2018年から、パソコンの納期遅れが問題となっています。

Windows7のサポートが20年1月に終了するため、Windows10搭載パソコンの需要が伸びています。しかしインテル製のCPUの供給が逼迫しており、インテル製CPU搭載のパソコンの在庫不足や生産遅れが発生している状態です。このため、他社製CPU搭載のパソコンへの需要が増加。パソコン市場全体の納期が伸びているのが現状です。

いつまで納期の遅れが続くのか、また遅れの顕著なメーカーやパソコンの種類はあるのでしょうか。

注文したノートパソコンの納期が決まらない

筆者は19年2月2日、ヒューレット・パッカード(HP)のノートパソコンを購入しました。CPUはアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の「Ryzen5」を搭載しており、値下げキャンペーンをしていたこともあり購入に至りました。

しかし5日に「ご好評につき欠品」の案内が届き、12日には「入荷待ちの状況」のメールが。HPなどの海外メーカーは納期が遅くなることが多いですが、未だに納期が決まらないのは想定外です。

18年からインテルのCPUの供給不足が報道されていますが、関係あるのでしょうか。

インテルのCPU不足は19年半ばまで?

CPUとはプロセッサとも呼ばれ、パソコンの頭脳にあたる重要なデバイスの1つです。キーボードやマウス、ハードディスク、メモリーなどからデータを読み取り、それを制御・演算します。インテルの他にAMDなどが、製造メーカーとしては有名です。

インテルは19年1月、18年10〜12月期の業績を発表。この決算発表で暫定CEO※のボブ・スワン氏は、CPUの供給不足が19年半ばまでに緩和するとの予測を述べました。

※発表当時、現在は正式CEOに就任

供給不足の原因についてインテルは何もコメントしていませんが、開発遅れが影響している模様です。

同決算には「10〜12月期には10nmベースの新製品のプレビューを行った」とあります。

CPUは、回路の線幅(製造プロセス)が微細なほど性能が向上します。チップも小型になるので、スマートフォン(スマホ)やパソコンが薄く小さくなることにもつながります。この線幅の単位はnm(ナノメートル)で、インテルは現在14nmプロセスを主に製造しており「14nm世代」などと言ったりします。

しかし15年から、インテルの最新CPU(10nm世代)の開発の遅れが報道されていました。CPUの製造は、全てが最新のもので行われるわけではありません。用途や需要などにより、旧世代(22nm世代など)も製造します。

しかし10nmの開発が滞っているうちに、旧世代で製造していたCPUが14nmプロセスへ移行。データセンター向けもパソコン向けも、スマホ向けも14nmプロセス…となると、さすがに供給は不足するでしょう。

これに対しインテルはアウトソーシングや設備投資を進めていますが、本当に19年半ばまでに解消されるのでしょうか。

インテルの売り上げは好調

インテルの18年10〜12月期の業績は、売上高が前年同期比9%増の187億ドル(2兆円)と、市場予測の190億ドルには届かなかったものの堅調な結果となりました。

セグメント別売上高は、パソコンやスマホなどのCPU開発などインテルのコア事業である「クライアントコンピューティング部門」(CCG)が同10%増の98億ドル、データセンター向けCPUの開発などを扱う「データセンター部門」(DCG)が同9%増の61億ドルとなっています。このほか「IoT部門」などありますが、この2部門で売上高の8割以上の収益をあげています。

CCGとDCGの対前年同期の増加率はほぼ10%と同程度ですが、これまでDCGは同20%増ほどで推移しており順調に伸びていました。今期は中国などのデータセンター向けCPUの需要が鈍化し、売上高を押し下げるかたちとなりました。

しかしデータセンター向けCPUの需要が鈍化しているとはいえ、クラウドサービスの増加などからも分かるように市場規模は拡大傾向にあります。インテルはデータセンター向けCPUを優先している可能性が高く、パソコンのCPU不足がより顕著になる状態なのではないでしょうか。

どのCPU搭載パソコンも納期に注意

電子情報技術産業協会(JEITA)の「2018年度パーソナルコンピュータ国内出荷実績」によると、18年4〜12月の出荷台数は同7%増の518万台となっています。

9月は同10%減の67万台ですが、10月からは同0.7%増の46万台、11月は同24%増の55万台、12月は同12%増の84万台と順調に伸びています。ここからは国内メーカーのパソコンの出荷状況は良好、と見えます。しかしWindows10への買い替え需要増加を考慮すると、増加率は若干少ないのかもしれません。

これに対して米国の調査会社ガートナーによると、18年のパソコン出荷台数は同1.3%減の2億6000万台となっています。海外メーカーにおいては、インテルのCPU供給不足の影響が顕著なようです。18年10〜12月期の出荷台数のシェアは、レノボやHP、デルが60%を超えているようです。

コストパフォーマンスの高い海外メーカー製品は元々人気があり、さらにインテルのCPU不足の影響があるので納期が遅れがちなのでしょう。

また、インテルのCPU不足は以前から報道されているため、AMD製CPU搭載パソコンへの需要も増加傾向にあるのだと思います。そして、Windows7サポート終了による需要もここへ加わります。今パソコンの購入を検討している方は、納期が1カ月以上かかることを想定したほうがよさそうです。

参考:
Intel CPU Shortage To Ease By Mid-2019, Interim CEO Says」(CRN)
Intel Reports Fourth-Quarter and Full-Year 2018 Financial Results」(Intel)
ムーアの法則に黄色信号点滅、Intelの10nmプロセス移行の遅れが確実に」(GigaZine)
2018年度パーソナルコンピュータ国内出荷実績」JEITA
Gartner Says Worldwide PC Shipments Declined 4.3 Percent in 4Q18 and 1.3 Percent for the Year」(Gartner)

尾藤 ちよ子