「墓じまいで遺骨は全部移さなければならないのか」「一部を手元に残してもよいのか」と迷う方もいるのではないでしょうか。厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、令和6年度に墓じまいなどに伴って行われた改葬は17万6140件で、平成26年度の8万3574件から10年間で約2.1倍に増えました。
遺骨の一部を分ける分骨についても、2026年10月13日に株式会社フーフーが公表した「分骨に関する実態調査」で、経験者100人のうち95人が「満足」「おおむね満足」と答えています。一方で後悔は5人で、自由回答には将来の墓じまいや手続きの負担を挙げる声も見られました。本記事では、墓じまいとの違いを含め、分骨証明書を中心とした公的な決まりと手続きを整理します。
1. 墓じまいと分骨は何が違う?そもそも分骨とは
墓じまい(改葬)と分骨の違い1/5
出所:各種資料をもとにLIMO編集部作成
分骨とは、遺骨の一部を分けて別の場所で供養することです。千葉市の案内では、焼骨の一部を別のお墓に埋蔵したり手元で供養したりするために分けることが分骨とされています。
これに対して改葬は、お骨を分けずに別のお墓へ移す手続きです。墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)では、埋蔵や収蔵をした焼骨を他の墳墓や納骨堂へ移すことが改葬に当たり、市町村長の許可を得なければならないとされています。墓地の使用者が墓を返す、いわゆる墓じまいに伴って遺骨を他の墳墓や納骨堂へ移す場合も、総務省の資料でも改葬許可が必要との位置づけです。ただ、冒頭の17万6140件は墓じまいに限らない改葬の総数で、分骨の件数を示す公的統計は、確認できた範囲では見当たりませんでした。
一方、箕面市は、分骨は改葬とは異なり市役所での許可申請などは不要との案内です。広島市も、本骨を移さないかぎり改葬の手続きは必要ないと説明しています。現在の遺骨がある墓地や納骨堂の管理者から分骨証明書の発行を受け、分骨先の管理者に提出する手順です。
自治体の案内を見るかぎり、分骨は市区町村の許可ではなく、管理者が出す証明書で進めるのが基本とされています。ただし、書類の呼び名や窓口は自治体によって異なる可能性があり、全国一律の扱いとは限りません。
2. 分骨を選んだ理由は?満足度はどれくらい?
2026年10月13日に株式会社フーフーが公表した「分骨に関する実態調査」は、分骨を経験した男女100人へのインターネットアンケートで、2026年7月7日に実施されました。
実施主体は墓じまい代行業者ですが、調査対象は同サービスの利用者に限られないと注記されています。リリースには回答者の年齢や性別、分骨先の種類などの属性が記載されておらず、n=100の結果を分骨した人全体の傾向とまでは言えません。
2.1 分骨を選んだ理由は?「家族それぞれ」と「手元供養」で77%
理由のトップは「家族それぞれで供養するため」の43人(43%)でした。内訳は次のとおりです。
- 家族それぞれで供養するため:43人(43%)
- 手元供養をしたかった:34人(34%)
- 散骨と手元供養を両立したかった:13人(13%)
- 供養方法を自由に選びたかった:6人(6%)
- その他(故人の遺志、昔からの慣習など):4人(4%)
たとえば上位2つの「家族それぞれで供養するため」43人と「手元供養をしたかった」34人を合わせると、100人中77人にあたります。故人の遺志や慣習といった「その他」は4人にとどまりました。
2.2 満足度は?
分骨を選んでよかったかを尋ねると、「満足している」が50人、「おおむね満足している」が45人で、合わせて95人(95%)が肯定的でした。
「少し後悔している」は3人、「後悔している」は2人で、何らかの後悔を感じている人は計5人(5%)です。
- 満足している:50人(50%)
- おおむね満足している:45人(45%)
- 少し後悔している:3人(3%)
- 後悔している:2人(2%)
自由回答では、故人を身近に感じられること、遠方のお墓へ行かなくても供養できること、家族や親族がそれぞれ供養できることが、満足の理由に挙がりました。
3. 分骨で後悔するのはどんなとき?
