文部科学省の平成30年度の調査によると、大学・短大進学率は現役が54.8%、浪人を含むと57.9%になっており、いずれも過去最高水準をキープしています。

一方で、奨学金を利用しながら大学に通う人も増えており、中には返済できずに自己破産に陥るケースも増えてきているようです。原因はどんなところにあるのでしょうか。

親や親戚を巻き込んだ自己破産も

現在、奨学金の受給者は約130万人。20年前の奨学金受給者は46万人だったので3倍近く増加しており、学生の2人に1人が何らかの形で奨学金を借りているとされます。

また、奨学金に絡む自己破産者は、2016年までの5年間で1万5338人。内訳としては本人が8108人、保証人が7230人で、本人のみならず、親や親戚までも巻き込んで自己破産してしまうケースも少なくないと言います。

さらに、奨学金を借りている女性が結婚後、子育て期間などに収入が減り奨学金を延滞してしまうケースでは、夫にも影響が出てきます。このように奨学金の問題は、誰にとっても「他人事」とは言い切れない問題なのです。

増え続ける学費と非正規雇用の拡大が背景に

文科省の「国公私立大学の授業料等の推移」によると、1980年度の度国立大学の年間平均授業料は18万円でしたが、2010年度は約53万円と、2倍以上になっているという現実があります。それに加え、奨学金を返済ができなくなってしまう原因としては「非正規雇用の広がり」が大きいと言われています。

また、日本は「大卒至上主義」の傾向があり、多くの会社で大卒が望まれているため、大学進学率も継続的に上がってきました。しかし、大卒が当たり前になったがために、「正規雇用・年功序列制度による給与の上昇」「定年までの安定した収入の約束」などの恩恵をすべての大卒者が受けられなくなっている側面もあります。

「借金」をしてでもその勉強がしたいのか?

奨学金には、返済の必要のない給付型と将来返済しなければいけない貸与型があります。貸与型の場合、大学卒業後から返済が始まりますが、たとえば奨学金を240万円借りたとして、第一種奨学金(利息なし)でも、毎月1万円の返済なら20年、2万円なら10年返し続けることになります。

こうして返済していく間、手取りが十数万円の時期には返済するのが厳しい局面も出てくるでしょう。また、労働環境が悪くても下手に転職して年収が下がったら困ると、身動きが取りにくくなるかもしれません。

親としては子どもに将来の負担をかけないようになるべく奨学金を使わないようにしたいと考える人も多いのではないでしょうか。しかし、親世代の収入も伸びにくくなっており、とても大学費用を捻出する余裕がないという家庭も少なくないと思われます。

「大卒が当たり前だから」という考えではなく、子どもが高校生になり進路に悩み始めたら、将来について親子で話し合いをすることが大切でしょう。手に職をつけることができる専門学校を選んだ方が学費が安く済み、将来食べるのに困らないかもしれません。

進路は大学進学だけではないことや、本当に借金をしてまで勉強をしたいのかということを、しっかりと話し合う必要があるのではないでしょうか。

そもそも子どもの教育資金はいくら貯めたらいい?

日本政策金融公庫は、「平成30年度『教育費負担の実態調査結果』」(平成31年3月発表)のなかで、大学進学に必要になる費用について発表しています。