「グループホームの費用は月12万円くらい」——そう聞いて安心してしまうと、思わぬところでつまずくかもしれません。実は2026年6月から、介護職員等処遇改善加算の加算率が引き上げられ、その分が利用者の自己負担にも反映される仕組みになっています。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、国が費用の上限を一律に定めている施設ではありません。地域やサービス内容によって金額に幅があるうえ、今回の加算改定のように、制度側の変更が自己負担額にじわりと影響してくることもあります。
なお、介護費用全体の内訳や総額の考え方については、下記の記事より一部を引用・参照しています。
介護費用は総額いくらかかる?一時費用・月額・期間の試算
介護費用全体の一時費用・月額費用の目安については、こちらの記事でも詳しく整理していますので、あわせてご確認ください。
この記事では、厚生労働省の資料にもとづき、グループホームの費用の内訳と、2026年6月の処遇改善加算引き上げが自己負担にどう跳ね返るかまで整理して解説します。
1. グループホームの費用は「初期費用+月額費用」の2階建て構造
グループホームに入居する際は、多くの施設で「入居一時金(初期費用)」と「月額費用」の2つを負担する仕組みになっています。入居一時金(保証金)は、一般の賃貸住宅でいう敷金に近い性質のもので、退去時に一部が返還されるのが一般的です。相場は0円〜数十万円程度(中央値5万円、平均8万円前後)で、数百万円規模の一時金が必要になるのは介護付き有料老人ホームなど別の施設類型で、グループホームとしては極めて稀なケースです。
月額費用の内訳は、大きく分けて「家賃相当額」「食費」「水道光熱費などの日常生活費」「介護サービス費(自己負担分)」の4つです。地域の家賃相場に連動する部分が大きいため、地域によって月額費用に数万円単位の差が出ることも珍しくありません。
- 入居一時金:0円〜数十万円程度(敷金・保証金として数万〜10万円前後が一般的)
- 家賃相当額:月5万円前後〜(地域差が大きい)
- 食費・水道光熱費等:月3万円〜6万円程度
- 介護サービス費(1割負担の場合):要介護度に応じて変動
この家賃相当額の地域差は、グループホームに限った話ではありません。同じ要介護度でも、住んでいる地域によって毎月の負担額そのものが変わってくることは、施設選びの前提として押さえておきたいポイントです。
次のページでは、2026年6月の処遇改善加算引き上げが、この「介護サービス費」の自己負担部分にどう影響するのかを確認しましょう。
2. 【編集者の視点】
費用比較サイトの多くは、この初期費用と月額費用の内訳までは解説していますが、そこで説明が止まっているケースが目立ちます。
制度側の改定が自己負担額に反映されるタイミングまで踏み込んで書かれた記事は、意外と多くありません。
次の章では、その部分を厚生労働省の資料にもとづいて具体的に見ていきます。
3. 2026年6月、処遇改善加算の引き上げが自己負担にも反映される
厚生労働省は、令和8年度(2026年度)の臨時改定として、2026年6月分のサービス提供から介護職員等処遇改善加算の加算率を引き上げています。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の場合、加算区分によって加算率は最大で22.8%(加算Ⅰロ)、標準的な区分でも21.0%(加算Ⅰイ)に達します。
この加算は、介護職員だけでなく、看護師やケアマネジャー、調理員など事業所に勤務する幅広い職種の処遇改善に充てられる仕組みですが、その原資は介護報酬(サービス費用)に組み込まれています。つまり、加算率が上がれば、事業所が受け取る介護報酬の総額が増え、その1〜3割にあたる利用者負担も増額します。
4. 入居条件は「65歳以上・要支援2以上」と「認知症の診断」の両方が必要
グループホームに入居するためには、原則として65歳以上(一部の特定疾病では40歳以上も対象)で、要支援2または要介護1以上の認定を受けていることに加えて、医師から認知症の診断を受けていることが条件になります。
