老後の収入額を把握する

それでは40歳代、50歳代の方が、将来に向けて準備しておかなければならないことを考えてみましょう。

それぞれの家庭状況によって要件は変わりますが、お子さんがいらっしゃり、住宅ローンの支払いがあるということを前提として、準備する手段を考えてみます。

なお、前提として毎年送られてくる「ねんきん定期便」は確認しましょう。

50歳代の方は、今の働き方や給与額を60歳まで続けた場合の年金額が記載されています(ハガキ形式)。

出所:日本年金機構「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和5年度送付分)

この中の「3.老齢年金の種類と見込額(年額)」の欄により、65歳からどんな年金がいくらもらえるかと、(1)と(2)の合計が何円になっているかも確認しましょう。

50歳未満の方は、今まで払い込んできた保険料に応じた年金額が記載されています(ハガキ形式)。

出所:日本年金機構「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和5年度送付分)

やはり多いとは言えない金額だと思います。

では、これから老後についての対策はどう考えればいいのでしょうか。

老後対策は何をするべきか

それぞれの家庭の収入により増減するため、準備する金額については今回記載しません。ここでは、これから準備できる「手段」を考えましょう。

1. 収入を増やす

大変かと思いますが、働くことで家庭の収入を増やすことが一番早いといえます。

実収入が増えることも大きいのですが、社会保険料を支払っている場合、将来の厚生年金を増やすことができます。

体調と気持ちの問題もあるかと思いますが、働くことができる場合、将来の不安が少しでも減ります。

65歳で年金をもらうようになって「お金が足りない」となり、仕事を探すよりは、負担と不安が少なくなるでしょう。

2. 支出を減らす

収入を増やすことと同時にしておくのは、支出を減らすことです。

収入を増やすことが難しくても、固定費を減らすことは比較的簡単にできるでしょう。

既に実行済みかもしれませんが、保険の見直し、使う頻度の少ないサブスクの解約、公共料金の契約変更などは、一度手続きをすることで、大きく支出を減らすことができます。

リスクもなく支出を減らせるのは、大きなことです。無駄なものがあれば、削減するだけで効果があります。

3. 運用する(企業型DC、iDeCo)

運用する資金と老後までの期間があれば、運用することも検討してみましょう。

リスクを取りたくないのであれば運用はお勧めしませんが、預貯金では資金が増えないため、ある程度リスクをとって運用する考え方もあります。

その中でも「老後のために」という明確な理由があるなら、勤務先に企業型DCがあれば利用し、さらに「マッチング拠出」という制度があれば、従業員が追加で拠出することができます。

金額は少ないかもしれませんが、できることは早く準備すると良いでしょう。

企業型DCがなくても、多くの方が利用できる確定拠出年金「iDeCo」は、自分で老後の年金を作ることができます。

元本の増減がありますが、毎月定期的に積み立てをすることができますので、リスクを抑えながら運用が可能です。

自分で商品選択をすることができ、さらに所得控除があるため、所得税や住民税の節税をすることができます。

4. 運用する(NISA)

iDeCoと違って、所得税や住民税の節税メリットはありませんが、NISAでは運用しても運用益が非課税になるメリットがあります。

2023年までは、一般NISAかつみたてNISAの一方しか選択できませんが、2024年からは制度が変わり、成長投資枠とつみたて投資枠と名称が変わる上、どちらも利用することができます。

また、非課税の保有期間が従来の一般NISAは5年、つみたてNISAは20年だったものが、無期限化となります。

従来の期間内で運用益がマイナスになって、非課税のメリットがなかったということも無くなります。

運用益がプラスの時に現金化すればメリットを享受できます。

もしも老後の前に資金が必要になった場合でも、途中で引き出すことができるメリットもあります。

5. その他(保険など)

リスクを取りたくない方はほとんど増えませんが、預貯金で貯めることもできますし、個人年金や外貨建ての保険を利用することで、将来の資金を準備することができます。

老後に向けて貯蓄・収入・支出を考える

老後になって「老後資金が足りない」と気づくのを防ぐため、今準備できることを少しでも早く準備しましょう。

私も多くの方の老後や年金の相談を受けていますが、貯蓄があるから大丈夫と言う方もいらっしゃいます。しかし、年金額などの収入、毎月の支出などの把握も大事です。

実は支出管理ができていない方も多いので、貯蓄額と収入に加え、支出額もしっかりと考えた上で、一度ライフプラン表を作成してみると実感がわくと思います。

参考資料

香月 和政