「マイナンバーカードは2026年に廃止されるらしい」「作らない方がいいと聞いた」——こうした噂を目にして、取得をためらっている人は少なくありません。
結論から言えば、現行のマイナンバーカードそのものが廃止されるという事実はありません。この記事では、「廃止」という言葉が指している本当の中身と、「作らない方がいい」という主張の前提を、公的機関の情報にもとづいて確認していきます。
1. 「マイナンバーカードが廃止される」という噂の正体
まず整理しておきたいのが、「廃止」という強い言葉が何を指しているのかという点です。
1.1 マイナンバー制度そのものが廃止されるわけではない
マイナンバー制度は法律(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)にもとづく制度であり、この法律自体が廃止される予定は確認されていません。「廃止」という噂の多くは、マイナンバーカードの仕様が将来的に見直される、という別の話が誤って伝わったものと考えられます。
1.2 「次期カード」への刷新の検討が誤解のもとになっている
デジタル庁では、現行カードの次にあたる「次期個人番号カード」の仕様について、タスクフォースで検討が進められています。ただし、これはあくまで検討段階の案であり、確定した制度変更として公表されているものではありません。「刷新の検討」という情報が、「今のカードが使えなくなる」という不安に結びついてしまっている面があると考えられます。
2. 「作らない方がいい」という主張の中身を分解する
「作らない方がいい」という意見にも、いくつかの理由が挙げられています。ひとつずつ、実態を確認していきます。
2.1 情報漏洩・紛失への不安
もっとも多く挙げられるのが、個人情報が集約されることへの不安です。マイナンバーカードにはICチップが搭載されていますが、券面に記載されている以上の詳細な個人情報(税・年金等の情報)はカード自体には記録されていません。
各行政機関が保有する情報をオンラインで照会する仕組みになっており、カードを紛失しても、その一枚から個人情報が芋づる式に読み取られる設計にはなっていません(マイナンバーカードは本当に安全?今こそ知っておきたい悪用が困難な理由で仕組みを詳しく解説しています)。
不安の正体をさらに分解すると、「カードを落としたら誰かに何でも見られるのではないか」という漠然としたイメージが大きいと考えられます。実際には、券面情報だけで税・年金・医療情報にアクセスできる設計にはなっておらず、暗証番号や電子証明書といった別の要素が必要になります。
2.2 取得・保有義務への誤解
マイナンバーカードの取得は、法律上は申請にもとづくものであり、取得しないことを理由に罰則が科される制度ではありません。ただし、健康保険証としての利用については、「資格確認書」という代替手段が用意されており、「作らないと生活が成り立たない」というほど追い込まれる仕組みにはなっていません。
3. 実際に「作らない」場合、どんな不便が生じるのか
「作らない方がいい」という主張の是非を判断するには、実際に作らなかった場合の不便さも具体的に把握しておく必要があります。
3.1 コンビニでの証明書交付が使えなくなる
マイナンバーカードを使えば、コンビニのマルチコピー機で住民票の写しや印鑑登録証明書などを取得できますが、カードが無い場合は従来通り市区町村の窓口で申請することになります。窓口対応時間内に行けない人にとっては、この点が実務上の不便として大きく感じられる場合があります。
3.2 確定申告のe-Tax利用に手間がかかる
マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォンの読み取り機能)があれば、確定申告のe-Taxを自宅から完結できますが、カードが無い場合は税務署で発行されるID・パスワード方式や、書面での申告など別の手段を選ぶことになります。医療費控除など確定申告の機会がある人ほど、この違いは実務上のコストとして表れます。
3.3 公的な本人確認書類として使えない場面が出てくる
運転免許証を持っていない人にとって、マイナンバーカードは顔写真付きの公的な本人確認書類として広く使える手段の一つです。カードを作らない場合、金融機関の口座開設や各種契約時の本人確認で、健康保険証など複数の書類を組み合わせて提示する必要が生じる場面があります。
