HIITは、皮下脂肪と内臓脂肪を減少させ、代わりに筋肉がつくので、健康な体になるうえに、引き締まった若々しいシルエットになります。

すばらしいのは、「アフターバーン効果」と呼ばれる、運動後にダラダラ過ごしても「脂肪が燃え続ける」効果があることです。「脂肪燃焼」効果は、運動後3~14時間、長ければ24時間続きます。この燃焼効果は、ウォーキングやジョギングのような軽い運動では得られにくく、HIITのように負荷の高い運動ほど得られることがわかっています。

HIITがすぐれているのは、ダイエット効果だけではありません。多くの健康効果があることがさまざまな研究によってわかっています。たとえば、血糖値や血圧をぐっと下げますし、善玉コレステロールが増えて悪玉コレステロールが低下するという研究結果も発表されています。

とくに近年、研究結果が増えているのが、糖尿病の予防や改善効果。2型糖尿病患者へHIITと軽めの持続運動(ジョギングなど)効果を比較したメタ解析(13の研究結果から解析)を見ても、HIITの優位性が確認できます。また、脳細胞が増え、情報処理能力が上がり、認知機能の向上に役立つ可能性もあるのです。

運動は継続することに意味があります。

「毎日のジョギングはなかなか続けられない……」という人も1日数分×週2~3回のHIITであれば続けられそうだと思いませんか?

実際、私自身も長年続けていますし、かつて出勤前のジョギングにチャレンジしたものの「早起きがツラい」という理由で運動を挫折した知人にHIITを勧めたところ、いまだに続けられているそうです。実際に行ってみると効果が感じられるので、運動が楽しくなり、モチベーションも持続するでしょう。

「でも、こんなに激しい運動をして安全性はどうなの?」という疑問も当然生まれると思います。

結論から言うと、近年のHIITの安全性に関する多くの研究結果を踏まえ、心臓病や代謝系の病気のリスクのある人にとっても、運動のなかでHIITが特に危険ということはないと考えられます。

いまやHIITは、病気を患った人のリハビリにも使われていますし、心筋梗塞後のリハビリでHIITと軽めの持続的運動の効果を比較した結果、HIITは心機能の改善だけではなく、メンタルや活動性の回復にも、より効果的であることがわかっています。

ただし、もちろん、何かしらの持病を抱えていらっしゃる方は医師の指導のもとで運動を行う必要があることはいうまでもありませんし、健康な方であったとしても高強度の運動を長時間続けることは、体を負傷したり、必要以上に心臓に負荷をかけてしまうリスクがあります。

HIITが重視するのは短時間における運動強度で、「運動の量」ではなく「運動の密度」です。「早く効果を得たいから」と、高強度のHIITを長時間行ったり、連続で行ったりすることは控えましょう。

全力の7~8割でOK。「HIITはプロスポーツ選手のもの」という誤解

HIITを知っている方は、「かなりキツいトレーニングだ」というイメージもあるかもしれません。たしかに、プロアスリートがトレーニングメニューに取り入れているHIITは、全力、または極限まで力を出し切る、「オールアウト」(最大酸素摂取量や最大心拍数に達する負荷をかけるもの)と呼ばれるものです。

ですが、健康やダイエット目的の一般の方なら、そこまでキツいトレーニングは必要ありません。オールアウトの手前、つまり最大心拍数の7~8割の負荷をかける運動で十分効果が得られるでしょう。

最大心拍数を計るには、各社から発売されている心拍計機能がついた時計を活用してもよいですが、基本的に負荷設定は「感覚値」でOKです。主観的な強度としては、「ややキツい」と感じる強度くらいから始めましょう。

「最高にキツい」が100%、「非常にキツい」が90%、「キツい」が80%、そして「ややラクである」が60%としたとき、「ややキツい」は70%くらいに相当します(最大心拍数に対する割合的にも)。

もしわかりづらかったら、「ちょっとでもラクだと感じたら負荷を上げる」というシンプルな解釈で構いません。運動後に息がほとんど切れないのであれば、負荷として軽すぎです。「ややキツい」と感じ、「ゼーゼー」「ハーハー」と息が切れる状態であれば十分な負荷がかかっているといえます。

HIITは、“時間効率がバツグンによいのに、健康効果やダイエット効果が高い”トレーニング。時間のない方、運動が続かない方にはオススメといえます。食欲の秋についた脂肪を燃やすよう、みなさんもぜひチャレンジしてみてください。

 

東海大学医学部内科教授(血液内科学)、医学博士 川田 浩志