3. 住宅ローン「繰り上げ返済」のメリット

住宅ローンの繰り上げ返済をするべきかを適切に判断するには、メリット・デメリットの両方を把握することが重要です。

まずはメリットから見てみましょう。

住宅ローン「繰り上げ返済」のメリット

LIMO編集部作成

3.1 利息が軽減できる

住宅ローンの繰り上げ返済を行うと、返済期間短縮型・返済額軽減型いずれの場合も返済元金を減らすことができます。

減らした元金分の利息は支払う必要がないため、利息の節約につながります。

利息の軽減効果は繰り上げ返済のタイミングが早ければ早いほど高くなります。

より多くの利息を削減したいという方は繰り上げ返済を先送りせず、できるだけ早いうちに検討するとよいでしょう。

3.2 ライフイベントに合わせた資金準備がしやすくなる

返済額軽減型で繰り上げ返済を行うことにより、月々の返済額を軽減することができます。

例えば、子どもが小さいうちに繰り上げ返済を行い、教育費の負担が大きくなる時期までに返済額の負担を減らしておけば、ライフイベントに合わせた資金準備がしやすくなるでしょう。

また老後の生活を見据えた資産形成がしたいときは、返済期間短縮型で繰り上げ返済を行うと住宅ローンの完済時期を早めることが可能です。

住宅ローンをできるだけ早く完済し、それ以降は老後資金の準備に集中して取り組むのも1つの方法です。

4. 住宅ローン「繰り上げ返済」のデメリット

では次に、デメリットや注意点について確認しておきましょう。

住宅ローン「繰り上げ返済」のデメリット

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4.1 繰り上げ返済の実行後は取り消しできない

一旦住宅ローンの繰り上げ返済を実行すると、あとから取り消しすることはできません。

現在の資産や家計の状況、今後のライフプランを踏まえたうえで、慎重に検討しましょう。

4.2 金利が低く、利息軽減の効果が薄い

先述したとおり、住宅ローンは、ほかのローンに比べると金利が低いため、繰り上げ返済時に得られる利息軽減効果も小さくなってしまいます。

キャッシングやマイカーローンなど、住宅ローン以外の借入がある方は、金利の高いものから優先的に返済したほうがよいでしょう。

4.3 住宅ローン控除額が減額になる可能性がある

住宅ローン控除額の計算方法は、以下のとおりです。

年末時点の住宅ローン残高 × 0.7%

つまり、住宅ローンの金利が0.7%より低い場合は、繰り上げ返済を行わず住宅ローン控除を受けたほうが得といえます。

また、返済期間短縮型の繰り上げ返済を行う際は、トータルの借入期間が10年を切ってしまうと住宅ローン控除の対象外になってしまうため、注意が必要です。

4.4 団信の保険金額が減ってしまう

住宅ローンを組む際は、団信(団体信用生命保険)に加入します。

団信は、住宅ローンの債務者が返済中に死亡したり高度障害状態になったりしたときに、ローン残高を保険金で完済する仕組みの保険商品です。

つまり、住宅ローンの残高が残っているほど、万一の際に団信から受け取れる保険金額は多くなります。

万が一、住宅ローンを繰り上げ返済した直後に債務者が亡くなっても、繰り上げ返済に充てたお金は返ってきません。

そのため、住宅ローンの繰り上げ返済を行い団信の保険金額を減らすよりは、資産をそのまま蓄えておくほうがよいという考え方も場合によってはできるでしょう。

4.5 急な出費に対して資金不足となる可能性がある

住宅ローンの繰り上げ返済を行う際は、少なくとも急な出費に対応できるだけの資産(=緊急予備資金)を確保しておくことが大切です。

繰り上げ返済をしたために資金不足となり、新たに借入をすることになっては、かえって利息がかさんでしまいますので、余裕のある資金計画を心がけましょう。

5. まとめにかえて

以上メリット・デメリットを踏まえ、現状の収支や今後のライフイベントを把握したうえでどの選択肢が自分たちには合っているのか、改めて慎重に検討してみましょう。

参考資料

一般社団法人 全国銀行協会「繰上返済は有利?手数料は?住宅ローンの繰上返済」

笹村 夏来