2026年9月18日の金融政策決定会合で、短期の政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)を「1.25%程度」とすることを決めました。6月に1.0%程度へ引き上げてから、わずか3カ月での追加利上げです。

また、金利の上昇とともに、銀行の利益も伸びています。三菱UFJフィナンシャル・グループの2026年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益は2兆4272億円で、前期比30.3%増でした。こうした状況から、「金利が上がると銀行株が強い」という話を耳にする機会も増えたのではないでしょうか。

そこで今回は、読者から寄せられた疑問に、LIMO&ファイナンス編集長の泉田良輔が答えます。泉田は日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)で、日本生命で外国株式のファンドマネージャーを、フィデリティ投信でアナリストを務めてきた元機関投資家です。金融機関規制や金融危機の研究も手がけています。

読者の疑問

「金利が上がると、銀行株のパフォーマンスがよくなる理由を教えてください」

ご質問ありがとうございます。先に結論をお伝えすると、理由は次の3点にまとめられます。

  • 利ざやが広がる:銀行は貸出金利と預金金利の差で稼ぎます。金利が上がると、貸出金利は早く大きく、預金金利は遅く小さく上がるため、差が広がります
  • 利益の見通しが上がる:株価は将来の利益の見通しで動きます。利ざやの拡大は、その見通しを直接押し上げます
  • ただしリスクも拡大する:保有する債券の値下がりや、借り手の返済が苦しくなるリスクも同時に高まります

銀行は「金利の差」で稼ぐ商売

銀行の本業を、商店にたとえてみましょう。仕入れは皆さんの預金で、仕入れ値は預金金利です。そのお金を企業や個人に貸し出し、貸出金利という「売値」を受け取ります。売値と仕入れ値の差が、銀行の稼ぎの土台になるわけです。

では、金利が上がると何が起きるのでしょうか。貸出金利の多くは、市場金利に連動して比較的早く見直されます。一方、普通預金などの預金金利は、上がるにしてもスピードも幅も小さいのが一般的です。売値だけが先に上がるのですから、差は広がります。

実際の決算資料で確かめてみましょう。

三菱UFJの決算で確かめる。貸出金利が1上がる間に、預金金利は0.06しか上がらない

三菱UFJフィナンシャル・グループは決算説明資料で、三菱UFJ銀行の国内の「利鞘」を開示しています。

三菱UFJ銀行(国内貸出金)の利回り

  • 貸出金利回り:2024年度Q4 1.04%→2025年度Q4 1.32%(0.28ポイント上昇)
  • 預金等利回り:2024年度Q4 0.11%→2025年度Q4 0.26%(0.15ポイント上昇)
  • 預貸金利回り差:2024年度Q4 0.93%→2025年度Q4 1.05%(0.12ポイント拡大)

※増減は原資料の表示どおりで、四捨五入により差と一致しないことがある

この数字は、まさに先ほどの説明どおりの動きを示しています。預金等利回りの上昇以上に貸出金利回りの上昇幅が大きく、預貸金利回り差が拡大しています。

ちなみに、2023年度Q4の預貸金利回り差がほぼゼロであったことを考えると、まさに「金利のある時代」に突入したことを実感します。

利ざやの変化を100億円の貸出で試算すると(編集部試算)

• 2024年度の利回り差0.93%:年約9300万円
• 2025年度の利回り差1.05%:年約1億500万円
• 増加額:年約1200万円

※同額の預金で同額を貸し出した場合の単純な試算。経費や貸倒れ、貸出と預金の残高の差は考慮していない

三菱UFJグループ全体の資金利益は、2024年度の2兆8765億円から2025年度は3兆円あまりと、約5%の増加です。海外の事業や手数料も含めた全体では、国内の利ざやの影響は薄まります。それでも、「国内の本業の稼ぐ力が構造的に上がった」ことは、株式市場が銀行株を評価し直す大きな理由になります。

ちなみに、同社の2026年3月期の純利益を期末の自己資本で割ると、約11%になります。株主のお金でどれだけ稼げたかを示すROEの考え方です。低金利の時代に「稼ぐ力が低い」と見られていた銀行の評価が変わるのは、こうした数字の改善があるからだといえるでしょう。