この「認知症の診断」という条件があるため、要介護度だけを満たしていても、認知症の診断が無ければ入居対象にはなりません。逆に、要介護度がそれほど重くない段階でも、認知症の診断さえあれば入居を検討できる点は、特別養護老人ホーム(原則要介護3以上)との大きな違いです。
5. 定員は「1ユニット9人以下」。少人数・家庭的な環境が前提の施設
グループホームは、1つの共同生活住居(ユニット)あたり定員が5人以上9人以下と定められています。これは、少人数で家庭的な雰囲気の中、認知症の症状の進行を緩やかにすることを目的とした運営基準です。
この少人数制のため、特別養護老人ホームや有料老人ホームと比べると、1施設あたりの入居可能人数が少なく、地域によっては空きが出るまで数か月から1年以上待つケースもあります。
- グループホーム:1ユニット5人以上9人以下
- 特別養護老人ホーム(ユニット型):1ユニット原則としておおむね10人以下(15人を超えないもの)
次のページでは、この少人数体制を支える人員配置の基準について確認しましょう。
6. 介護・看護職員は「利用者3人に対して常勤換算1人以上」が最低基準
グループホームの人員配置基準では、日中は利用者3人に対して介護・看護職員を常勤換算1人以上配置することが求められています。夜間・深夜の時間帯も、1ユニットごとに1人以上の従業者を配置しなければなりません。
この基準は、特別養護老人ホームなどの人員配置基準と比べても手薄になりやすい水準です。24時間の見守り体制はありますが、医療的なケアが常時必要な場合には、グループホーム側で対応できる範囲を超えることもあります。
7. 【編集者の視点】
「少人数で家庭的」という説明だけを見ると、手厚いケアを想像しがちですが、人員配置の基準そのものは決して余裕のある水準ではありません。
医療的なケアの必要性が今後高まりそうな場合は、入居前に、看護師の配置時間や医療機関との連携体制を具体的に確認しておくことをおすすめします。
8. 有料老人ホームとは費用の決まり方の前提が違う
グループホームとしばしば比較される施設に、有料老人ホームがあります。有料老人ホームの費用は事業者が独自に価格を設定する自由価格であり、立地やサービス内容によって月額費用に大きな幅が出やすい点はグループホームと似ています。
ただし大きく違うのは、有料老人ホームには「介護付き」「住宅型」といった類型があり、介護サービスの提供方法そのものが異なる点です。住宅型有料老人ホームでは、区分支給限度基準額の範囲内で外部の介護サービスを個別に組み合わせるため、利用した分だけ費用が積み上がる仕組みになっています。
一方でグループホームは、施設のスタッフが日常生活支援と介護サービスを一体的に提供する仕組みのため、費用の構造がよりシンプルです。利用したサービスの量によって毎月の請求額が細かく変動する住宅型有料老人ホームとは異なり、グループホームは月額費用の見通しを立てやすいという特徴があります。
また、認知症ケアの専門性という観点でも違いがあります。グループホームは認知症の診断を受けた方だけを受け入れる施設である一方、有料老人ホームは認知症の有無にかかわらず幅広い入居者を受け入れています。認知症ケアに特化した研修を受けたスタッフの配置や、生活リズムを整えるための日課プログラムなど、認知症ケアに特化した運営がなされている点は、グループホームならではの強みといえます。
「同じような認知症ケアの施設だから費用の仕組みも同じはず」と考えていると、いざ見積もりを比べたときに、内訳の項目が一致せず戸惑うことがあります。契約前には、月額費用に何が含まれ、何が別途請求になるのかを、契約書や重要事項説明書で必ず確認しておきましょう。
9. 看取り対応の可否も費用や退去条件に影響する
グループホームの中には、看取り(終末期のケア)に対応している事業所と、対応していない事業所があります。看取り対応を行う事業所では、医療連携体制加算やターミナルケア加算といった加算が算定されることがあり、その分が利用者負担にも反映されます。
逆に、看取り対応を行っていない事業所では、医療的なケアの必要性が高まった段階で退去を求められ、医療機関や他の施設への転居が必要になるケースもあります。入居時点だけでなく、将来的に状態が変化した場合にどこまで対応してもらえるのかを、事前に確認しておくことが欠かせません。
