2. 住民税非課税になる収入はいくら?

住民税非課税世帯になる条件は、自治体によって異なります。

ここでは参考までに、東京23区の「所得割」と「均等割」が非課税になる条件を見ていきましょう。

  • (1) 生活保護法による生活扶助を受けている方
     
  • (2) 障害者・未成年者・寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が135万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4000円未満)の方
     
  • (3) 前年中の合計所得金額が下記の方
    <同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合>
    35万円×(本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+31万円以下
    <同一生計配偶者及び扶養親族がいない場合>
    45万円以下

前年の合計所得金額が45万円以下であれば、扶養家族の有無にかかわらず非課税になるといえます。

なお、ここでの合計所得金額は、年収とは異なります。

所得はそれぞれの要因によって決まるため、一概に「年収いくらで非課税」というのは言い切れません。

【写真全4枚中1枚目】個人住民税のしくみ。2枚目は年代別の住民税非課税世帯の割合を紹介

個人住民税(税金の種類)

出所:東京都主税局「個人住民税(税金の種類)」

例えば東京都板橋区の場合では、次のとおり提示されています。

パートやアルバイトの給与収入(複数の勤務先があれば、その合計の金額)が、100万円以下(合計所得金額45万円以下)の場合、住民税は非課税です。
また、前年中に障害者控除・寡婦(ひとり親)控除・未成年の適用があった場合、給与収入が2,043,999円以下(合計所得135万円以下)であれば非課税です。

引用:板橋区「住民税 よくある質問」

このように、住民税非課税の条件は居住地や収入の種類、家族構成などの複数の要素によって決まるため、気になる方は自治体のホームページや窓口などで確認してみましょう。

3. 高齢者に住民税非課税世帯が多いって本当?

住民税非課税世帯になる要件を確認しましたが、実際には高齢者世帯が多くを占めるといわれています。

年金生活になれば収入は下がることが一般的であるため、高齢者世帯が多いのは事実です。

厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、年代別の住民税非課税世帯の割合(全世帯に占める住民税非課税世帯の割合)は次の通りとなりました。

【写真全4枚中2枚目】年代別の住民税非課税世帯の割合

年代別の住民税非課税世帯の割合

出所:厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」をもとにLIMO編集部作成 注:「総数」には年齢不詳を含む

  • 60歳代:19.2%
  • 70歳代:34.9%
  • 80歳代:44.7%

年齢を追うごとに、住民税非課税世帯の割合が増えています。

また住民税非課税世帯を母数とした場合、70~79歳が占める割合は37%、80歳以上が占める割合は29%となっています。

では、70歳代は苦しい生活を送っている方が多いのでしょうか。

住民税非課税世帯の条件には「金融資産保有額」が含まれませんので、その資産状況が気になる方もいます。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)」から見ていきましょう。

4. 70歳代「おひとりさま世帯」の平均貯蓄額はいくら?

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」によると、70歳代・単身世帯の貯蓄は以下の通りでした。

【写真全4枚中3枚目】70歳代・単身世帯の貯蓄

70歳代・単身世帯の貯蓄

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:26.7%
  • 100万円未満:5.8%
  • 100~200万円未満:4.3%
  • 200~300万円未満:4.1%
  • 300~400万円未満:3.3%
  • 400~500万円未満:2.5%
  • 500~700万円未満:6.6%
  • 700~1000万円未満:5.1%
  • 1000~1500万円未満:8.6%
  • 1500~2000万円未満:5.3%
  • 2000~3000万円未満:8.2%
  • 3000万円以上:17.3%

70歳代の貯蓄額の平均は1529万円で、中央値は500万円です。

平均値は一部の大きな値に引っ張られやすい傾向にあるため、実態よりも大きな値が出てしまうこともあります。

そのため、実態に近いのは中央値である500万円であるといえるでしょう。

金融資産非保有という方が26.7%となっています。

5. 70歳代「二人以上世帯」の平均貯蓄額

【写真全4枚中4枚目】70歳代「二人以上世帯」の平均貯蓄額

70歳代「二人以上世帯」の平均貯蓄額

出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」をもとにLIMO編集部作成

  • 金融資産非保有:19.2%
  • 100万円未満:5.6%
  • 100~200万円未満:5.1%
  • 200~300万円未満:4.3%
  • 300~400万円未満:4.7%
  • 400~500万円未満:2.5%
  • 500~700万円未満:6.2%
  • 700~1000万円未満:5.8%
  • 1000~1500万円未満:10.2%
  • 1500~2000万円未満:6.6%
  • 2000~3000万円未満:7.4%
  • 3000万円以上:19.7%

平均は1757万円、中央値は700万円となり、おひとりさま世帯よりも多くなりました。

なお、3000万円以上の世帯は19.7%、貯蓄ゼロの世帯は19.2%と、ほぼ同数となりました。

貯蓄している世帯とそうでない世帯の二極化が見て取れます。

ほとんど資産がないという世帯にとっては、住民税非課税世帯に対する給付はありがたい存在でしょう。

6. 住民税非課税になったときに必要な手続きはある?

住民税非課税世帯に該当するかもしれないと思ったとき、手続きが気になるという方もいます。

しかし、住民税非課税世帯になるために特別な手続きは必要ありません。

前年中の収入をもとに自治体が住民税を計算しているため、非課税になれば自治体が把握して処理しています。

ただし、所得の申告が正しくなければ確認が取れないため、確定申告や住民税申告は正確に行いましょう。

7. まとめにかえて

今回は住民税非課税世帯の70歳代が占める割合や貯蓄額などについて確認していきました。

やはり、年金生活になれば収入は下がることが一般的であるため、住民税非課税世帯は高齢者が多くなるという現状があるようです。

給付金があることは助かりますが、給付金に該当しない世帯であっても公的年金だけでは不十分です。

老後資金の準備には時間がかかりますので、少しでも早く老後資金を貯める計画を立てることが重要になりそうです。

まずはご自身の年金受給額や将来どのぐらいお金が必要になるのかを確認するなど、将来資金について考えることが第一歩となります。

ぜひこの機会に老後対策ついて考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料

菅原 美優