特に運転免許証を持たない高齢者や若年層にとっては、この違いが実務上のハードルとして表れやすい部分です。自分がどのような場面で本人確認書類を求められる機会が多いかを考えておくと、判断材料の一つになります。
3.4 健康保険証としての利用にも影響する
マイナ保険証としての利用登録ができないため、資格確認書での受診となります。資格確認書自体は申請不要・無償で交付される仕組みですが、マイナ保険証利用時に想定されている「限度額を超える医療費の立て替え不要」といった仕組みは利用できません。
3.5 【マイナンバーカードを作らない場合の実務上の違い】
前提条件:一般的な制度の仕組みにもとづく編集部整理(個別の運用は自治体・保険者により異なる場合がある)1/2
出所:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問」などを基にLIMO編集部作成
証明書の取得
- カードがある場合:コンビニで取得可能
- カードが無い場合:市区町村窓口での申請が必要
確定申告
- カードがある場合:e-Taxを自宅で完結しやすい
- カードが無い場合:ID・パスワード方式や書面申告等
保険証としての利用
- カードがある場合:マイナ保険証(事前の申請なしで高額医療費の限度額超過分の立て替えが不要)
- カードが無い場合:資格確認書(「限度額適用認定証」を事前申請・併せて提示しなければ限度額超過分が後日精算となる)
4. 【編集者の視点】
「作らない方がいい」という主張を聞くとき、まず確認したいのは、その理由が「不安」なのか「実際に困る不便さ」なのかという点です。情報漏洩への不安は心理的なハードルとして理解できますが、この記事で見てきたように、カード自体に詳細な個人情報が集約されているわけではありません。
一方、コンビニ交付や確定申告のような具体的な利便性を失うという点は、「不安」ではなく実際のコストです。この2つを混同せず、自分にとって本当に重要なのはどちらなのかを整理して考えることが、噂に流されない判断につながります。
「廃止される」という不確かな噂を理由に判断するのではなく、実際に何が便利で、何が不便なのかという事実ベースで、自分の生活に必要かどうかを考えることをおすすめします。
5. 次期カードの検討状況をどう受け止めればよいか
デジタル庁のタスクフォース資料では、次期個人番号カードについて、いくつかの検討事項が挙げられています。
5.1 暗証番号の簡素化などが検討段階にある
資料では、現行カードで複数ある暗証番号(APごとの暗証番号)を統合し、種類を減らす方向性や、有効期間の見直しなどが検討事項として挙げられています。ただし、これらはあくまで「検討」段階の内容であり、確定した制度として実施時期や詳細が公表されているものではない点に注意が必要です。
現行カードを持っている人が、この検討状況を理由に何か特別な手続きを今すぐ行う必要はありません。今後、具体的な制度変更が確定した段階で、あらためて公式な案内が出されるのが通常の流れです。噂の段階の情報に振り回されて、慌てて判断する必要はありません。
「検討中」の情報と「決定した」情報は、似ているようでまったく違います。ニュースを見るときは、その情報が今どの段階にあるのかを意識するだけで、不要な不安をかなり減らせると思います。一次資料に「案」「検討」という言葉があるかどうかを確認する癖は、この分野に限らず役立ちます。
6. それでも取得をためらう場合、どんな選択肢があるか
不安が拭えず、それでもすぐには取得を決めきれないという人には、無理に急がないという選択肢もあります。
6.1 資格確認書という代替手段がある以上、急ぐ必要はない
健康保険証の利用に関しては、資格確認書という代替手段が用意されているため、マイナンバーカードを取得していないことを理由に保険診療が受けられなくなるわけではありません。取得を急かされているように感じる必要はなく、自分が納得できるタイミングで判断すれば十分です。
一方で、コンビニ交付や確定申告のe-Tax利用など、実務上のメリットを享受したいと考えるタイミングが来たら、そのときに改めて取得を検討するという進め方もできます。「今すぐ決めなければならない」という思い込みを手放すことも、冷静な判断には役立ちます。
7. 「作る」「作らない」を判断する前に確認しておきたいこと
