2019年に実施したサラリーマン1万人アンケート調査は、まだまだ分析ができる要素が多くあります。今回と次回は、有価証券(ここでは株式・投資信託)の保有比率を分析してみました。

アンケート調査に回答した11,812人のうち、世帯保有金融資産と株式・投資信託の金額に回答していただけた7,542人を対象にして、それぞれの回答金額帯の中央値を使って比率を計算してみました。

0%は世帯保有金融資産を保有していて株式・投資信託が0円と回答した人の比率で、100%はそれぞれ設定した最も大きい金額帯(世帯保有金融資産額の金額帯と一致する)を選んだ人の比率で算出しています。

金融資産が多いほど資産の分散が進んでいる

一般に保有金融資産が多くなれば資産の分散が進むことは知られています。

サラリーマン1万人アンケートでも、保有金融資産額ごとに有価証券の保有比率を分析してみると、保有金融資産が100万円未満の層では、3分の2が有価証券保有比率100%で、3分の1が0%。

それが、金融資産が多くなってくると、有価証券が100%の人の比率も、0%の人の比率もそれぞれ低下し、資産全体での分散がなされていく姿が見えてきます。

家計金融資産に占める株式・投資信託の比率(保有資産帯別)(単位:%)

注:保有金融資産は家計ベース、株式・投資信託の保有金額も家計ベース。保有比率0%は金融資産を保有しているが株式・投資信託の保有金額が0円としている世帯数。同100%は各保有資産額の上限と同じ金額帯を選んだ世帯の比率。
出所:フィデリティ退職・投資教育研究所作成「サラリーマン1万人アンケート(2019年)」

過半数を占める金融資産500万円未満層に課題

課題は、資産の少ない人たちの分散度合いでしょう。アンケートに回答した7,542人のうち、保有金融資産が100万円未満の人が1,919人、100-500万円未満が2,074人でした。

この2つのセグメントで3,993人、全体の52.9%になりますから、有価証券を保有する人の過半数が、資産全体に占める有価証券の比率が偏っているといえます。

もちろん、有価証券の比率が高くとも、その有価証券の中身がしっかりと資産分散されていれば懸念は少なくなります。

たとえば、投資信託であれば、バランス型ファンドが中心であれば、たとえ金融資産に占めるその比率が高くとも、有価証券の中身自体は資産配分されているわけで、懸念は和らぐことになります。

<<これまでの記事はこちらから>>

合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史