働くシニアは年々増加傾向にあります。
老後資金を考えると働き続けるメリットは多いものの、給与と年金額によっては年金がカットされる可能性があります。
働く世代にとって、在職老齢年金制度はしっかり理解しておきたい制度です。
金額の目安やシニアの就業状況について解説します。
【注目記事】【老齢年金の一覧表】厚生年金・国民年金「60歳~80歳代」平均的な年金月額はいくら?
1. 在職老齢年金とは
在職老齢年金とは60歳以降に厚生年金保険に加入し、働きながら受ける老齢厚生年金のことです。
在職しながら老齢年金を受けることになれば、一人でダブルインカムを得ることになります。
生活に余裕が出ますが、収入金額と厚生年金の支給額が合計月48万円を超えると超過分が調整される仕組みになっています。
支給停止額の計算方法は以下の通りです。
1.1 【在職老齢年金の計算式】
支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)×1/2
基本月額とは老齢厚生年金の1ヶ月分で、総報酬月額相当額とは賞与を含めた収入を12で割ったものです。
例えば基本月額が15万円、総報酬月額相当額が45万円の場合、(15万円+45万円-48万円)×1/2となり、支給停止額は6万円となります。
在職老齢年金は上記計算例のように、収入が多い人が老齢厚生年金を受け取ると、年金支給額がカットされる制度なのです。
2. 総報酬月額相当額には交通費も含まれる?
総報酬月額相当額は、交通費も含めて計算されます。
そのため、同じ給料でも遠方の勤務地で交通費として多く支給されている人は注意が必要です。
他にも休日出勤や残業などの割増賃金の見込み金額も、総報酬月額相当額に加算されます。
3. 年金受給者は働かない方がお得?
収入が多い人は、在職老齢年金制度によって年金がカットされてしまうため、働かない方がお得なのでは無いかと考える人もいるでしょう。
確かに、多くの収入を得てしまうと年金がカットされてしまいます。
しかし、働いて得ることができる収入もありますし、厚生年金保険に長く加入し、多くの保険料を支払うことで将来の年金を増やすことができます。
上記の側面から見れば、長く働いて収入を得ることはメリットになるといえるのではないでしょうか。
在職老齢年金制度を気にしすぎて完全に仕事を辞めてしまうと、収入が年金だけになり、大きく減ってしまいます。
そのため、週3勤務などで働き方を調整して、ワークライフバランスを保つことも選択肢のひとつとして検討してみても良いでしょう。
交通費が報酬に含まれる点を考慮し、より自宅に近い職場を選ぶのもひとつです。
また、厚生年金に加入せずに働く場合、在職老齢年金制度で年金がカットされることはありません。
個人事業主やフリーランスとして働く場合は厚生年金に加入する必要はありませんので、在職老齢年金を気にせず働くことが可能です。
いずれにしても、在職老齢年金制度だけでなく自身のライフプランについてどういう選択をするべきか、しっかりと検討すると良いでしょう。
4. 働くシニア世代は増えている
内閣府の令和4年高齢社会白書によると、60歳以上の就業率は年々高くなっています。
就業率が高まっている要因のひとつに、健康寿命と平均寿命の伸びがあると言われています。
男性、女性ともに健康寿命も平均寿命も伸びています。
平均寿命が伸びたことで老後期間が長くなっているので、少しでも長い期間働いて資産が目減りしないようにしておきたいという考えがあるのでしょう。
また、実際に健康なので働くことができるという現状もあります。
また、企業も人手不足で定年延長などでシニア世代を積極活用している事情もあり、60歳を超えても仕事を続ける人が増えています。
今後もシニア世代で働く人は増えていくでしょう。
5. 在職老齢年金制度を理解して検討することが大事
在職老齢年金制度によって働き方を変えたり、仕事を辞めたりする人も多くいます。
一度辞めると復職することは難しいため、しっかりと制度を理解して決めることが重要です。
豊かな老後を過ごすためにも、家族とも話し合って決めるようにしましょう。
参考資料
太田 彩子