働きながら(厚生年金に加入しながら)受け取る年金のことを、在職老齢年金と言います。

収入や年金額によっては、年金が減額されます。

在職老齢年金の仕組みは、2022年4月に改定されました。

この記事では、仕事をしてると年金が減額される在職老齢年金の仕組みについて解説します。

老後の働き方を考えるときの参考にしてください。

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1. 在職老齢年金とは

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在職老齢年金とは、老齢厚生年金に加入して仕事をしている人が老齢厚生年金を受け取るとき、収入や年金額によって老齢厚生年金の一部または全額が支給停止になる仕組みのことです。

自営業者など厚生年金に加入せずに仕事を続けている人は、在職老齢年金の適用を受けません。

また、収入や年金の額があまり多くない場合も支給停止はされません。

1.1 基本月額と総報酬月額相当額が48万円を超えると支給停止される

在職老齢年金によって老齢厚生年金が支給停止(一部または全額)されるのは、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計金額が48万円を超える場合です。

基本月額とは、「老齢厚生年金の報酬比例部分(年額)」の1か月当たりの金額です。

報酬比例部分は老齢厚生年金のメインとなる年金で、加算部分を除く金額になります。

総報酬月額相当額とは、「その月の標準報酬月額(※)」と「直近1年の賞与を12か月で割った金額」の合計です。

年収を12か月で割って概算できます。

※勤務先から支給される1か月の報酬を32の等級に区分した金額のことです。

厚生年金保険料や健康保険料、老齢厚生年金の報酬比例部分の計算基礎となる金額です。

1.2 基本月額の確認方法

基本月額は、老齢厚生年金の報酬比例部分(年額)の1か月当たりの金額です。

日本年金機構から送付される次の通知などで確認できます。

  • 年金受給者:年金額決定通知書・支給額変更通知書など
  • 年金を受給していない人:ねんきん定期便(見込額)

また、年金事務所やねんきんネット(日本年金機構のインターネットサービス)でも確認できます。

1.3 総報酬月額相当額の確認方法

総報酬月額相当額とは、その月の標準報酬月額と直近1年の賞与を12か月で割った金額の合計です。

標準報酬月額は、勤務先から毎年7月以降に交付される「標準報酬月額(標準賞与額)等の通知書」で確認できます。

標準報酬月額は、毎年9月に改定されます。

企業の人事や総務などが計算して日本年金機構に報告するので、勤務先の担当者に確認するのが確実です。

賞与については、年間150万円を超える部分は対象外となるので注意が必要です。

2. 在職老齢年金による支給停止額

次に、在職老齢年金によっていくら年金が減額(支給停止)されるかについて解説します。

2.1 支給停止額の計算方法

出所:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

在職老齢年金によって支給停止される金額は、次の通り計算します。

  • 支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)÷2

基本月額と総報酬月額相当額の合計額が48万円を超えた場合、超過分の半分が支給停止となり、老齢厚生年金が減額されます。

支給停止額が基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)を超えると、老齢厚生年金は全額支給停止です。

3. 在職老齢年金で年金が減額されても総収入はアップする

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収入や年金の額が多い人は、在職老齢年金によって老齢厚生年金が減額されます。

減額されないように報酬を抑えるという人もいますが、可能な限り仕事をするという選択肢もあります。

支給停止されてもその月の総収入(給与と年金の合計額)は、給与が多いほど高くなります。

例えば、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が50万円の場合、48万円を超過した分の半分が支給停止され年金額は1万円減りますが、給与は2万円アップします。

また、給与が高いほど厚生年金保険料は高くなりますが、その分将来の年金額が増えるというメリットもあります。

人生100年時代と言われるようになった現在、長生きした場合に備えて在職中の総収入を増やし年金額をアップさせるのも選択肢の1つです。

4. 在職老齢年金のまとめ

在職老齢年金とは、老齢厚生年金に加入して仕事をしている人が老齢厚生年金を受け取るとき、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止になる仕組みのことです。

「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計金額が48万円を超える場合、超過分の半分が支給停止となり、老齢厚生年金が減額されます。

在職老齢年金によって支給停止を受ける場合、収入を抑えて支給停止を避けるか、支給停止を気にせずにしっかりと稼ぐかの選択が必要です。

長生きしたときの老後生活費にも考慮して、自分にあった働き方を考えましょう。

参考資料

西岡 秀泰