そもそも機械受注統計調査とは

2016年4月11日に内閣府は2月の機械受注統計調査(以下、機械受注)の結果を発表しました。機械受注は、機械、電機メーカー等が受注した設備投資関連の機械・装置の受注額を集計したもので、景気の先行性を示すため、株式市場では比較的注目度が高い統計です。

なぜ先行性があるのかというと、機械受注額は、これから景気が上向くと考える企業が増えると増加し、逆に、これから景気が悪化すると考える企業が増えると減少するからです。

また、設備投資に関連する機械・装置の場合、受注してから出荷するまで6~9か月のリードタイムが必要とされるため、現在の受注状況は半年程度先の景気動向を占う先行指標として捉えることができるのです。

ただし、船舶や電力業からの受注は景気局面との対応性が薄く、不規則かつ多額であり、完成までの期間が1年以上と長いものも多いため、景気先行指標として見る場合には、「船舶・電力を除く民需」に注目します。

2016年2月の機械受注は3か月ぶりに前月比減少

さて、2016年2月の船舶・電力を除く民需受注額(季節調整値)の実績は前月比▲9.2%減となりました。2016年1月は同+15.0%増、2015年12月は同+1.0%増、2015年11月は同▲9.7%減でしたので、3か月ぶりの前月比減少です。

2月の実績を需要者別で見ると、非製造業は同+31.7%増でしたが、製造業は1月には鉄鋼業等での大型受注があったこと、また、円高などによる投資センチメントの悪化から同▲30.6%減と大幅な減少となっています。

内閣府は、2015年10月から今回まで、「機械受注は持ち直しの動きが見られる」とする判断を据え置いていますが、製造業の大幅な受注の落ち込みが一時的なものかどうかは注視していく必要がありそうです。

ミクロの観点では好調分野も

このように全体では2月の機械受注は冴えないものでしたが、発表資料を細かく見ると明るい材料もあります。今回、筆者が注目したのは、機種別の2月の受注残高の前年同月比での伸び率です。

ファナック(6954)などが含まれる工作機械(前年同月比▲7.7%減)や、電子・通信機械(同横ばい)には力強さはありませんが、三菱重工(7011)やIHI(7013)などが関連する発電所のタービン等の原動機(+10.9%増)、日立製作所(6501)が注力している鉄道車両(同+11.8%増)は堅調です。

また、電子・通信機械も中身を見ると、NEC(6701)のコア事業である通信機(同▲33.3%減)や、アンリツ(6754)などが手掛ける電気計測器(同▲7.9%)は低調ですが、東京エレクトロン(8035)や日立国際電気(6756)などが関連する半導体製造装置(同+18.1%増)には明るさが見えます。

原動機や鉄道車両は受注から出荷までのリードタイムが長いため、2017年3月期の業績に大きく寄与するかはやや不透明ですが、これから発表される決算でも受注残の増加が確認できれば、中長期的な観点からポジティブに評価される可能性はありそうです。

一方、半導体製造装置については、リードタイムは6~9か月程度であるため、足元の受注残の増加から2017年3月期の業績動向には比較的安心感が持てます。

ちなみに、半導体市場そのものはスマホ市場の成熟化などにより低成長が続いてにもかかわらず、半導体製造装置市場が好調な背景としては、DRAMやロジック半導体の微細化の進展やNANDの3次元化などに対応したテクノロジー投資が活発であるためと考えられます。

このため、決算でこの好調の持続性が確認されれば、ポジティブに評価される可能性は十分にあると考えられます。

【2016年4月13日 投信1編集部】

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LIMO編集部