半導体大手のルネサス エレクトロニクスが発表した2019年度第2四半期(4~6月)半導体売上高予想は、1815億~1895億円(ミッドポイントで前四半期比26%増/前年同期比3%減)を見込む。3月末に米IDT(Integrated Device Technology)社の買収を完了し、同社分の業績が連結化されたことで、大幅な前四半期比での増収となるが、IDTを除く実質的な成長率は前四半期比で9%増、前年同期比で10%台後半の減少となる見込み。

FA中心にまだ余剰感も市況回復の兆し

 前年同期との比較では、10%台後半の減少分のうち、半分弱程度が実需の減少、半分強が在庫調整の影響によるものだという。ただ、前四半期比では増収となる見通しで、ここ数四半期続いていた減収トレンドには歯止めがかかる見通し。4~6月期の粗利益率は43.5%(前四半期比4.2pt増/前年同期比1.4pt減)、営業利益率は9.5%(同4.7pt増/同6.8pt減)を予想する。

 在庫問題については、IDTを除く自社在庫は自社工場、ファンドリー分ともに前四半期末に比べて減少した。さらに販売代理店・特約店を中心とする流通在庫についても減少した。

 柴田英利CFOによれば、FA(ファクトリーオートメーション)を中心に、まだ在庫の余剰感はあるものの、それ以外の用途はほぼ調整が終息、車載など一部用途では在庫を積み増す動きも出てきているとしており、以前に比べて市況回復の兆しが見えてきているとした。

期末受注残は16%増加

 実際に期末の受注残はIDT分を除いても、前四半期末に比べて16%増加している。これは17年10~12月期とほぼ同じ水準であるとしており、18年の水準を上回っている。

 足元の需要環境について、「中国市場向けに日系自動車メーカーからの受注が3月から急速に回復している」、「中国エアコン市場も在庫問題が解消され、現在は部品取り込みの意欲は旺盛だ」(ルネサスの特約店の1社であるルネサスイーストン)と、市況好転の兆しが見えてきている。

 ただ、同社は米中関係の悪化など、依然としてマクロ環境に不透明さが残るとして、上期中に予定していた中期計画の公表を先送りした。開示時期については「将来について、もう少し落ち着いたビューが持てる時期が適切」(柴田CFO)と明言を避けた。

工場停止期間は大幅短縮

 受注環境が若干改善してきたことで、最大2カ月と見込んでいた工場の生産停止についても、当初計画から大幅に短縮される見通しだ。5月の工場停止期間も、実際に計画かつ実行しているのは、計画比で3~4割の水準の10日間程度になる見込み。8月の停止期間についても現在検討中としながらも、「相当程度短縮できる」(同氏)という。

 当初はすべての前工程工場で生産停止が予定されていたが、一部工場はそのまま操業を続けているところもある。パワー・ディスクリートを中心に自社在庫に調整の余地があり、6インチ、8インチのなかでも、パワー製品を中心に生産を落としているという。一方、マイコンはほぼ生産を維持している状況。

 前工程稼働率(ウエハー投入ベース)は、1~3月期に全社ベースで70%弱とすべての口径サイズで前四半期比上昇した。5月の一時生産停止に伴う作り貯めを行うため、3月から投入量が一時的に増えている。ただ、4~6月期については、工場停止の影響で稼働率は下がる見通しで、6割前後が想定される。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