2024年1月19日、厚生労働省より年金額改定について発表がありました。

2024年度の年金支給額は、物価や賃金の上昇を加味して、2023年度より2.7%引き上げられることになりました。

このように、年金の受給額には毎年見直しされていることはご存じでしょうか。

公的年金の受給額のほかにも、年金に関しては様々な改定があります。

今回は、厚生年金に加入しながら給与を得ている方が受け取る「在職老齢年金」に注目してみましょう。

1. 在職老齢年金とは?

「在職老齢年金」とは、厚生年金に加入しながら給与を得ている方が受け取る年金のことです。

現在のシニア世代の年金事情を見ると、公的年金だけでは老後生活をやりくりできないから…という理由で働く方は少なくないと考えられます。

しかし、給与や賞与などの報酬が高すぎると年金支給がストップする可能性があるため注意が必要です。

在職老齢年金では、老齢厚生年金の基本月額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となります。

※「基本月額」とは加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額、「総報酬月額相当額」とは、(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12 を指します。

基本月額と総報酬月額相当額との合計が支給停止調整額を超える場合、年金は支給調整(支給停止)となります。

  • 基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-支給停止調整額)÷2

上記のとおり、支給停止調整額を意識して働かなければ、年金がカットされてしまいます。

では、支給停止調整額はいくらなのか。2024年度より改定される支給停止調整額もあわせて確認していきましょう。

2. 【2024年度】在職老齢年金の支給停止調整額は50万円に引き上げ

厚生労働省「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2024年度の支給停止調整額は50万円になりました。

2023年度は48万円ですので、2024年度から2万円増額されることになります。

在職老齢年金による年金額の調整について、イメージを掴むためにシミュレーションをしてみましょう。

2.1 【在職老齢年金】シミュレーション

ケース別に、在職老齢年金による調整があるのかシミュレーションしてみます。

在職老齢年金のシミュレーション:ケース1

  • 年金の基本月額:8万円
  • 総報酬月額相当額:22万円

ケース1の場合、基本月額と総報酬月額相当額の合計額は30万円です。

2024年度の支給停止調整額となる50万円を下回るため、年金は満額支給となります。

在職老齢年金のシミュレーション:ケース2

  • 年金の基本月額:12万円
  • 総報酬月額相当額:37万円

ケース2の場合、基本月額と総報酬月額相当額の合計額は49万円です。

2023年度であれば支給停止調整額48万円を超えるための対象となります。具体的に年金がいくらカットされるのか計算してみましょう。

「基本月額12万円-(基本月額12万円+総報酬月額相当額37万円-支給停止調整額48万円)÷2=11万5000円」

先程の計算式に当てはめると、年金支給額は12万円→11万5000円に。つまり5000円がカットされることになります。

しかし、2024年度からの支給停止調整額は50万円です。ケース2が2024年度内であれば年金は満額支給となります。

※年金支給は、支給月の前々月・前月の2ヶ月分となるため、2024年度最初の年金支給日となる4月15日には2023年度2月分・3月分が支給されるため、2023年度のルールが適用される点にご注意ください。

2024年度の支給停止調整額50万円が適用されるのは2024年6月14日支給分からとなります。