財務省は2026年10月7日、11月16日に発行する個人向け国債の発行条件を発表しました。初回の適用利率(年率・税引前)は次のとおりです。

個人向け国債(2026年11月16日発行分)

  • 変動10年(第199回):年2.05%
  • 固定5年(第187回):年2.39%
  • 固定3年(第197回):年2.07%
  • 募集期間:2026年10月8日~10月30日

3つのタイプすべてが年2%を超えています。一方、ゆうちょ銀行は11月9日から通常貯金の金利を年0.400%から0.500%に引き上げると公表しています。

預貯金の金利も上がり始めたとはいえ、個人向け国債との差はまだ大きいのが現状です。「預金のままではもったいない」と感じ、株式か国債かで迷う人も増えているのではないでしょうか。

読者から寄せられた疑問に、日本生命で外国株式のファンドマネージャー、フィデリティ投信で証券アナリストを務めた、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)の泉田良輔が答えます。

読者の疑問

手元に預貯金が200万円あります。銀行やゆうちょに置いておいても増えないので、株式の投資をするか、最近だと金利も上がってきているとのことなので、個人向け国債に投資をするかで迷っています。どのような基準で判断するといいのでしょうか?

ご質問ありがとうございます。私の結論は次の3つです。

  1. 株式か国債かの前に、「そのお金をいつ使うか」を決めることが判断の出発点です
  2. 5年以内に使うお金は個人向け国債や預金、10年以上使わないお金は株式が候補になります
  3. 「どちらか一つ」ではなく、200万円を目的別に分けると、増やすことと守ることを両立しやすくなります

一つずつ見ていきましょう。

預貯金・個人向け国債・株式は「守り方」が違う

まず、3つの違いを整理しましょう。金利や利回りの数字だけを比べると判断を誤ります。大切なのは「元本がどう守られているか」と「必要なときにすぐ取り出せるか」です。

預貯金

  • 元本:減らない(預金保険の対象となる一般預金等は、金融機関が破綻しても一定額まで保護)
  • 金利:ゆうちょの通常貯金は11月9日から年0.500%
  • 引き出し:普通預金・通常貯金はいつでも可能
  • 主なリスク:物価上昇率が金利を上回ると、お金の実質的な価値が目減りする

預金保険の対象となる、決済用預金以外の一般預金等については、1金融機関ごとに合算(名寄せ)して、預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。

出所:預金保険機構「保護の範囲」

個人向け国債

  • 元本:満期・中途換金とも額面どおり戻る(発行体は国)
  • 金利:11月発行分は固定5年で年2.39%。下限は年0.05%
  • 引き出し:発行後1年経過すれば中途換金できるが、直前2回分の利子相当額が差し引かれる
  • 主なリスク:最初の1年は原則として換金できない。固定金利型は、その後に金利が上がっても利率が変わらない

額面金額100円につき100円(中途換金時も同じ)発行後1年経過すれば、いつでも中途換金が可能
直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれます。

出所:財務省「個人向け国債 商品概要」

株式

  • 元本:保証されない(株価次第で増えも減りもする)
  • 金利:なし。配当と値上がり益が収益源で、どちらも事前には決まらない
  • 引き出し:取引時間中なら売却できるが、売るときの株価が下がっていれば損失が確定する
  • 主なリスク:短期間で大きく値下がりすることがある

皆さんは、個人向け国債を「いつでも解約できる定期預金」のようなものだと思っていないでしょうか。元本が守られる点は似ていますが、最初の1年は原則として換金できない。ここは大きな違いです。

一方、株式はいつでも売れますが、「売りたいときに値下がりしている」ことが起こり得ます。たとえるなら、預金は「財布」、個人向け国債は「しばらく開けられない金庫」、株式は「実りまで時間のかかる畑」といえるかもしれません。どれが優れているかではなく、「お金を使うとき」に合うかどうかで選ぶもの、ということになります。

