本記事の3つのポイント

  • 自動車メーカーがロボット開発に力を入れている。コンチネンタルは米国見本市「CES」で配達ロボットのコンセプトモデルを発表
  • 自動車などの輸送機器とロボットは、開発・製造面で似ている部分が多い。自動車分野の変革の波「CASE」は、ロボット分野でも重要な要素となっている
  • 自動車分野の「MaaS」同様に、ロボット分野でも「RaaS」と呼ばれる新サービスが登場している

 

CESで新技術を発表

 トヨタ自動車、ホンダ(本田技研工業)、デンソー、コンチネンタル、メルセデスベンツ・バンズ(Mercedes-Benz Vans、メルセデスベンツのバン部門)、ボッシュ、川崎重工業、ヤマハ発動機――。これらの企業はいずれも世界トップクラスの輸送機器(自動車、二輪車)ならびにティア1メーカー(完成車メーカーに直接部品を供給するメーカー)として知られる。そして同時に、自社でロボット製品を開発もしくはロボットメーカーなどと連携している企業でもある。

 トヨタのロボットに関する取り組みは以前に本コラムで書かせていただいたが(ロボットメーカー「トヨタ自動車」の実力 https://limo.media/articles/-/6106)、日本でもトップクラスの開発体制を保有。また、AI技術の研究・開発を行う「Toyota Research Institute」を通じて、ロボット技術に強みを持つ米国の大学などと連携しているほか、海外のロボットベンチャーへの出資なども行っている。

 ホンダは長年ヒューマノイドロボットの開発を進めている。2018年6月に一部報道で「ホンダがASIMOの開発をすでに取りやめ、研究開発チームも解散した」という話も出たが、ホンダは「ヒューマノイドロボの開発は継続しており、これまでのASIMOの技術の量産製品への転用や、応用製品の実用化にも取り組んでいる」とコメント。1月に米ラスベガスで開催された「CES2019」では、人や障害物を避けながら目的地まで最適ルートで移動するAI搭載のロボット「P.A.T.H. Bot(パスボット)」を披露している。

 また、同じ「CES2019」において、コンチネンタルは配達ロボットのコンセプトモデルを発表。ラストワンマイル配達(配送の最終中継拠点から消費者までの配達)に対応する高さ1m程度の4足歩行型ロボットで、将来的には同社が開発している都市向けの無人運転車「CUbE」(キューブ)を組み合わせた配達システムの実現を目指している。

高度な「すり合わせ技術」が必要

 こういった取り組みの背景として、自動車などの輸送機器とロボットは、開発・製造面で似ている部分が多い点が挙げられる。例えば、自動車とロボットは共に多くの部品を組み合わせて機能を高める「すり合わせ技術」が要求される。一般乗用車の場合、部品点数は3万点以上とされ、近年、ADASをはじめとする自動車の高機能化に伴い、高度な車載ソフトウエア技術との組み合わせも求められる。一方のロボット製品も多数の部品の組み合わせ、高度なソフトウエアを融合する点は同じだ。

 また現在、100年に一度の大変革期といわれる自動車業界において、そのポイントとなる「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared(シェアリング)」「Electric(電動化)」の頭文字をとった「CASE」(ケース)という言葉が使われ始めているが、これらの要素はロボット分野でも重要になっている項目、もしくはロボットがすでに強みを持つ要素である。

 例えば、自動運転車両は「ロボットカー」とも呼ばれ、ロボットで使われている技術が多数使用されている。自動車メーカーでロボット開発に取り組むあるエンジニアは、「自動車製造で培った技術にはロボット開発で活用できる部分が多数ある。その一方で最近はロボット開発で培った技術を自動車開発に生かすケースも増えている」と語る。

サービス化の流れが加速

 シェアリングに関連した部分では、自動車分野において「MaaS(マース)」に関連した動きが活発化している。MaaSはMobility as a Serviceの略で、総務省では、スマートフォンから電車やバスなどの移動手段を検索し、予約して支払いまで一括で行える移動サービスと定義しており、「サービスとしてのモビリティー」「移動のサービス化」「モビリティーのサービス化」ともいわれる。自動車分野ではUber(ウーバー)などのライドシェアビジネスの拡大によって幅広い事業が形成されており、自動車関連メーカーによってAI配車サービスやオンデマンド通勤シャトルサービスなどの開発も進んでいる。

 そしてロボット分野でも同じ流れが生まれている。それが「RaaS(ラース)」だ。RaaSはRobot as a Serviceの略で、ロボットメーカーとクラウドサービス企業が協力し、必要な時に適切な費用のみを出してロボットを使用できるサービスを意味する。まだ本格的な取り組みは多くないが、海外では物流施設や商業施設において、繁忙期だけロボットを導入し従業員の負担を軽減する実証などが進んでいる。

 このようにクルマとロボットは共通点が多く、技術面でも親和性が高い。そのため今後クルマとロボットの境界線がなくなっていき、自動車をはじめとした輸送機器関連のメーカーがロボット技術を持つことが当たり前になる、そんな日も近いのかもしれない。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 浮島哲志

まとめにかえて

 ロボット分野は昨今、ハードウエアの開発はもちろんのこと、「いかに使うか」といったサービス分野での事業開発が非常に盛んになっている印象です。記事にもある「RaaS」はまさに、ロボット業界のサブスクリプション型モデルといえるでしょう。自動車業界も同様に、自動車をいかにして使ってもらうかといった観点が非常に重要になっており、近年の自動車メーカーの動きはこうした考えがベースになっています。

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