「人生100年時代」といわれるように、日本人の平均寿命は延びています。厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」によると、平均寿命は男性81.47歳、女性は87.57歳。

長寿自体は喜ばしいことですが、必要となる老後資金も多くなります。多くの世帯のセカンドライフを支えるメインの柱となるのは、公的年金でしょう。

しかし、長寿時代では年金以外の蓄えが、これまで以上に重要視されていくことが考えられますね。

そこで今回は、60歳代前後の貯蓄事情に焦点をあて、長生きの時代を乗り切るための「お金事情」について考察します。

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1. 50・60・70歳代「二人以上世帯」の貯蓄

まずは60歳代とその前後の世代の貯蓄額について、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和4年)」を参考に貯蓄額を確認しましょう。

1.1 50・60・70歳代「二人以上世帯の金融資産保有額」

※金融資産非保有世帯も含む

50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額

出所:金融広報中央委員会「令和4年(2022年)家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」をもとにLIMO編集部作成

60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額

出所:金融広報中央委員会「令和4年(2022年)家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」をもとにLIMO編集部作成

70歳代・二人以上世帯の金融資産保有額

出所:金融広報中央委員会「令和4年(2022年)家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」をもとにLIMO編集部作成

  • 50歳代…平均1253万円:中央値350万円
  • 60歳代…平均1819万円:中央値700万円
  • 70歳代…平均1905万円:中央値800万円

50歳代から70歳代の「二人以上世帯」の貯蓄額は、平均・中央値ともに年を重ねるとともに上がっていきます。

還暦60歳代以降は、中央値は1000万円を目指して上昇し、また、平均は1000万円台後半を維持できています。

2. 50・60・70歳代「二人以上世帯の負債額」平均と中央値

ここからは、負債についても見ていきます。

次は、世代ごとの「借入金の有無」と「借入金残高」を追っていきます。

以下で記載する「借入金残高」は、借入金有無の回答があった世帯に関する平均と中央値です。また、カッコ内の割合は「借入金がある」と回答した世帯が全体に占める割合を指します。

2.1 50・60・70歳代「二人以上世帯の借入金残高」

  • 50歳代(25.7%) 平均1150万円:中央値900万円
  • 60歳代(16.3%) 平均895万円:中央値500万円
  • 70歳代(10.1%) 平均979万円:中央値400万円

次では、借入金額の回答があった世帯について、住宅ローン残高も確認します。

2.2 50・60・70歳代「住宅ローン残高」平均と中央値

  • 50歳代 平均995万円:中央値800万円
  • 60歳代 平均766万円:中央値225万円
  • 70歳代 平均463万円:中央値100万円

いずれの世代も、借入金のほとんどが住宅ローンで占められていると考えられますね。

50歳代といえば、年収のピークを迎えるサラリーマンも多い世代ですが、子育て費用や住居費など、止まらぬ固定支出に頭を抱える世帯は珍しくないでしょう。

60歳代を過ぎると、借入金残高、住宅ローン残高ともに中央値はぐっと減っています。貯蓄の成果をようやく実感できる世帯が増える時期もこの頃かもしれませんね。

3.「老後資金」いつから、どう準備する?

今回は、還暦60歳代前後の貯蓄と負債額を俯瞰してきました。

世代によってバラつきがあるものの、教育費や住宅ローンの支払いが予想される50歳代までは、思うように貯蓄ができていない世帯も多いことが推測されます。

住宅ローンの返済や子育て費用の負担が終われば、貯蓄のペースが上がる世帯も多いでしょう。とはいえ50歳代以降の就業は、健康との相談が必要になるケースも増えます。

人生の三大資金の一つである「老後資金」は、働き盛りの若い世代にとってはピンと来ないかもしれません。とはいえ、ときに数千万円とも言えるまとまったお金は、一朝一夕で準備できるものではないでしょう。

若いころから遠い将来を見据えた「資産づくり」に目を向けていけるとよいですね。

参考資料

徳原 龍裕