退職後の生活の対策を「移住、勤労、資産運用」で考える

超高齢社会の対策ポートフォリオ

退職後の生活、3つの対策

退職後の生活を考えるにあたって、資産運用のことを考えすぎていませんか。金融機関に相談に行けば受けられるサービスは金融分野が中心になりますが、だからと言って資産運用だけを他と切り離して考えることはできません。

たとえば、お金周りだけに限っても、生活必要総額を下げることと、収入を増やすことの2つの視点があります。長く働くことは収入を増やす上に、退職後の生活期間を短くできることからこの2つの面に貢献しますし、年間の生活コストを引き下げることは生活必要総額を下げることにつながります。そして資産運用は収入を増やすことにつながります。

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この3つ、すなわち①長く働く、②生活コストを引き下げる、③お金にも働かせるは、とかくバラバラに提言されてきたように思いますが、本当はそれを関連付けて考えるようにすることが大切なのです。

これまで、このコラムでは「現役時代の年収×目標代替率=退職後年収」と「退職後年収×退職後の生活年数=生活必要総額」の2つの掛け算で、退職後の生活必要総額を計算し、その総額を調達するために「年収×資産形成比率=資産形成額」で資産形成をするべきだとお伝えしてきました。

移住、勤労、資産運用

「目標代替率」は、退職後の生活水準は現役時代の生活水準に規定されるとして、「率」で考える退職後の生活費水準を表しています。その水準は生活コストを抑制することで引き下げられますが、物価の安い地方都市への移住することはその効果的な方法のひとつだと思います。

「退職後の生活年数」は、退職後の生活に入ることを遅らせることで退職後の生活必要総額を減らせる効果があります。すなわち対策としては長く働くことが挙げられます。

資産運用で退職後の生活費用を賄うことも大きな対策の一つです。一般的に定額の積立を考えることが多いと思いますが、年収が上がることで退職後の生活必要水準が上がるなら、資産形成の金額もそれに合わせて引き上げていく必要があります。そのため、「資産形成比率」は資産形成額を、定額にするのではなく、収入に連動させるという考え方です。

さらに広い視野で退職後の生活の対策を考える

しかし、それでもまだ不十分といえるかもしれません。たとえば、年金をどう受け取るか、認知症に対する対策をどうするか、住宅を資産としてどうとらえ、どう活用するか、親だけでなく自分のことも含めた見守りサービスをどう考えるか、などなど視野に入れるべき分野はあまりにも多くあります。

超高齢社会への対応は、もう先送りにできる状況ではありません。その対策として、ひとりひとりのできる範囲は限られ、視野に入れるべきことは多数あります。多くの専門家の知恵を借りて、対策も俯瞰的にして、「超高齢社会の対策ポートフォリオ」を考える時期に来ているように思われます。

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フィデリティ退職・投資教育研究所 所長 野尻 哲史

参考記事

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野尻 哲史
  • 野尻 哲史
  • フィデリティ退職・投資教育研究所
  • 所長

国内外の証券会社調査部を経て、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。
日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。
著書には、『老後難民 50代夫婦の生き残り術』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。
調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照