判断の基準は「いつ使うか」と「いくら減っても耐えられるか」

では、何を基準に選べばよいのでしょうか。私がまず確かめたいのは、「そのお金、いつ使う予定ですか?」という一点です。なぜならば、株式の値動きは持つ期間によって意味が大きく変わるからです。

金融庁は、国内外の株式と債券に毎月積み立てて投資した場合の結果を、保有期間別に次のように示しています。いわゆる四資産を均等(バランス型ファンド)に積立投資をするという前提に立っています。その試算です。

  • 100万円が5年後に 74万円~176万円
  • 100万円が20年後に 186万円~331万円

5年という比較的短い期間だと、投資を始めたタイミングによっては大きな収益が得られることもあれば、元本割れになることもあります。

ところが20年という長い期間では、どの時点から始めても、収益は安定し、少なくとも、1989年以降のデータでは元本割れとなったケースはありませんでした。

出所:金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」(2023年7月)

このデータから読み取れるのは、5年程度で使うお金を株式に回すと、2割以上減った状態で使わざるを得ないことがある、ということです。反対に、使うまでの時間が長ければ、値下がりした局面をやり過ごす余裕が生まれます。

なお、このデータは株式と債券に分散して積み立てた場合のもので、個別株にまとめて投資した場合は、値動きの幅がこれより大きくなり得る点にも注意が必要です。日本株式の一標準偏差が20%近くにはなります。

そこで、お金を使う時期ごとに置き場所を決めていくのがおすすめです。

いつ使うかわからないお金・1年以内に使うお金

  • 置き場所:預貯金
  • 理由:病気や失職などで急に必要になっても、すぐに減らずに引き出せる
  • 目安:生活費の数か月分(いわゆる生活防衛資金)

1~5年程度で使う予定のお金

  • 置き場所:個人向け国債(または定期預金)
  • 理由:元本を守りながら預金より高い金利を受け取れる
  • 注意点:最初の1年は原則として換金できない。使う時期が満期より前なら、換金時に利子の一部が差し引かれる

10年以上使う予定のないお金

  • 置き場所:株式(初めてなら、多くの銘柄に分散する株式の投資信託が入り口になりやすい)
  • 理由:値下がりをやり過ごす時間があり、預金や国債を上回る成長を狙える
  • 注意点:短期的には2割以上値下がりする局面もある。NISAを使えば利益に税金がかからない

もう一つの基準が、「いくら減っても生活や気持ちが耐えられるか」です。値下がりしたときに怖くなって底値で売ってしまうと、長期投資の前提が崩れてしまいます。株式に回す金額は、「この金額が2割減っても売らずに持ち続けられるか」と自分に問いかけて決めてみてください。

200万円の5年後を試算:「全額」と「分ける」の違い

ここからは編集部による試算です。

預金はゆうちょの通常貯金の引き上げ後の金利(年0.5%)が5年間続くと仮定し、個人向け国債は11月発行の固定5年(年2.39%)を使いました。いずれも単利で、利息には20.315%の税金がかかるものとしています。株式は、前の章で引用した金融庁資料の「5年後に74万円~176万円」という幅を、そのままの比率で当てはめています(数字はバランス型の前提なので、株式のみだとさらにボラティリティは上がります)。

試算①:200万円をどれか一つに全額入れた場合(5年後・税引後)

  • 預金(年0.5%):約204万円(利息は約4万円)
  • 個人向け国債・固定5年(年2.39%):約219万円(利子は約19万円)
  • 株式(金融庁資料の幅を適用):約148万~352万円

預金と国債の差は5年で約15万円です。一方、株式は上振れすれば倍近くになる可能性がある反面、下振れすると約52万円減った状態になります。

試算②:使う時期別に分けた場合(5年後・税引後)