ここまでの内容を踏まえ、実際に判断する前に確認しておきたいポイントを整理します。
7.1 自分にとって必要な場面があるかどうかで考える
「作らない方がいい」という一般論は、すべての人に等しく当てはまるものではありません。確定申告の機会が多い人、コンビニでの証明書取得を頻繁に利用したい人にとっては、カードを持つことの実務上のメリットは大きくなります。逆に、そうした場面がほとんど無い人にとっては、急いで取得する理由も乏しいといえます。
「みんなが作っているから」「作らない方がいいと聞いたから」という周囲の声だけで判断するのではなく、自分の生活の中でどの場面が該当するかを具体的に思い浮かべてから決めるのが、後悔の少ない判断につながります。
7.2 家族分をまとめて考える視点も必要
高齢の親や子どもの分も含めて、世帯としてどう扱うかを考える場合は、資格確認書の交付が家族分もまとめて同じ窓口で確認できる点も踏まえて判断すると、手続きの手間を見積もりやすくなります。
7.3 【判断の軸を整理する】
実務上のメリットを重視する場合
- 考え方の例:確定申告・コンビニ交付を頻繁に使う
- 関連する事実:e-Tax・証明書交付の利便性
不安の解消を重視する場合
- 考え方の例:情報漏洩・紛失リスクを重視する
- 関連する事実:ICチップにプライバシー性の高い詳細情報は記録されない仕組み
8. 【編集者の視点】
「作らない方がいい」という言葉を聞くたびに感じるのは、その言葉の裏にある理由が人によってまったく違うということです。情報漏洩が怖いという人もいれば、単に手続きが面倒だという人もいます。
理由が違えば、必要な情報も変わってきます。情報漏洩が不安な人には、カードの仕組みそのものを知ってもらうことが有効ですし、手続きが面倒だという人には、資格確認書のような代替手段があることを知ってもらう方が判断の助けになります。
「作らない方がいい」という結論だけを鵜呑みにするのではなく、自分がなぜそう思うのか、その理由を一段掘り下げてみることをおすすめします。理由が分かれば、必要な情報を探しやすくなります。
9. 「作らない」を選んだ後、気持ちが変わったらどうするか
一度「作らない」と決めても、状況が変わって考えを改めることは珍しくありません。この点についても確認しておきます。
9.1 取得は後からでも申請できる
マイナンバーカードの取得は、今すぐ決める必要がある一回限りの選択ではありません。今は必要性を感じなくても、確定申告の機会が増えた、コンビニ交付を使いたい場面が出てきたなど、状況が変われば、その時点で改めて申請することができます。
「今作らないと二度とチャンスが無い」という切迫感を持つ必要はなく、必要になったタイミングで検討し直せばよいテーマだと捉えておくと、余計な焦りを持たずに判断できます。
9.2 証明書交付・e-Taxも同様に、必要になった時点で始められる
コンビニでの証明書交付や確定申告のe-Taxについても、今使っていないからといって将来ずっと使えないわけではありません。マイナンバーカードを取得し、必要な設定(マイナポータルとの連携や電子証明書の登録)を済ませれば、その時点からすぐに利用を始められます。
「今は使わないから不要」と判断した場合でも、将来ライフイベント(転職・確定申告が必要になる副業の開始など)で必要性が出てきたら、その都度取得を検討し直せばよいというのが、この記事を通じて伝えたい基本的な考え方です。
9.3 資格確認書からマイナ保険証への切り替えも後から可能
健康保険証の利用についても、最初は資格確認書を選び、後からマイナ保険証としての利用登録に切り替えるという順番も可能です。利用登録は解除もできる仕組みになっているため、一方向にしか進めない選択ではありません。
逆に、いったんマイナ保険証として登録した後、やはり資格確認書に戻したいと考えた場合も、保険者への申請によって切り替えられます。「一度決めたら固定される」という思い込みを持たず、状況に応じて選び直せる制度だと理解しておくことが大切です。
10. 高齢の親のカードをどう考えるか、代理での相談で気をつけたいこと
「作らない方がいい」という話は、本人だけでなく、高齢の親のカードをどうするか相談されて悩む家族からもよく聞かれます。
10.1 「作った方がいい」と説得する前に不安を聞く
