日本と米国で、金利の引き上げが続いています。米国では2026年9月16日、連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、3.75~4%としました。日本でも9月18日、日本銀行が政策金利を「1.25%程度」に引き上げています。

「金利が上がると株価は下がる」。投資の本や記事で、そう読んだことがある方も多いでしょう。ところが、実際には株式市場はそこまで大きく崩れていないように見えます。理屈が間違っているのでしょうか。

そこで今回は、読者から寄せられた疑問に、LIMO&ファイナンス編集長の泉田良輔が答えます。泉田は日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)で、日本生命で外国株式のファンドマネージャーを、フィデリティ投信でアナリストを務めてきた元機関投資家です。

読者の疑問

「金利が上がると、株価は下がるという理屈を聞きました。いま、世界中で金利が上がっているのに、米国株や日本株では、株式市場はそこまで大きく崩れていないと思います。何が理屈と違うのでしょうか。」

ご質問ありがとうございます。先に結論をお伝えすると、理屈が間違っているのではありません。理屈が置いている「前提」と、いま起きていることが違うのです。理由は次の3点です。

  • 理屈は「利益が変わらない」前提:金利が株価を押し下げるのは、他の条件が同じなら、という話です
  • 利益が伸びている:日本企業の経常利益は過去最高。金利の重しを利益の伸びが打ち消しています
  • 金利が上がる理由が大事:景気や物価の強さを反映した金利上昇なら、利益も一緒に伸びやすくなります

一つずつ見ていきましょう。

「金利が上がると株価が下がる」理屈の中身

まずは、理屈そのものを確かめておきましょう。株価は、会社が将来にわたって稼ぐ利益を、いまの価値に換算して合計したもの、と考えるのが基本です。

ここでいう「いまの価値に換算する」ときに使うのが金利です。たとえば金利が5%なら、1年後の105円は、いまの100円と同じ価値です。金利が上がれば、将来のお金のいまの価値は小さくなります。これが「金利が上がると株価が下がる」の正体です。

私は普段から「株式投資はなんでも鑑定団と同じで、勝負は値決め」だとお伝えしています。値決めをうんと単純にすると、次のようになります。

株価を決める2つの要素


• 株価=1株あたり利益(EPS)×PER(株価収益率)
• PERの目安=1÷(投資家が求める利回り-利益の成長率)

投資家が求める利回りは、金利が上がれば上がります。すると割り算の分母が大きくなり、PERは下がります。ここまでは理屈どおりです。

しかし、よく見ると株価にはもう一つの要素があります。「利益」そのものと、「利益の成長率」です。「金利が上がると株価が下がる」という理屈は、この2つが変わらないという前提を置いた話なのです。

理屈と違うのは「利益の伸び」。金利の重しを打ち消す

では、いま企業の利益はどうなっているのでしょうか。財務省が公表した法人企業統計を見てみましょう。

法人企業統計(2026年4~6月期、全産業=金融業・保険業を除く)

  • 売上高:393兆9377億円(前年同期比5.9%増)
  • 経常利益:44兆6668億円(前年同期比24.6%増)
  • 設備投資:13兆0250億円(前年同期比1.6%増)

出所:財務省「四半期別法人企業統計調査(令和8年4-6月期)」

経常利益は前年同期より約2.5割増え、四半期として過去最高です。金利が上がる一方で、利益も大きく伸びている、ということになります。このふたつを、先ほどの式に当てはめて試算してみます。

金利の重しと利益の伸びの綱引き(編集部試算)

  • 出発点:投資家が求める利回り6%、利益の成長率2%→PERは25倍
  • 金利だけが1ポイント上昇(求める利回り7%)→PERは20倍。株価は2割下落することになる
  • そのうえで利益(税率が変わらない前提で)が25%増える→20倍×1.25=元の25倍と同じ水準。株価はほぼ横ばい
  • 利益の成長率も物価とともに1ポイント上がる(3%)→PERは25倍のまま

※編集部試算。利回り6%、成長率2%は説明のための仮定で、実際の市場の数値ではない。法人企業統計の経常利益は上場企業の1株あたり利益とは異なるため、ここでは「25%の利益増」の目安としてのみ使っている

綱引きにたとえるなら、金利は株価を下に引っ張り、利益の伸びは上に引っ張ります。いまは、上に引っ張る力も強いため、株価が大きく崩れていない。そう考えると、「理屈と違う」のではなく、「理屈のもう半分が効いている」ということがわかります。

そもそも、なぜ金利が上がっているのかも大事です。FOMCの声明には、次の一文があります。


Inflation remains elevated.

