夫との家事育児をめぐる争いやイライラはなぜ泥沼化するのか

「自分の方が正しい」という思いが足かせに

ケンカというのは、お互いが「自分の方が正しい」と思ってするものです。夫婦喧嘩でも「いかに自分が正しいか」という言い合いをしていることが多くないでしょうか。

この「自分の方が正しい」という気持ちが、実は夫婦喧嘩を長引かせ、自分自身をも苦しめていたのです。「自分の方が正しい」という気持ちを手離すことで状況が改善した理由を、結婚8年目で3児の母である筆者がご紹介します。

「自分の方が正しい」と思うと論点が変わる

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我が家の主な夫婦喧嘩の原因は、「何で妻ばかり家事育児の負担が大きく、ずっと夫はスマホを見ているのか。夫婦2人の家であり子どもなのだから、分担してほしい」というものでした。筆者としては、「夫婦で家事育児を分担する」ことは正しいと思っていますが、夫は「何で俺がやるの? 家事もそこまでやらなくてもいいのに」という考えです。

お互いの意見が食い違い、最初はただ「協力してほしい」と思っていただけですが、次第に「いかに自分の考えが正しいか相手にわからせたい」という気持ちを隠れ持っていたことに気付きました。求めるゴールは家事育児の分担ですが、「自分の正論を相手にわからせたい」という気持ちも混じり、語気を荒げていたように思います。

アドラー心理学では、人は「自分のことを正しい」と確信した途端、権力争いに足を踏み入れていると指摘します。「自分の方が正しい=相手は間違えている」こと。自分と相手のどちらが正しいか、勝ち負けを競うようになってしまうのです。

本来は「家事育児の分担」について話し合うべきなのに、「どちらが正しいか」という争いに方向転換し、論点が変わっていたのでした。

「わかってもらえない」ことの苛立ちがエスカレート

もう一点、「自分の方が正しい」と思うと、理解してくれない相手に「何で自分の正しさをわかってもらえないの?」と苛立つことに気付きました。相手に自分の意見をわからせようとして、きつい言い方や当たり方をしたり、上から目線な態度を取ってしまうこともあるでしょう。

「伝え方が大事」とはよく言われますが、「自分の方が正しいから相手にわからせよう」とする空気を、人間は敏感に感じ取るものです。上から目線でいると、相手の態度は硬化します。「言い方が嫌だ」と最初から聞く耳を持たれなかったり、喧嘩の回数も増えるでしょう。

また、わかってもらえないことを悲しく思ったり、落ち込んだり、ストレスを感じることもあるでしょう。喧嘩もしてないのに「何でわかってもらえないんだろう」と1人落ち込むこともありました。

争うのをやめた

では、どうすれば良いのでしょうか。まず筆者は「自分の方が正しい」という気持ちを手離すことにしました。「どちらが正しいかという争い」をやめたのです。

「争わない」と決めれば、自分の意見を押し通そうとしないので、夫婦喧嘩自体が減ります。とはいえ、夫は急には変わりません。相変わらずスマホを見ていますが、筆者は「自分にできる範囲のことをする」ことにしました。

疲れると心身の余裕を失い、日常的にイライラしてしまうので、子どもにもよくありません。最優先事項は「子どもの安全基地となるような家庭作り」。自分にできる範囲のことをし、できない家事はしないことに決めました。

足して2で割ってちょうど良かった

その生活をするようになって気付いたのが、「正しいのは自分だけじゃなかった。自分だけが必ずしも正しいわけじゃなかった」ということです。夫の言う通り、筆者には家事育児を完璧にやろうとし過ぎていた部分があります。

家族の人数が減り、共働き家庭も多い現代では、家事を完璧にすることは無理です。無理をすれば無理をするだけ、疲れ切ったしわ寄せが家族にいき、怒りやすくなってしまいます。手を抜いても自然体の自分でいる方が大事だと気付いてから、家事を減らすことに罪悪感を感じなくなりました。

もう一つ気付いたのが、「夫も疲れている」ということです。それまでは「私だって毎日疲れ切っているし、親になったんだから、夫も疲れても頑張って当たり前」と思っていました。しかし仕事で疲れるのはもちろん、あまり人前で本音を出さずに気を遣うタイプの夫は、それだけでも疲れていることに気付きました。

毎日夫婦共に「疲れても頑張って当たり前!」と自分を追い込んでいて、子どもにとって安全基地となる家庭を築けるでしょうか。自分で最優先事項を決めておきながら、正反対の努力をしていたことに気づかされました。「頑張ることは正義じゃない」ことも学びました。

結婚は日常と言いますが、育児も日常です。毎日子どもがのびのびと過ごせる家庭であるために、親は疲れたら休み、その日の疲れはその日のうちに癒し、苦手なことは無理しないで、自分の時間をとりながら毎日を楽しむこと。そういった親の生活上に、子どもの安全基地が成り立ち、家庭ができあがるのでしょう。

お互い頑なになっていた

争うことで、お互い頑なになっていたことにも気付きました。先に筆者が権力争いから降りたことで、夫も降り、態度が軟化していきました。「争わない」と決めたこと、また相手の疲れに気付いたことで、筆者の態度が変わったのでしょう。

自分の態度が相手を硬化させもし、また軟化させもする。「他人を変えることはできないけれど、自分は変えられる」ということを実感しました。夫は以前から洗濯物を干していてくれたのですが、以前は「イヤイヤ、不機嫌になりながら」やっていたのが、段々と自ら考えてやるようになりました。

何よりも日常生活において、筆者自身の気が楽になりました。もう争わなくていいし、必死に自分の正しさを主張しなくても良いのです。もちろんすぐにはうまくいかず、争いになりそうなときも多々ありますが、「『争い』になったらそこでストップ」と決めています。

争うのをやめたことで相手の意見も一理あると気付き、結局は「2人の意見を足して2で割ってちょうど良かった」という結果になりました。まずは争わないだけで、劇的な変化はないにしても少しずつ状況は変わっていくことでしょう。

宮野 茉莉子

ニュースレター

宮野 茉莉子

東京女子大学哲学科を卒業後、野村證券を経て2011年よりライターへ。
主な執筆分野は育児、教育、ライフハック、女性の社会問題など。
子どもから大人まで「自分の頭で考える」哲学の面白みを伝えるべく執筆中。禅好きの3児の母。