2024年1月19日、厚生労働省より2024年度の年金額引き上げが発表されました。

厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は23万483円(+6001円)、国民年金の満額は6万8000円(+1750円)と、前年度比2.7%の増額となります。

しかし、物価上昇率には追いついていないため、実質的には目減りとなると捉えられているようです。それでは、リタイヤ世帯が増える「60歳代」のリアルなお金事情はどうなっているのでしょうか。

今回は60歳代・ひとり世帯の貯蓄額と、現代シニアの厚生年金と国民年金の平均月額、また2024年度の年金額例をみていきます。

1. 【60歳代・ひとり世帯】貯蓄100万円未満は何パーセント?

60歳代・ひとり世帯で「貯蓄100万円未満」の人はどれくらいいるのでしょうか。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」より、60歳代・ひとり世帯の貯蓄事情を確認します(金融資産を保有していない世帯を含む)。

1.1 【60歳代・ひとり世帯】貯蓄100万円未満の割合

  • 8.5%

1.2 【60歳代・ひとり世帯】平均貯蓄額と中央値

  • 平均:1468万円
  • 中央値:210万円

貯蓄100万円未満は1割未満でした。ただし、金融資産非保有世帯(貯蓄ゼロ)を含むと、41.8%にものぼります。

また、平均貯蓄額と中央値の開きも気になるところです。

昨今の物価高などを踏まえると、60歳代ひとり世帯の貯蓄事情は厳しいといえるでしょう。

2. 【厚生年金と国民年金】年齢別・60歳代の平均受給月額はいくら?

では、現代の60代は年金は月いくら受給しているのでしょうか。

厚生労働省から公表された「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、年齢別の平均年金月額を確認しましょう。

なお、以下の厚生年金はすべて国民年金部分を含みます。

2.1 厚生年金の平均月額(60歳代:60歳~69歳)

60歳代の厚生年金額

60歳代の厚生年金額

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 60歳:厚生年金9万4853円
  • 61歳:厚生年金9万1675円
  • 62歳:厚生年金6万1942円
  • 63歳:厚生年金6万4514円
  • 64歳:厚生年金7万9536円
  • 65歳:厚生年金14万3504円
  • 66歳:厚生年金14万6891円
  • 67歳:厚生年金14万5757円
  • 68歳:厚生年金14万3898円
  • 69歳:厚生年金14万1881円

2.2 厚生年金の平均年金月額

  • 〈全体〉平均年金月額:14万3973円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万3875円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万4878円

※国民年金部分を含む

一般的な年金受給開始年齢である65歳以降をみると、年齢を重ねるにつれ平均月額が上がる傾向があります。

ただし、厚生年金は収入に応じた保険料を支払うため(上限あり)、個人差が大きいのが特徴といえるでしょう。

2.3 国民年金の平均月額(60歳代:60歳~69歳)

60歳代の国民年金額

60歳代の国民年金額

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 60歳:国民年金4万2616円
  • 61歳:国民年金4万420円
  • 62歳:国民年金4万2513円
  • 63歳:国民年金4万3711円
  • 64歳:国民年金4万4352円
  • 65歳:国民年金5万8070円
  • 66歳:国民年金5万8012円
  • 67歳:国民年金5万7924円
  • 68歳:国民年金5万7722円
  • 69歳:国民年金5万7515円

2.4 国民年金(老齢基礎年金)平均年金月額

  • 〈全体〉平均年金月額:5万6316円
  • 〈男性〉平均年金月額:5万8798円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万4426円

国民年金は男女ともに4~5万円となっており、全体の平均から大きく乖離していないとわかります。

現役時代の働き方が反映される年金の受給額は、個人差が出るもの。しかし、働くシニアが増え続ける現在、同世代の平均を一つの指標にするのもよいかもしれません。

3. 年金に頼らない老後計画を

これまで60歳代・ひとり世帯の「貯蓄100万円未満の割合」と年金月額を確認してきました。

少子高齢化の現代では、今後年金額が下がる可能性もあります。

これを機に、預貯金や資産運用、仕事による収入など、自身に合った老後対策について考えてみてはいかがでしょうか。

3.1 【ご参考】60歳代・ひとり世帯の貯蓄額一覧表(金融資産を保有していない世帯を含む)

  • 金融資産非保有:33.3%
  • 100万円未満:8.5%
  • 100~200万円未満:4.7%
  • 200~300万円未満:2.8%
  • 300~400万円未満:4.3%
  • 400~500万円未満:2.4%
  • 500~700万円未満:3.5%
  • 700~1000万円未満:2.8%
  • 1000~1500万円未満:6.6%
  • 1500~2000万円未満:4.5%
  • 2000~3000万円未満:8.0%
  • 3000万円以上:15.1%

参考資料

荒井 麻友子