新潟県知事選最大の争点は柏崎刈羽原発再稼働の是非

先日、新潟県の米山知事が自身の女性問題を理由に辞職を表明しました。正式な辞職後、新潟県知事選が行われることになります。

今回の知事選の最大の争点が、東京電力ホールディングスが所有する柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の是非になることは確実です。米山知事は原発再稼働に極めて慎重な姿勢を貫いてきましたが、自民党は再稼働を推進するスタンスにあると言われています。

近々実施される知事選の結果を受けて、原発再稼働問題が再びクローズアップされるでしょう。

福島第一原発事故以降、その安全性に関心高まる

原発事業には功罪両面があります。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災による「福島第一原発事故」以来、人々の注目がその安全性に大きくシフトしていることは間違いありません。正しいかどうかは別として、“原発=危険、恐ろしい”というイメージが広まってしまったことは事実でしょう。

その意味でも、毎年3月11日は、炉心融解(メルトダウン)が起きた福島第一原発事故(注1)と共に、永遠に人々の記憶に残るでしょう。

注1:原発事故の発生は3月11日としています。

4月26日は史上最悪の原発事故が起きた日

しかし、福島第一原発事故が起きる前まで、いや、起きた後の現在でも、世界最悪の原発事故と言われるのは、1986年4月26日に発生した「チェルノブイリ原発事故」です。

欧州を始めとする世界各地では今でも、毎年4月26日を『リメンバー・チェルノブイリ・デー』として、大規模な各種イベント(反原発デモ、シンポジウム、追悼集会など)が行われています。特に、発生30年の節目となった一昨年(2016年)は、各地で大規模な記念集会が開催されました。

欧州地域の人々にとって、4月26日は、過去の忌わしき原発事故と向き合う重要な日なのです。では、31年前に起きたチェルノブイリ原発事故はどのような事故だったのでしょうか。この記事を読んでいる方の半数近くは、まだ生まれていなかったと思われる頃の事故です。

レベル7の原発事故は福島とチェルノブイリの2件だけ

世界の歴史上、炉心融解を伴う原発事故は、スリーマイル島原発事故(1979年)、チェルノブイリ原発事故(1986年)、福島第一原発事故(2011年)の3回しか経験がありません。

ちなみに、チェルノブイリ原発事故後の1992年に制定されたINES(国際原子力事象評価尺度)に基づくレベル1~7で判断すると、チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故が最上位のレベル7(深刻な事故)とされています。

チェルノブイリ原発事故の被害は福島を大きく上回る

そのチェルノブイリ原発事故は、当時のソビエト連邦(現在のウクライナ)で起きました。この原発事故の大きな特徴は、1)炉心融解が発生した爆発火災事故であったこと、2)ソ連という社会主義国家で起きたため今なお詳細がベールに覆われている部分が多い、等になります。

福島第一原発事故はメルトダウンを伴い、水素爆発が発生しましたが、爆発火災は起きていません。これだけでも、チェルノブイリ事故の深刻さがうかがえます。また、ソ連の情報公開が進む前に起きた事故であり、その被害の大きさは今もなお様々な見解があり、一説には死者4,000人超というものもあります(注2)

注2:この点には異論もある。

チェルノブイリ原発事故以降に本格化した安全問題

確かなことは、チェルノブイリ原発事故が想像を絶するような大事故であり、その後の国際的な原子力安全問題の議論に繋がったことです。

このような仮定の話は不謹慎かもしれませんが、もし、チェルノブイリ原発事故が起きていなければ、その後に発生した数多くの原発事故(レベル3~7、レベル7は福島のみ)での対応や情報公開が後手に回っていた恐れがあると考えられます。

『リメンバー・チェルノブイリ・デー』に原発再稼働を議論する重要性

その一方で、今年3月中旬以降、国内では新たに2つの原発(大飯原発3号機、玄海原発3号機)が再稼働となりました。これにより、福島第一原発事故を受けて導入された新規制基準に基づく再稼働は、5原発7基となっています(注3)

注3:現在稼働中は5基、残る2基は定期検査のため停止。

あの忌まわしい原発事故を繰り返さないようにという願いが強まる中で、再稼働は着々と進んでいるのが実情です。そして、冒頭で記した通り、今度は東京電力の中核原発である柏崎刈羽原子力発電所が再稼働となる可能性も高まりつつあります。

こうした議論をする前に、日本で起きた福島第一原発事故を上回っていたと見られるチェルノブイリ原発事故の悲惨さをもう一度振り返ってみる必要があるでしょう。

LIMO編集部