10. 入居前に確認しておきたい「体験入居」という選択肢
グループホームの多くは、正式な入居契約の前に「体験入居」を実施しています。数日から1週間程度、実際に施設で過ごしてもらうことで、本人と施設の相性や、他の入居者との関係性を事前に確認できる仕組みです。
体験入居の費用は、通常の月額費用を日割りにした金額に設定されている施設が一般的です。契約を急ぐあまり体験入居を省略してしまうと、入居後に「思っていた雰囲気と違った」というミスマッチが起きやすくなります。費用だけでなく、こうした事前確認の機会も見積もりと合わせて確認しておくとよいでしょう。
11. 費用を抑える公的な助成制度もある
グループホームの費用負担が重い場合、自治体によっては独自の家賃助成制度を設けているケースがあります。また、所得が一定以下の世帯であれば、介護保険の「高額介護サービス費」制度により、1か月の介護サービス費の自己負担額に上限が設けられ、超えた分は払い戻しの対象になります。
ただし、グループホームの家賃相当額や食費、日常生活費は、この高額介護サービス費の対象には含まれません。対象になるのはあくまで介護サービス費の自己負担部分のみである点に注意が必要です。
自治体独自の助成制度は、名称や条件が市区町村ごとに異なります。「グループホーム 家賃助成」といった形で、お住まいの自治体の介護保険担当窓口やホームページを確認し、利用できる制度が無いか事前に問い合わせておくことをおすすめします。制度の有無だけで、実際の月々の負担額が数千円から数万円変わってくることもあります。
12. まとめ
グループホーム単体の費用だけでなく、介護費用全体の総額をあらかじめ把握しておきたい方は、介護費用の総額試算に関する記事もあわせて確認しておくと、資金計画が立てやすくなります。
グループホームの費用は、入居一時金と月額費用(家賃相当額・食費・介護サービス費など)の組み合わせで決まり、施設や地域によって金額に幅があります。2026年6月からは処遇改善加算の引き上げにより、介護サービス費の自己負担部分がわずかに増額する可能性がある点も押さえておきましょう。
入居条件は「65歳以上・要支援2以上」と「認知症の診断」の両方が必要で、1ユニットの定員は5人以上9人以下と少人数です。人員配置基準は決して手厚いとは言えないため、医療的なケアの必要性がある場合は事前確認が欠かせません。
※本記事は、編集部が厚生労働省が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
13. よくある質問
13.1 Q. グループホームの費用は全国一律ですか?
いいえ、全国一律ではありません。国が基準費用額を一律に定めている特別養護老人ホームとは異なり、グループホームの家賃相当額や食費は事業者が独自に設定するため、地域や施設によって金額に幅があります。
13.2 Q. 入居一時金は必ず必要ですか?
施設によります。入居一時金を設定していない施設もあれば、数百万円規模の一時金を求める施設もあり、契約前に必ず確認する必要があります。
13.3 Q. 2026年6月の処遇改善加算の引き上げは、すべての介護サービスが対象ですか?
訪問看護や居宅介護支援(ケアマネジメント)など、対象となるサービス種別が拡大されています。グループホーム(認知症対応型共同生活介護)も加算対象に含まれます。
13.4 Q. 認知症の診断がなくても入居できますか?
原則として、医師による認知症の診断が入居条件になっています。要介護度の基準を満たしていても、診断がなければ対象外です。
13.5 Q. 高額介護サービス費は家賃にも使えますか?
いいえ、高額介護サービス費の対象は介護サービス費の自己負担部分のみです。家賃相当額や食費、日常生活費は対象に含まれません。
13.6 Q. 特別養護老人ホームとの違いは何ですか?
特別養護老人ホームは原則要介護3以上が入居条件で、費用は国が定める基準費用額にもとづきます。グループホームは要支援2以上かつ認知症の診断が条件で、費用は事業者が個別に設定する点が異なります。
参考資料
齊藤 慧
