられるため、働く世代の給料の水準とは少し違った姿になることもあります。地域の数字を見るときは、こうした世帯の顔ぶれの違いも頭に置いておきたいところです。
2. 【平均貯蓄額】金融資産残高は奈良県1994.2万円が最多、全国平均は1527.2万円
同じ調査で、預貯金や生命保険、有価証券などを合わせた金融資産残高(総世帯)をみると、全国平均は1527.2万円です。都道府県ごとでは、いちばん多いのが奈良県の1994.2万円で、東京都の1865.2万円、愛知県の1833.9万円、神奈川県の1829.8万円、富山県の1776.0万円と続きます。
最も少ないのは沖縄県の621.7万円で、次いで青森県が829.6万円、秋田県が930.6万円、宮崎県が973.9万円、北海道が978.3万円です。全国平均以上だったのは14都府県でした。なお、この金融資産残高は、金融資産を持っていない世帯も含めた平均です。
都道府県別の金融資産残高(総世帯)2/2
出所:総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 所得に関する結果、家計資産・負債に関する結果及び年間収入・資産分布等に関する結果 結果の概要」をもとにLIMO編集部作成
2.1 平均年収と平均貯蓄額を比べると…
年間収入と並べてみると、順位が大きく違う県もあります。奈良県は年間収入では20位の590.2万円ですが、金融資産残高では1位です。徳島県も、年間収入は33位の538.2万円ですが、金融資産残高は9位の1649.2万円でした。年間収入が多い県ほど貯蓄も多い、とは一概にいえないことがわかります。
貯蓄は、毎年の収入だけでなく、これまでの暮らし方や支出の大きさ、住まいにかかる費用、世帯主の年齢などによっても変わると考えられます。収入がそれほど多くなくても、長い年月をかけてこつこつ積み上げてきた世帯が多い地域では、平均の貯蓄が大きくなることもあるでしょう。わが家の家計を考えるときも、収入と貯蓄を分けて見ておくことが大切です。
3. 貯蓄のうち、有価証券の割合は?東京都31.4%が最も高く、山形県10.4%が最も低い
金融資産の中身にも違いがあります。貯蓄のうち有価証券がどれくらいを占めるかを都道府県ごとに見ると、いちばん高いのは東京都の31.4%です。兵庫県、神奈川県、奈良県、千葉県などがこれに続きます。
反対に、いちばん低いのは山形県の10.4%で、低いほうからは青森県、佐賀県、秋田県、新潟県などが続きます。同じように貯蓄があっても、預貯金を中心にしている地域と、有価証券も多く持っている地域があるということです。
全国でみると、総世帯の金融資産残高のうち、預貯金が60.2%と最も多く、有価証券は22.8%です。有価証券は値動きがあるため、金融資産残高の金額は、調べた時点の株価などの影響も受けます。有価証券の割合が高い地域の金融資産残高は、その分、相場の動きで増えたり減ったりしやすい面があることも知っておきたいところです。
どの地域でも、預貯金と有価証券のどちらが向いているかは、世帯ごとに違います。金融庁の「基礎から学べる金融ガイド」は、投資する資金は生活資金とは別の余裕資金で行うよう呼びかけています。お金を使う時期や目的を考えて置き場所を分けておくことが、地域を問わず大切だと考えられます。
こうしてみると、世帯の年収や貯蓄は、地域によって水準も中身も違っていると考えられます。どの数字も平均なので、わが家と比べるときは、順位の上下よりも、自分の地域の平均や全国の平均を一つの目安として使うのがよいでしょう。
ここまでをまとめると、令和6年全国家計構造調査では、総世帯の年間収入は全国平均で593.7万円で、東京都の681.8万円がいちばん多く、沖縄県の458.1万円がいちばん少なくなっていました。金融資産残高は全国平均で1527.2万円で、奈良県の1994.2万円がいちばん多く、有価証券の割合は東京都の31.4%がいちばん高くなっています。
4. 【わが家と比べるときは】世帯の形をそろえ、収入と貯蓄の両方を見る
都道府県別の数字をわが家の家計に生かすには、次の3つの順で考えていくと整理しやすくなります。
4.1 わが家の年間収入と金融資産を書き出す
まず、わが家の年間収入と金融資産を書き出してみましょう。年間収入は、家族それぞれの源泉徴収票などで確かめられます。年金を受け取っている家族がいれば、年金の源泉徴収票もあわせて見ておくとよいでしょう。金融資産は、預貯金の通帳や証券口座の残高を合計すると、おおよその金額がわかります。家族の分もあわせて書き出しておくと、世帯全体の姿が見えやすくなります。
単身世帯も含めた総世帯の平均です。同じ調査では、夫婦と子どもがいる世帯や高齢の夫婦の世帯など、世帯の形ごとの数字も公表されています。わが家に近いかたちで調べてみると、比べたときのずれを小さくしやすくなります。年代や働き方が近い世帯の数字を選ぶことも、物差しを合わせるための大切な手がかりになります。
そして、これからの収入の動きも考えてみましょう。最低賃金は、2026年度は都道府県ごとに10月1日から12月2日にかけて順次引き上げられています。パートなどで働く家族がいる世帯は、時給が変わることで来年の世帯年収が変わることもあるため、今後の家計の計画にあわせて見直しておきたいところです。収入の見通しと一緒に、毎月の支出や貯え方も見直しておくと、来年に向けた家計の計画を立てる手がかりになります。地域の平均は、そのときの目安の一つとして使えます。
地域の平均は、わが家の家計を見直すときの物差しの一つです。収入と貯蓄の両方から、これからの暮らしの計画を考えるきっかけにしてみてくださいね。
5. まとめにかえて
今回の調査からは、年収と貯蓄の順位が必ずしも一致しないことや、貯え方の中身にも地域の色が出ることが見えてきました。
わが家の収入と支出、貯蓄の流れをつかんでおくことが大切です。年末に向けて1年の家計を振り返るときに、地域の平均も一つの目安として使ってみてはいかがでしょうか。収入の多さよりも、毎月の暮らしに無理がないか、いざというときの備えがあるかどうかが、家計を考えるうえで大切なポイントになります。今回の一覧を、家族でお金の話をするきっかけにしてみるのもよいでしょう。地域の特徴を知ることは、これからの暮らし方を考えるヒントにもなります。
参考資料
- 総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 所得に関する結果、家計資産・負債に関する結果及び年間収入・資産分布等に関する結果 結果の概要」
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
- 金融庁「基礎から学べる金融ガイド」
宮野 茉莉子