出所:Federal Reserve Board「Federal Reserve issues FOMC statement」

「インフレが高い水準にとどまっている」という意味です。物価が上がれば、企業の売上や利益も金額としては膨らみやすくなります。物価を押さえるための利上げは、裏を返せば「利益が金額として伸びやすい環境」で起きている、といえるでしょう。

金利の「上がり方」しだいで、理屈どおりに株価が下がることもある

では、金利が上がっても株価は大丈夫、と考えてよいのでしょうか。そうとは限りません。綱引きのバランスが崩れれば、理屈どおり株価は下がります。注意したいのは、次のような場面です。

金利上昇が株価の重しになりやすい場面

  • 利益の伸びが鈍るのに、金利だけが上がり続けるとき
  • 金利が予想を超えて急に上がり、投資家が求める利回りが一気に引き上がるとき
  • PERがもともと高い、つまり「遠い将来の利益」に期待して買われている株式

とくに3つ目は見落としがちです。先ほどの式で、求める利回りと成長率の差が小さいほどPERは高くなります。その差が小さいところに金利が上乗せされると、PERの下がり方は大きくなります。市場全体が崩れていなくても、高PERの成長株だけが大きく下がる、ということは十分に起こりえます。

つまり、「株式市場が崩れていない」からといって、すべての株式が金利上昇の影響を受けていないわけではありません。指数の中身を見ると、金利に強い株と弱い株が入れ替わっている、ということもあるのです。

元機関投資家イズミダの視点

「金利が上がっているのに株価が下がらないのは、市場がおかしい」という声を耳にすることがあります。しかし、これは誤解だと私は考えています。本文で見たように、株価は「一株当たり当期純利益(EPS)×PER」で決まります。金利高はPERを押し下げますが、経常利益が前年同期比24.6%増えているなら、株価が大きく崩れないことには、それなりの理屈があるのです。

もう一つ、「金利が上がるなら株は売ったほうがいい」という考え方もあります。ただ、金利が上がること自体は、日銀やFRBの公表ですでに広く知られています。誰もが知っている情報は、すでに株価にある程度織り込まれているものです。大事なのは「金利が上がるか」よりも、「予想以上に上がるか」と「利益がそれに追いつけるか」です。

私が機関投資家として株式を評価していたときも、金利は「値決めの物差し」、利益は「値決めの中身」と分けて考えていました。物差しが厳しくなっても、中身がそれ以上に充実していれば、値段は保たれます。個別の会社を見るときも、金利のニュースだけでなく、その会社の利益が物価や金利の上昇に負けずに伸びているかを確かめることが大事だと考えています。

まとめ――金利と株価を見るときのチェックポイント

「金利が上がると株価は下がる」という理屈は間違いではありません。ただし、それは「企業の利益が変わらなければ」という前提つきの話でした。いまは物価が高い中で金利が上がっており、日本企業の経常利益は過去最高の44.7兆円まで伸びています。試算でも、PERが2割下がっても利益が25%増えれば株価はほぼ横ばいでした。ただし、利益の伸びが鈍ったり、金利が予想以上に上がったりすれば、理屈どおり株価は下がります。金利と株価の関係を見るときは、次の3点を確かめてみてください。

  1. 企業の利益は、金利や物価の上昇に負けずに伸びているか
  2. 金利の上がり方が、市場の予想を大きく超えていないか
  3. 自分が持っている株式や投資信託に、PERの高い成長株がどれだけ含まれているか

金利のニュースだけで株価を判断せず、「利益×PER」の両方を見ること。それが、金利上昇局面でも落ち着いて投資を続けるための第一歩といえるでしょう。

参考資料

  • Federal Reserve Board「Federal Reserve issues FOMC statement」(https://federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20260916a.htm)
  • 日本銀行「金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日)」(https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf)
  • 財務省「四半期別法人企業統計調査(令和8年4-6月期)」(https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/r8.4-6.pdf)

泉田 良輔