飲食業界では、パワハラを超える理不尽な扱いが報道されることも少なくありません。記憶に新しいところでは、学生バイトに過酷な労働を強いるために暴力で脅し、包丁で刺すなどの傷害事件が発生していたという「しゃぶしゃぶ温野菜」や、料理長が女性社員に暴言や暴行などのパワハラ行為を行ったという「仙台国際ホテル」などの事例があります※2

このような「事件」として発表されてはいないものの、店によっては特定のスタッフを精神的に痛めつけ、殴る・蹴るなどの暴行に発展するなど、壮絶な人権侵害がおこなわれているケースもあるようです。

こうしたことが起きる現場では、真面目で断ることができない人や自分の意見を伝えることが苦手な人が標的となって、奴隷のように扱われてしまうことが多いようです。また、長時間労働で疲弊した脳や心は正常な判断をすることができず、奴隷のような主従関係を作り上げるメカニズムに貢献しているとも言えるでしょう。

※2『「殺すぞ、お前」「バカ野郎が!」 暴言、殴打、うめき声…逮捕者が出たブラックバイトの壮絶現場』(産経ニュース)、『今度はパワハラ暴行事件… 不祥事続く東武鉄道』(デイリー新潮)

飲食業界で働くスタッフの生の声

次に、出入りが激しいと言われることが多い飲食業界の職場環境や待遇について、スタッフと元スタッフたちの生の声に耳を傾けてみましょう。

■Aさんのケース
「アルバイトで入ったのに、3カ月目にはリーダーに昇格して、バイトやパートが休んだときには呼び出されて働くハメに。やってられないと辞表を出してもなかなか辞めさせてもらえず、結局は我慢して半年ほど働いたが、精神的におかしくなりそうだった」

■Bさんのケース
「ボーナスが寸志…」

■Cさんのケース
「まかないも付くので、1人暮らしの学生がするバイトとしては最高」

■Dさんのケース
「将来は自分の店を出したかったこともあり店長として勤務したが、サービス残業が多すぎる。残業が200時間なんてザラ。もう、辞めたい」

■Eさん(雇われ店長)のケース
「バイトやパートの募集をかけても面接にすら人が来ない。時給は悪くないので早く誰か働きに来てほしい。従業員と2人で年中無休の店を朝から夜中まで開けるのはキツイ。しかも、給料を時給に計算し直してみたら、500円以下だった…」

■Fさんのケース
「よく怒鳴られて辞めるスタッフがいて可哀そうに思うが、とばっちりを食うのが嫌で何も言えない。あれは絶対にパワハラ。スタッフ全員の前で怒鳴りつけたり、恫喝したり…」

■Gさんのケース
「急に休むって言っても、社員の人とか店長が交代してくれるので、Wワークもできるしラク。時給もいいし、まかないもついてるし、夢を追いかけながらしばらくは飲食でバイト頑張ります」

■Hさんのケース
「ランチタイムだけの勤務です。忙しいけど時給も良いので、とくに不満はないです。社員の人たちは、いつも“休みがほしい”とか“サービス残業多すぎ”とか言っているので、絶対に社員にはなりたくないです」

現場の声から考える、飲食業界の問題点