内定の早期化だけを見ると、あまり大きな問題に感じないかもしれません。しかし多くの学生が大学3年生時にインターンシップの選考・参加から、大手の選考が解禁される大学4年生時の6月まで約1年もの時間を就職活動に費やすことになります。就職活動が長引き、学業に専念するどころか疎かになる可能性が高いでしょう。

また、上記でも述べたように5月末時点での内定率は6割以上。しかし、6月以降も就職活動を継続する学生は全体の7割にものぼります。採用スケジュールが統一されていないため、学生はすべての選考を終えられず、自身の内定先を決めきれないという問題が発生しています。

企業側も内定を出したとしても、決して安心できるとはいえません。大手企業の選考結果によっては、内定辞退も大いにありえます。反対に、就活ルールを守っている経団連加入企業にとっても、優秀な人材がフライングで引き抜かれている現状は苛立たしいものでしょう。

21年卒以降は現状の就活ルールが白紙となる

形骸化している就活ルールに終止符を打ち立てたのは経団連です。21卒以降は採用選考に関する指針を定めないことが決定されています。これにより、採用情報や選考開始の日程も白紙となります。現状の就活ルールが適応されるのは、現在の大学4年生(20年卒)までです。

今後の新たなルールは政府主導で、経済界と大学を交えて議論されることになります。混乱を生まないよう今までどおり3月に情報解禁、6月に選考開始の流れが維持される見通しです。

これまでの就活ルールではインターンシップは就業体験であり、採用に直結することを避けるようにいわれてきました。しかし、今後は経団連加入企業もよりインターンシップでの早期選考を行う可能性が高いことは否めません。今まで以上に内定の早期化、就活時期の長期化が問題視されることになるでしょう。

通年採用でより実力が重視される未来も近い

短期決戦であった就職活動が長期化され、通年採用が一般化される未来はもうすぐそこまできています。インターンシップの参加もほとんど必須となるでしょう。

通年採用により企業と学生の相互理解が深まり、入社後のギャップを減らすことができ、離職率低下にもつながるでしょう。さらに学生側はスケジュール調整が緩やかになるため、吟味して企業を選ぶことができます。

ただし、今までのようにポテンシャルよりも実力で判断されることが格段に増えることは間違いありません。学業に励むのはもちろん、社会で通用するスキルを何かしら極めておくことがこれからの就職活動には欠かせないでしょう。

【参考】

『2020年卒マイナビ大学生就職内定率調査』㈱マイナビ

『定例記者会見における中西会長発言要旨』一般社団法人 日本経済団体連合会

千歳 悠