後悔を挙げた人の自由回答は、リリースでは一部の抜粋で紹介されており、5人全員の理由とは限りません。そのうえで、後悔の声は大きく2つに分けられます。
- 遺骨を分けてよかったのか不安になる(宗教観や従来の価値観とのずれから、「成仏できないのでは」と感じる声など)
- 将来の墓じまいや手続きが大変になる
後悔と答えたのは100人中5人で、「後悔する人が多い」とまではいえません。ただ、遺骨を分けること自体への抵抗感や、分けたあとの手続きの負担が、後悔につながる場面はあるようです。
親族との話し合いも、事前に済ませておくとよいとする声が自由回答で紹介されています。
4. 分骨の手続きはどう進む?一般的な流れをタイミング別に整理
分骨の手続きは、遺骨がいまどこにあるかで入口が変わる点がポイントです。以下は一般的な流れで、書類の名称・窓口・手数料は、自治体や墓地・納骨堂・火葬場の管理者によって異なります。実際に動く前に、必ず管理者や市区町村の窓口へ確認してください。
4.1 一般的な流れは3ステップ
- 遺骨のある場所の管理者(火葬場・墓地・納骨堂)に、分骨証明書、または分骨であることを明記した埋蔵証明書・収蔵証明書を請求する
- 証明書を受け取る(書類の名称・手数料・必要書類は、自治体や管理者で異なる)
- 分骨先の管理者に証明書を提出し、納める(分骨先の受け入れ条件は、先に管理者へ確認する)
根拠となるのは墓埋法施行規則第5条です。墓地などの管理者は、他の墓地などへ分骨を納めようとする人から請求があれば、遺骨を埋蔵・収蔵している事実を証する書類を交付しなければなりません。火葬場の管理者にも、同様の規定が準用されます。
4.2 タイミング別の手続き
火葬の際に分骨する
- 請求先:火葬場の窓口(事前に申し出る)
- 書類:分骨証明書
- 例:千葉市は分骨ごとに300円。広島市は分骨用の骨壺や骨袋の準備も案内
- リリースの自由回答にも、事前に申請しておかないと後の納骨が面倒になるという趣旨の声あり
納骨済みの遺骨を分骨する
- 請求先:現在の墓地・納骨堂の管理者
- 書類:分骨証明書(または分骨であることを明記した埋蔵証明書・収蔵証明書)
- 市営の例:千葉市は埋蔵・埋葬証明書(1件300円)、船橋市は分骨証明書(1体300円。遺骨の受け入れ先の証明書も必要)、静岡市(市営納骨堂)は分骨証明(遺骨1体につき300円)
- 民営の霊園・墓地:千葉市は現在の管理者への確認を案内
火葬後に分骨する
- 書類:火葬の事実を証する書類(箕面市では「火葬証明証」)
- 広島市は、火葬証明書の交付に時間を要するとしている
4.3 分骨先で必要なものは?
分骨先の管理者には、受け取った証明書を提出します。神戸市立の墓園の例では、分骨を納骨する場合に分骨証明書が必要です。納骨の届出ができるのは墓地の使用者(名義人)に限られ、手数料は不要とされています。
4.4 手数料の例は?
自治体別 分骨証明書などの手数料例4/5
出所:各種資料をもとにLIMO編集部作成
静岡市と船橋市は遺骨1体につき300円、千葉市は分骨ごと、または1件ごとに300円です。金額が同じでも、「1体」「分骨ごと」「1件」と数え方が異なります。いずれも公表されている一例にとどまり、実際の金額は管理者に確認してください。
たとえば船橋市の例で、分骨証明書が1体につき300円なら、2体分で600円です。ただし、分骨1回で何体分が必要かは自治体などで異なる可能性があり、あくまで船橋市の手数料を当てはめた計算例にすぎません。
「墓じまいと分骨は同じ手続き」「自宅に遺骨を置くのは違法」。分骨にまつわる話として、こうした言い方を耳にすることがあります。どちらも、確認できた範囲では単純にそうとは言えません。
墓じまいで遺骨を別の墓や納骨堂へ移す場合は改葬許可が必要です。一方、箕面市や広島市の案内では、遺骨の一部を分けるだけの分骨に市役所での許可申請は不要とされ、管理者が出す分骨証明書で進めます。ただし、墓じまいの途中で一部を手元に残したい場合の扱いは、自治体で異なることもあるようです。先に管理者や役所へ確認しておくと安心でしょう。
後者の話は、墓地以外の区域での焼骨の埋蔵を禁じる墓埋法の規定が背景にあると考えられます。手元に置いて供養すること自体は、確認できた範囲では禁じられていません。しかし、自宅の庭などに遺骨を埋める埋蔵は法律で禁じられています。手元供養と埋蔵の線引きを誤らないよう注意が必要です。自治体の運用が異なる可能性もあるため、不安なときは遺骨のある地域の役所や管理者に確認してください。