月の生活費が15万円の人が、生活費4か月分を預金に残し、数年内に使う予定のお金の40万円を国債に、残りの100万円を株式に回すと仮定しました。

  • 預金60万円:約61.2万円
  • 個人向け国債40万円:約43.8万円
  • 株式100万円:約74万~176万円

    合計:約179万~281万円

分けた場合、下振れしたときの減少は約21万円にとどまります。しかも、急な出費に備えた60万円と、数年内に使う予定の40万円は、株価に関係なく元本を守ったまま使えます。株式が値下がりした局面でも、「生活のために底値で売らざるを得ない」という事態を避けやすくなるのが、分けることの最大の効果だと私は考えています。

※金融庁のデータは毎月の積立投資の結果であり、まとめて一度に投資した場合の値動きとは一致しません。過去の幅を使った目安であり、将来の結果を示すものではない点にご注意ください。

元機関投資家イズミダの視点

「金利が上がったのだから、いまは株式より国債のほうが得だ」という声をよく耳にします。しかし、これは誤解だと私は考えています。個人向け国債の年2%台は、元本を守りながら得られる利回りとしては魅力的ですが、株式とはそもそも役割が違います。試算で見たように、5年では国債のほうが安定していますが、20年という長い期間では、金融庁資料にあるように株式・債券の積立が元本を大きく上回る結果になっています。「どちらが得か」は、使うまでの期間で変わるのです。

もう一つよくあるのが、「預金に置いておけば減らないのだから安全だ」という考え方です。これも半分は誤解だと私は考えています。預金の金額は減りませんが、物価の上昇率が預金金利を上回れば、同じ金額で買えるものは減っていきます。預金は「すぐ使えるお金」としては最適ですが、すべてを預金に置くことにも、目に見えにくいリスクがあるということです。

私はかつて生命保険会社で資産運用に携わっていました。生命保険会社の運用では、将来の保険金の支払いという「いつ、いくら払うか」に合わせて資産を持つことを重んじます。いわゆる「ALM(資産負債管理)」という考え方です。個人の家計も、実は同じではないでしょうか。何を買うかより先に、いつ使うかを決める。そうすれば、株価が下がったときにもあわてずに済みます。

資産運用の目的は、一度に大きく儲けることではなく、必要なときにお金が足りなくならない確率を上げることだと私は考えています。

まとめ――株式と個人向け国債を選ぶ前のチェックポイント

株式と個人向け国債は、どちらかが優れているのではなく、お金を使う時期によって向き不向きが分かれます。11月発行の個人向け国債は固定5年で年2.39%と預金を大きく上回りますが、最初の1年は原則として換金できません。株式は長期では成長が期待できる一方、5年程度では元本割れもあり得ます。200万円を使う時期別に分けると、下振れした場合の減少を抑えながら増やすことも狙えます。商品を選ぶ前に、次の点を確かめてみてください。

  • 生活費の数か月分を、すぐ引き出せる預金として残しているか
  • 1~5年で使う予定のお金を、株式に回していないか
  • 個人向け国債に回すお金は、発行から1年間は使わなくて済むか
  • 株式に回す金額が2割減っても、売らずに持ち続けられるか

「どちらを買うか」の前に「いつ使うか」を決めることが、後悔しにくい資産運用の第一歩です。

参考資料

  • 財務省「個人向け国債の発行条件等」(2026年10月7日)(https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p20261007.pdf)
  • 財務省「個人向け国債 商品概要」(https://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/main/outline/)
  • 株式会社ゆうちょ銀行「貯金金利の引き上げについて」(2026年9月18日)(https://www.jp-bank.japanpost.jp/aboutus/press/2026/pdf/pr26091803.pdf)
  • 預金保険機構「保護の範囲」(https://www.dic.go.jp/yokinsha/page_000016.html)
  • 金融庁「はじめてみよう!NISA早わかりガイドブック」(2023年7月)(https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/guidebook_202307.pdf)

※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではありません。試算は金利が一定という仮定と過去のデータに基づく編集部の目安であり、将来の運用成果を示すものではありません。税金やNISAの制度の適用は、税務署や金融機関にご確認ください。投資判断はご自身の責任で行ってください。内容は2026年10月14日時点の情報に基づいています。

泉田 良輔