筆者の夫は毎朝、同じ朝食を摂ります。メニューはバナナとヨーグルトと牛乳のみ。一緒に住み始めてから筆者が何度も朝食を作ろうとしましたが、「もう何年もずっとこの朝食だから変えなくていい」と言われました。理由について深く聞くと、「忙しい朝に君にご飯を用意してもらうのは申し訳ないから自分で朝食くらい用意しようと思うと、ずっと続けてるこのラクなメニューになっちゃう」とのこと。

また1歳の子どもをワンオペで育てている筆者の友人A子にもまた、「自分を変えたくない夫」がいます。A子の夫は40代前半で中小企業の中間管理職。朝早くから深夜まで忙しく働く平日は仕事モードのスイッチを切らず、土日のどちらかは1日中ジムやランニング、読書など「自分を整える時間」としてめいっぱい使う。せめて土日のもう1日には家事育児を手伝ってくれるかと思いきや、寝ているか仕事の付き合いのゴルフに行くか美容院や買い物などで出かけることが多いそうです。

A子の話によると、A子の旦那さんは結婚前から続けてきた“仕事中心”のライフスタイルを崩してしまうことで、仕事のパフォーマンスが落ちる不安があるとのこと。仕事のパフォーマンスが落ちれば今の収入が難しくなる可能性もあり、結果として家庭生活も上手くいかなくなってしまう。そこは大企業ではない中小企業の、上司と部下の間で板挟みにあっている中間管理職という、会社や立場ならではの悩みなのかもしれません。

変化を恐れる夫の中には、実は家族のことや仕事のことを考えているからこそ家庭にうまくコミットできない葛藤があるようにも感じます。

「夫が家事育児をしない!」と怒るほど見えにくくなることも

筆者の夫もA子の旦那さん同様にとても仕事が忙しく毎日遅くまで働いています。昨年、子どもが産まれたのに家事育児をまったくやってくれないことに対して夫婦げんかをした際に、夫から「他の旦那さんと違って、家にいる時間が短くて申し訳ない。僕としては一生懸命働いて、君たちに経済的に苦労させないようにするのも家事育児を間接的に担っている意識だった。そして僕のその意識を理解してくれているものだと勝手に思っていた」と言われたことがありました。

その言葉を言われた時、世の中にはもしかしたら筆者の夫のような考え方を持っている男性はとても多いのではないかとハッとしました。「夫が家事育児をしない!」という妻の怒りの声が大きすぎるあまり、見えなくなっている夫の考えや夫婦間の意識の違いは確実にあるでしょう。そうしたことに耳を傾けることで、もう少し今の日本の家事育児分担に関する問題が解決する方向に向かうこともあるかもしれません。

富士 みやこ