家族としては「取得した方が便利だから」とつい説得したくなりますが、まず本人が何を不安に思っているのかを聞くところから始める方が、結果的に話がまとまりやすくなります。理由を聞かないまま利便性だけを説明しても、不安が解消されなければ本人の気持ちは動きません。
10.2 本人の意思を確認しながら進める
高齢の親のマイナンバーカード取得や保険証利用登録について、家族が代わりに判断してしまいたくなる場面もありますが、基本的には本人の意思にもとづいて進める必要があります。本人が不安を感じている場合は、その不安の中身(情報漏洩なのか、手続きの煩雑さなのか)を具体的に聞き取ることが、家族としてできる最初のサポートになります。
資格確認書という代替手段があるおかげで、親が取得をためらっていても、医療を受けられなくなるという最悪の事態は避けられます。この安心材料を伝えたうえで、本人のペースで判断してもらうのがよいでしょう。
10.3 複数の子どもで分担して手続きする場合の注意
兄弟姉妹で分担して親の手続きを進める場合、誰がどこまで確認済みかが共有されていないと、同じ内容を二重に問い合わせてしまったり、逆に誰も確認しないまま放置してしまったりすることがあります。家族間で「資格確認書の状況を確認したか」「取得の意向を本人に聞いたか」を簡単にでも共有しておくと、手続きの抜け漏れを防げます。
10.4 認知機能の低下がある場合の手続き
本人の判断が難しい状況にある場合、成年後見制度の利用など、別の手続きが必要になる場面もあります。この点は個別の事情によって対応が異なるため、判断に迷う場合は市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談するのが確実です。
11. まとめ
- マイナンバーカードそのものが廃止される事実は確認されておらず、「廃止」の噂の多くは次期カードの仕様検討が誤って伝わったものと考えられます。
- 「作らない方がいい」という主張は、情報漏洩への不安と、コンビニ交付・確定申告等の実務上の不便さを分けて考える必要があります。
- 健康保険証としての利用は、資格確認書という代替手段があるため、カードが無くても保険診療は受けられます。
- 次期カードの仕様変更は検討段階であり、確定した制度として公表されているものではありません。
「廃止される」「作らない方がいい」という噂は、不確かな情報のまま独り歩きしやすいテーマです。噂の根拠が検討段階の話なのか、確定した制度変更なのかを見分けることが、無用な不安に振り回されないための第一歩になります。
取得するかどうかは、コンビニ交付や確定申告といった実務上のメリットと、自分が抱える不安とを具体的に比較したうえで、時間をかけて判断することをおすすめします。
※本記事は、編集部が厚生労働省・デジタル庁が公表する公式の最新資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
12. よくある質問
12.1 Q. マイナンバーカードは2026年に廃止されるのか
A. マイナンバーカードそのものが廃止される事実は確認されていません。「廃止」の噂は、次期カードへの仕様刷新の検討状況が誤って伝わったものと考えられます。
12.2 Q. マイナンバーカードを作らないと罰則があるのか
A. ありません。取得は申請にもとづくものであり、取得しないことを理由に罰則が科される制度ではありません。
12.3 Q. カードを作らないと健康保険が使えなくなるのか
A. なりません。資格確認書という代替手段があり、申請不要・無償で交付されます。
12.4 Q. カードを作らないと具体的にどんな不便があるのか
A. コンビニでの証明書取得ができない、確定申告のe-Taxを自宅で完結しづらいといった実務上の不便が生じます。健康保険証は資格確認書で対応できます。
12.5 Q. 次期個人番号カードはいつから導入されるのか
A. デジタル庁のタスクフォースで仕様の検討が進められていますが、この記事の執筆時点では確定した実施時期などは公表されていません。今後の公式発表を確認してください。
12.6 Q. すでにカードを持っている場合、次期カードへの切り替えは急いだ方がいいか
A. 次期カードの仕様はまだ検討段階のため、現時点で特別な対応をする必要はありません。制度変更が確定すれば、あらためて公式な案内が出されます。
参考資料
LIMO編集部
