大手ソース会社の1つで、お好み焼き用ソースではトップシェアを誇ると推察されているオタフクソース株式会社のウェブサイトを見ると、国内のお好み焼き屋の店舗数の推移が掲載されています。そのデータを見てみましょう。

ただし、この店舗数の対象は、「お好み焼き・焼きそば・たこ焼き店」となっていますので、お好み焼きを扱っていない店も含まれます。ただ、多くの店は、この3つのうち2つ以上をメニューに掲載していると考えられるため、“お好み焼き屋”の実態を表していると考えられます。なお、これらデータの出所は、総務省統計局が行う「経済センサス 基礎調査」になっています。

全国にあるお好み焼き屋の店舗数は、平成18年:18,739店、平成21年:19,480店、平成24年:17,192店、平成26年:16,551店、平成28年:15,647店となっています(各年末)。毎年調査が行われているわけではないこと、最新のデータが平成28年であることなどを勘案する必要がありますが、平成21年をピークに減少が続いていると見てよさそうです。

直近の店舗数は、ピーク推定の平成21年から約▲20%減です。7年間で▲20%減はかなり厳しい減少ですが、新規開店の店舗が一定数あることを考慮すると、この数字以上の店舗が閉店していると推測できます。外食産業の中では、他の業態以上に厳しいと言えます。

減少の理由は様々あると思われますが、お好み焼き屋は鉄板や空調設備など初期投資が意外に大きく、店舗賃貸料に加えてガス・電気代などランニングコストも高くなります。また、昨今は小麦粉などの原材料価格も大幅に上昇しています。そのため、売上高がパタッと落ちると、こうしたコスト負担が一気に重くなり、店舗継続が難しくなるケースが多いと見られます。

さらに、外食を控える節約志向も続いていることから、一般的には高額でないお好み焼きの売上も苦戦していると考えられます。

人口10,000人当たりの店舗数では広島が圧勝

さて、そのような厳しい状況に置かれたお好み焼き業界ですが、広島県は大健闘しています。広島県もピークから▲9%減(1,767店が1,605店へ)となっていますが、全国平均(▲20%減)や関西地方の大幅減少(大阪府が▲23%減、兵庫県が▲26%減)に比べるとかなり小幅に止まっています。しかも、平成24年比では微増に転じた数少ない都道府県の1つです。

さらに、人口10,000人当たりの店舗数は5.7店と堂々の全国トップを維持しています。ちなみに、第2位の兵庫県が3.2店、第3位の大阪府が3.0店、全国平均は1.2店です。お好み焼きと言うと「大阪 vs. 広島」の熱い論争がありますが、店舗数で見る限りは、野球同様に広島の圧勝のようです。

このように、厳しい環境下でも、広島のソウルフードであるお好み焼きは、その存在感を高めていると言えましょう。なぜでしょうか? それを知るためには、兎にも角にも、広島風お好み焼きを食べてみることです。

実は、意外にも、広島風お好み焼きを食べたことがない人は少なくないようです。もし可能ならば、熱いカープファンがいる広島で食することをおすすめします

葛西 裕一