ファストファッションの普及による「大量生産・大量消費」が見直される今、上質な一着を長く大切に使い続ける「エシカル消費」や「一生モノ」の価値に注目が集まっています。
日本のカシミヤニットブランド「UTO(ユーティーオー)」を運営する株式会社ユーティーオーは、2026年9月14日、米ビバリーヒルズの老舗フルオーダーシャツメーカー「Anto(アント)」で、同社製品の取り扱い決定を発表しました。
なぜ日本のものづくりが世界最高峰の舞台で新たな評価を獲得したのか、商品の魅力と合わせて、その理由を解説します。記事後半では、自宅でできるカシミヤニットのお手入れ術も紹介します。
1. 老舗「Anto」が初のニット取り扱いに「UTO」を選定
今回の発表における最大のポイントは、世界的なセレブリティが集うビバリーヒルズの名門「Anto」において、創業約70年の歴史の中で初めて「シャツ以外のアイテム」、そして「日本のブランド」が選ばれたという点です。
取り扱いとなる商品は、岩手県北上市の自社工場で熟練職人が編み立てるUTOのカシミヤセーターおよびカーディガンで、2026年秋冬シーズンより販売が開始されます。
これまで英国サヴィル・ロウやオーストラリアなどの名門紳士服店へと展開を広げてきたUTOにとって、本件が米カリフォルニア州における初の展開となります。
最高峰のフルオーダー文化が根付くビバリーヒルズの地で、日本の職人技が光るカシミヤニットが新たな一歩を踏み出す注目のニュースです。
2. カシミヤニット専業メーカー「UTO」とは
株式会社ユーティーオーは、1992年に東京・青山で創業した日本のカシミヤニット専業メーカーです。
最大の特徴は、企画から製造、販売までを一貫して手がけている点にあります。岩手県北上市にある自社工場では、熟練の職人たちが最高等級のカシミヤ原毛を用い、一枚ずつ丁寧に編み立てを行っています。
世界でも珍しい「色やサイズを選べるカスタムオーダー」に対応しており、着る人一人ひとりにフィットする「自分だけの一着」を届けてきました。
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出所:株式会社ユーティーオー
その品質への信頼は国内外で確立されています。国内では岩手県北上市のふるさと納税返礼品として毎年約2億円、累計約17億円の寄附を集める人気品になっています。
さらに海外市場でも、英国サヴィル・ロウの名門紳士服店「HUNTSMAN」や、オーストラリア・シドニーの高級紳士服店「J.H. Cutler」など、世界の選りすぐりの名店で取り扱われています。
3. 老舗ビスポークシャツメーカー「Anto」とは
一方、UTOのニットを迎える「Anto」は、1955年に創業した米国屈指の老舗ビスポークシャツメーカーです。
店舗を構えるのは、世界最高峰のショッピングストリートとして名高いロデオドライブから徒歩数分のビバリーヒルズ一等地。
店舗には自社アトリエを併設し、約17〜20カ所に及ぶ緻密な採寸と2500種類以上の厳選生地を用い、型紙(パターン)設計から縫製までを完全自社一貫で仕立てています。
これまでに保有した顧客のパターンは、ハリウッド俳優をはじめ9000人以上。フランク・シナトラやレオナルド・ディカプリオといったトップスターの顧客を抱えるほか、『タイタニック』『ウォール街』『オーシャンズ』シリーズなど、名だたるハリウッド映画やアカデミー賞レッドカーペットの衣装を手がけてきた伝説的な名門です。
4. なぜUTOが選ばれたのか?共鳴した「一人ひとりのための仕立て」
AntoがUTOに注目した最初のきっかけは、公式ホームページを通じて知った「メイド・イン・ジャパン」へのこだわりでした。
日本の工場で職人が一枚一枚丁寧に仕立てている背景に関心を持ったAntoから、「サンプルのカシミヤを見てみたい」と打診が入ります。
実際に届いたニットを手にしたAntoのスタッフは、その極上の肌触りと圧倒的な編みのクオリティに深く感銘を受け、取り扱いを即決したとのことです。
ユーティーオーは、「一人ひとりの体型や好みに合わせ、時間をかけて丁寧に仕立てる」というビスポークの本質において、両者のフィロソフィーが完全に一致したと説明しています。
また、同社代表の宇土寿和氏はリリースで、
「日本・岩手から生まれたUTOのカシミヤニットを、世界のものづくりに携わる方々にも認めていただけることを励みに、これからも日本の技術と職人の仕事を大切にしながら、世界へ発信してまいります」
とコメントしています。
5. 実は自宅でもできる?プロ直伝の「お手入れ術」
高級なカシミヤセーターはお手入れにも慎重さが求められます。そのため、「絶対にクリーニング店に出さなければいけない」と思い込んでいる方も多いかもしれません。
しかし、実は正しい手順を踏めば自宅でもお手入れをすることができます。洗濯の手順は以下の通りです。
- ネットに入れて「手洗いモード」:セーターを洗濯ネットに入れ、洗濯機の手洗いコース(ドライコースなど弱水流)を選択します。
- たっぷりの「水」と中性洗剤を使う:ぬるま湯は縮みの原因になるため厳禁。必ず常温の水を使用し、たっぷりの水量の中で泳がせるように洗います。
- 必ず「単独洗い」にする:他の洗濯物と一緒に洗うと、衣類同士が押し合いへし合いして摩擦が起き、フェルト化の原因になります。セーター単体で洗うようにしましょう。
- リンスや柔軟剤で油分を補給:洗剤で汚れを落とすと同時に天然の油分もわずかに抜けてしまいます。仕上げに柔軟剤や髪用のリンスを少量加えれば、しっとりとした風合いが戻ります。
次に脱水・乾燥・ハンガーのポイントを紹介します。
- 手で絞らず、脱水機を使う:手で雑巾のように絞ると繊維に強い負荷がかかります。脱水機を短時間かけて水気を飛ばしましょう。
- 平干しで元の形に整える:乾燥機の熱風は強烈な縮みを引き起こすため絶対に使用してはいけません。平干しネットなどの上に置き、手で元の形を整えてから陰干しします。
- 型崩れを防ぐハンガー掛けの裏技:乾いた後にハンガーにかける際は、首元から普通にかけると自重で肩が伸びてしまいます。「ニットを縦に二つ折りにし、脇の下がハンガーの頂点にくるように掛ける」と、重みが分散されて型崩れを防ぐことができます。
なお、UTOのカシミヤニットは、着用と洗濯を重ねて2〜3年が経過した頃に最もふんわりとした柔らかさを感じられるよう、あらかじめ度目を詰めて編み立てられているそうです。
適切なお手入れを重ねれば、繊維の内側から柔らかいうぶ毛が立ち上がり、15年もののセーターのように極上の風合いへと育っていくのも魅力といえるでしょう。
参考資料
大蔵 大輔