金利上昇が銀行に不利に働く場面もある

ここまでの話だと、金利が上がれば上がるほど銀行はもうかる、と感じるかもしれません。しかし、金利上昇には銀行にとってのネガティブな面もあります。主なものは次の3つです。

金利上昇が銀行に不利に働く主な経路

  • 保有する債券の値下がり:銀行は預金の一部を国債などで運用しており、金利が上がるとその価格は下がる
  • 借り手の返済負担の増加:金利が上がると、資金繰りの苦しい企業や個人の返済が滞りやすくなる(貸倒れの増加)
  • 預金金利の上昇と預金の流出:金利が上がり続けると、預金を集める競争が強まり、「仕入れ値」が上がっていく

とくに3つ目は、先ほどの「預金金利が上がりにくい」という前提そのものが崩れるリスクです。金利のない時代には、皆さんもどの銀行に預けても大差ないと考えていたでしょう。しかし、金利がつくようになれば、少しでも有利なところにお金を移す人が増えていきます。

私は金融危機の歴史を研究してきましたが、銀行の経営が揺らぐのは、往々にして「金利の変化」と「預金の動き」が重なったときです。金利上昇は銀行にとって追い風ですが、その「上がり方」が急であるほど、剣の面が出やすくなる、ということは覚えておいていただきたいと思います。

元機関投資家イズミダの視点

「金利が上がれば、どの銀行株も同じように上がる」という声をよく耳にします。しかし、これは誤解だと私は考えています。利ざやがどれだけ広がるかは、貸出の中身(市場金利に連動する貸出が多いか)や、預金の中身(金利が上がりにくい普通預金が多いか)、保有する債券の量によって銀行ごとに違います。今回は三菱UFJ銀行の数字を見ましたが、地方銀行を含めて「銀行株」をひとくくりにするのは、一面的な見方といえるでしょう。

もう一つ、「金利が上がったというニュースを見てから銀行株を買えばよい」という考え方もあります。ただ、株価は将来の見通しを先取りして動くものです。利上げが予想どおりであれば、その分はすでに株価に織り込まれていることも少なくありません。

では、銀行株をどう見ればよいのでしょうか。私が機関投資家として重視していたのは、「金利が上がるかどうか」よりも「金利の上昇がどれだけ利益につながるか」です。具体的には、今回紹介した預貸金利回差の推移と、稼ぐ力を示すROEが、株主が求めるリターン(資本コスト)を継続的に上回れるかどうか。この2つを決算のたびに確かめるのが、銀行株と付き合う基本だと考えています。

まとめ

金利が上がると銀行株が強くなりやすいのは、「貸出金利は早く大きく上がり、預金金利は遅く小さくしか上がらない」という銀行の稼ぎ方の仕組みがあるからでした。三菱UFJ銀行の決算でも、その動きははっきりと数字に表れています。ただし、金利上昇には銀行にとって不利な面もあり、「金利が上がれば銀行株は安泰」とはいえません。あらためて要点を整理しておきましょう。

  • 銀行は貸出金利と預金金利の差で稼ぐ。金利が上がると貸出金利が先に大きく上がり、差が広がる
  • 三菱UFJ銀行の国内の預貸金利回差は2024年度の0.15%から2025年度は0.96%に拡大。貸出金利の上昇に預金金利がほとんど追いついていない
  • ただし、保有債券の値下がりや貸倒れの増加、預金獲得競争といった不利な面もあり、銀行ごとの違いも大きい

銀行株を見るときのチェックポイント

  • 預貸金利回差(利ざや)が広がり続けているか
  • 預金金利の上がり方が加速していないか
  • 保有債券の含み損や貸倒れの費用が増えていないか
  • ROEが継続的に改善しているか

金利が上がると銀行株が強いのは、「売値」だけが先に上がる仕組みがあるからです。その仕組みが続いているかどうかを数字で確かめることが、銀行株を見る第一歩といえるでしょう。

参考資料

 

  • 日本銀行「金融市場調節方針の変更について(2026年9月18日)」(https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf)
  • 日本銀行「金融市場調節方針の変更について(2026年6月16日)」(https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260616a.pdf)
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ「2026年3月期 決算短信」(https://www.mufg.jp/dam/ir/fs/2025/pdf/summary2603_ja.pdf)

泉田 良輔